最近、味の素食の文化センターから発行されている「食と人生-81の物語り」という本と出会い、
人生の中で食そのものが持つ重みや“味”について、しみじみ感じる機会を持つことができた。
それは財団に寄せられた応募作品の中から、
選りすぐりのエッセイ81集をまとめたものであるが、
例えば末期ガンの86歳の女性患者に、臨終の場面で、
好物の柿ジュースを綿棒で湿らせて飲ませた管理栄養士の感動のシーンや、
大自然に育ち、父親から素潜りの仕方、梅干の漬け方、屠殺した肉の食べ方などを教えられ、
美味しさとはその素材がどういう風に生きていたのか、
ひとつの生命体としてあったことを意識してこそ感じられるものであると体に蓄積されたこと。
また、戦中戦後の芋ぐらいしか食べるものがなかった食糧難の空腹の記憶が、
今の食に対するこだわりの原点になっていること。
などが掲載され、載せられている事柄がそれぞれドラマティックであり、
胸にすっと沁み込む内容のせいか、
憑(つ)かれたように一気に読みきってしまった。
食の思い出は全く個人的なものであるが、
不思議と他人にもよく理解でき、
時代を越えて共感し合えるものであることも改めて実感することができた。
食べて生きるということは本来厳然なことであるが、
あまりに日常茶飯のありふれたことだけに、
日々の暮らしの中では、
人は改めて「食の思い出」をたどるということはしないだろう。
しかし、人生を振り返ってみたとき、
節目になるような出来事にはとかく食べることが関わっており、
食のある風景は忘れられない思い出になりやすいと言える。
そして、食の記憶をたどるにつれ、
その人の人生経験や育まれた人間関係が見えてくるように思う。
続く・・・