さて今回のタイトルは少し前の単元テストの問題から。
これは教科書に載っておらず、教科書の一文と似ている意味の漢文を以下から探せ、
というようなもので、その中にこの詩の最後の一行があったのです。


さっぱり読めなかったのですが、
ぼんやりと海や波や月光が脳内に浮かんできたので、
早速ぐぐったら、あらまぁ、なんて綺麗な漢文でしょう、と感動したので、
日本語に訳そうと決心した事態でございます。
(ググったのに日本語訳なかったから。)
少し意訳もありますのであくまでも参考にしていただけたら幸いです。


タイトル:望月懷遠

作者:張九齡(678年生まれ-740年没)

海上生明月,天涯共此時。

情人怨遙夜,竟夕起相思。

滅燭憐光滿,披衣覺露滋。

不堪盈手贈,還寢夢佳期。



広々とした海に明月が波に揺らめいて輝いている、
君と私を隔てている今この時よ!


恋人よ(私は)この長い夜を憎む、
なぜなら一晩中二人ともお互いのことを思っていたからだ。


蝋燭の炎を吹き消し、部屋に溢るる限りの月光を眺める、
衣を身にまとって歩いてみる、露で湿ったようだ。


掌で月光を受け止めたが、君に送る事が出来ない、
もう寝よう、願わくは夢の中で逢えることを。



ね、可愛いでしょ、結構。
ラブレターなのに俗っぽくなくて、
一行一行が洗練されているのです。

漢文の特長の一つに風景を読むというのがあって、
作者は、実際その場にいなくても、情景を想像しつつ詩を書いていく。

私の予想だけど、月光が部屋に溢れるなんて、ありえない。
だって平安時代の寝殿造りのお屋敷ですら蝋燭がないとほとんど何も見えないんだもの。

だけど、ほんの僅かな月光が窓から差し込んできて。
なんて奇遇。掌で受け止める。嗚呼、君にみせてあげたい。
だけど君に逢えない。どうしよう。夜が上げていく。露で衣が湿っているんだ。
僕、君ばかり思って一睡もできなかったんだ。君もそうだろう?
ねぇ、愛しい人よ、せめて夢の中で――――逢いたい。


いつの時代だって、人間は恋をしたがる。
その感情を如何に適切に表現できるか。は、
恋愛自由が認められた今尚、
私たちにとって重要なことでは無いだろうか。