cosmos2013さんのブログ-110417_1354~01.jpg

他サイトから転載しました。


1914年・第一次世界大戦のさ中。

冬の12月。

ドイツ軍とフランス軍、そして英軍が、約100メートルぐらいの距離で隔てあう塹壕戦は、砲撃の応酬で悲惨な様相を呈していました。

その最前線のドイツ軍の塹壕に、クリスマスの日、一人の男が慰問に訪れます。

彼の名は、ヴァルダー・キルヒホフ。

当時、世界で最もチケットを取ることが困難と言われるパイロット音楽祭に、1911~14年にかけて4年連続出演するほどの、高名なドイツのテノール歌手です。

ドイツ軍の塹壕から、キルヒホフの美しい歌声が、凄惨な戦場に響き渡りました。

そして、それは100メートル先の敵国フランス軍の塹壕にまで届いたのです。

すると、フランス軍の中から、「この歌声は、パリのオペラ座で聞いた、ヴァルダー・キルヒホフのものだ!」と叫ぶ者がいました。

その歌声に聞き覚えがあることに気付いたフランス軍の将校は感激し、ドイツ軍の塹壕に向かって、大きな拍手を送ったのです。

すると、その拍手を聞いたキルヒホフは、殺し合って憎むべき敵でありながら、自分の歌声に拍手を送ってくれた人がいることに感動しました。

彼は、あまりの嬉しさに拍手してくれた相手の気持ちに応えるために、思わずドイツ軍の塹壕から飛び出して、笑顔でゆっくりと敵陣に向かって歩き始めました。

そして、両軍の中間地帯(ノーマンズ・ランド)を横断し、拍手を送ってくれた敵の将校に向かって、深々と優雅に挨拶をしたのです。

その瞬間、戦場は、戦場でなくなってしまいました。

この様子を見ていた両軍の兵士たちが、塹壕から次々と出て来て、敵兵と交流し始めたのです。

こうして、この戦いは休戦となったのです。

休戦というのは、交戦国の上層部が取り決めるのが普通ですが、このように現場の兵士たちから生じるのは、非常に稀なことでした。

人々は、後にこの日の出来事を、「クリスマス休戦」と呼んだそうです。


歌が互いの憎しみを越え、今もなお語り継がれている戦場に花咲いた一つの実話です…。