どうしよう…




それが私の率直な気持ちだった。


遊びに興じすぎて痛い目に遭ってしまった子供のように、途方にくれ悔やんだ。

産むことは到底考えられない。
故に、この上ない罪悪感が重くのしかかった。




俊也は私を車に乗せ、遠く離れた町の病院へと連れて行った。



「ごめんね…」




まるで、冷たい鉄の塊が胸を覆っているかのような錯覚にとらわれながらベッドに横たわる私に、俊也はそう言ったろうか。


それともあれは私自身の呟きだったろうか。

よくわからない。


ただ、もう後戻りできない。


そうはっきりと感じていた。



俊也は?


私と同じ思いなら、私を真に大切に思うなら…

「試しに付き合ってみない?」


確かに俊也はそう言った。




私に恋人がいることを承知の上での言葉には、自分への自信と恋愛のゲーム感覚がにじんでいた。


しかし、既に俊也に惹かれ始めていた私には十分な起爆剤だった。




警察官という職にありながらも、夜は仲間と飲み騒ぎ、言葉巧みに楽しませる。

職業とのギャップからか、信彦とは違う魅力が彼にはあるように、少なくともその頃の私には思われた。



誘われるまま身体の関係を持ったのも、警察宿舎の一室だった。


それまで、わりとお嬢様育ちだった私は、今まで味わったことのない、刺激に満ちた恋愛へのめり込むのにそう時間はかからなかった。




そして私は妊娠した。




私には信彦という恋人がいた。

信彦は大学卒業後、東京の企業に就職が決まり上京していて、遠距離恋愛真っ只中だった。


誠実な彼は、ほぼ休みの度に私に会うために帰省してくれた。


「あと二年待っててくれ。」
と信彦は言った。

それはたぶん、私をあらゆる面で迎える準備を整えるためであろうことは言わずとも知れた。



ただ、そこで、嬉しいと感じなかった私は、若さ故か彼への愛の薄さ故か。

現実感のある結婚よりも、ロマンチックな恋愛への憧れが強くあったのは確かだった。


私は普通の女の子たちのように、デートしたい時にデートして、話たい時に話して、一緒にいてくれればそれで良い。


その望みを叶えるのに、いきなり、結婚、という選択は皆無だった。