私と俊也は18年前に知り合った。



小さな港町の故郷にある警察署に、俊也は新米警察官としてやって来た。

出会いは夜のスナックだった。


小さな田舎町には若者が集う場所などそう多くなく,そのスナックはわりとにぎわっていた。

互いに友人数人と飲みに来ていたのだが,俊也のグループはまさか警察官とは思えないほどのバカ騒ぎぶりだった。


頭にはネクタイをまき、辺り構わず大声で盛り上がっていた。
思わず顔をしかめるような集団であるにもかかわらず、その頃の私にはなぜか心惹かれるものがあった。


「ねぇ、一緒に飲まない?」
声をかけてきたのは俊也だった。


そこから、ちょっと古いけどいわゆるグループ交際が始まったのだ。


結局、このうち私と俊也を含め三組が結婚することになる。


今思えば、俊也じゃなくとも…

まさか自分の身にこんなことが起こるなんて、考えてもみなかった。



そう、あの日あのときまでは。

私、理香は38歳の平凡な主婦。
夫、俊也は40歳、警察官。


ある夜、私が風呂から上がり寝室へ入ると、珍しく俊也が起きていた。

いつもは私を避けるように背を向け、広いダブルベッドの縁からはみ出さんばかりの定位置でいびきをかいて寝ているのに。

訝しく思いながら、化粧台の鏡の前に座り、肌の手入れをし始めた。


最近、目尻の皺がやや気になる。

覗き込むように鏡に見入ったとき、私の背後から冷たい光を放つような眼つきの俊也の顔が鏡に映った。


ぞっとするような顔つきだった。


何?!


思わず振り返った私の前に、先ほどの冷たい光が消え、血走った眼の俊也が立ちはだかっていた。