タイトルは「集まれ仲間達」
・北村 明日花・・20歳
身体障害者療護施設「ミドリ園」入所利用者。原因不明の障害により、足が短く、手も少し不自由。4人兄弟の長女て友達を大事にする。おしゃべりが好きで、名前の通り明日の生活に花を咲かせている。ただ少しお調子者。
・北村秋彦・・保育園年中
北村家の末っ子。甘えん坊で明日花の真似をしたがる。明日花がいる時は、恨みがましいことをいうけれど、実は明日花の帰りを待っている。
・北村春花・・中学2年
明日花の妹。勉強は苦手だが友達は大事にする。近所に住む松村桃とは大の仲良し。
・北村春彦・・高校3年
明日花とは正反対。おとなしい性格で弟の世話も良くする。
・北村美花・・明日花の母
4人の子供を産み育てるほど子供好き。名前の通り花が好きな美しい女性。お庭や床の間に花を生け、洋服やバックなどに花柄を多く取り入れている。
・北村彦太・・明日花の父
妻と同じく子供好きで、児童療護施設職員をしている。
・松村桃・・小学4年
明日花やその兄弟と仲良し。やはり勉強は苦手。一人っ子なので休日はほとんど友達と過ごしている。少々怒りっぽい。
・松村桜・・桃の母
・松村光輝・・桃の父
このメンバーを交互に登場させるつもりです。
第一章……天使の日記帳
「あー暖かい」
「春っていいよね」
チューリップやタンポポがきれいな公園で、二人の少女が気持ち良さそうに寝そべっている。一人は髪を肩まで伸ばし、白いブラウスにオレンジ色のワンピース、赤い靴を履いた小学生ぐらいだ。もう一人はポニーテールに黒いジャケット、白のスカートと靴姿の中学生だった。この二人は近所に住む、松村桃と北村春花である、
「じゃ私、塾があるから帰ろう」
「うえっ⁉ 中学生大変だね」
勉強嫌いな桃は大げさに言った。友達といる方がましだと思った。春花もそう思っているのだが、親がうるさい。桃も一緒に立ち上がり、公園を出た。
「じゃーね桃ちゃん」
「うん頑張ってね」
春花と分かれた桃は、まっすぐ家に向かって歩いて行った。しかしとても気持ちいいので、すぐ家に入る気にはならない。
(ちょっとぐらいいいよね)
冬の間素通りしてゆく路地を、ぶらぶら歩くのは楽しい。家の左はおもちゃ屋さんで、小さい頃よく行ったものだ。今でも子供達の明るい声が絶えない。家の前は広場で、可愛いタンポポが咲いている。桃はタンポポの間を、ゆっくりゆっくり歩いて行った。すると広場の中ほどで、何やら白いものが目に入った。
(あれ⁉なんだろう)
そーっと近づき誰もいないのを確かめ拾い上げた。それはノートだった。何も書いてない。(どーしよーかなー。誰が落としたんだろう。お巡りさんに届けようかな)
あれこれ迷いながら結局持って帰った。
「桃ちゃんおかえり! それどうしたの?」
家に入ると、お母さんがノートを見て不思議そうに聞いた。
「空き地で拾った」
桃の声は興奮していた。
「拾った⁉」
お母さんは驚いて聞き返した。
「交番に届けなくちゃ」
「いいじゃん何も書いてないもん。私が拾ったから私が使う!」
「ダメよ桃ちゃん。誰かが使う前に落としたかもしれないでしょ。探してるんじゃないの? それに春花ちゃんは知ってるの?」
「ううん知らないよ。公園で別れた」
春花と桃は年が近いのもあり、幼い頃から仲良し。同じ保育園・小学校に通い、休日は一緒に過ごした。桃は一人っ子なので、春花の兄弟とも仲良くしている。
「とにかくこれは私の!」
親の前ではすぐふくれっ面をする。これには両親ともお手上げだ。
ところでこの家には以前おばあちゃんが住んでいた。お父さんの母親で、桃をとても可愛がっていた。おばあちゃんにとってただ一人の孫だからだろうか。座敷に飾った写真から、いつも桃を見ているようだった。お母さんはその写真に手を合わせ、我が家の報告をしていた。今回も桃が出ていくと、引き寄せられるように写真の前へ行った。
(桃がノートを拾ってきました。自分のだと言い張っております。私にはどうしようもありません。守ってやってください)
桃はもちろん何も知らなかったが、おばあちゃんは大好きだった。小さい頃はいろいろなところへ連れて行ってくれた。おもちゃやにもよく一緒に行った。部屋にはおばあちゃんに買ってもらったおもちゃがいくつか置いてある。電池で動く電車やロボット、色々なぬいぐれみ・・・それらで遊んでいるといつもおばあちゃんを思い出す。
(空き地でこのノート見つけた。きっとおばあちゃんのだよね。きれぃなお花いっぱい咲いてた。おもちゃ屋さんにはかわいい子たくさんいたよ。私もまた行きたいな。)
桃はおばあちゃんに話しかけるようにノートを書いた。
つづく....


