小説「集まれ仲間達」 | 智恵子の部屋

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「集まれ仲間達」

第二章・ミドリ園の明日花



 春花の姉=北村明日花は身体障害者療護施設(ミドリ園)で生活している。なぜか両足は膝までしかない。そのため車椅子を使用している。養護学校卒業後、ミドリ園入所。明るく話好きなので友達も多い。
 今日は入所式と部屋替えが行われる。施設長さんからの挨拶に続き、新規利用者・職員が登場した、今年は2名ずつの利用者・職員が加わった。
 去年のこの時期、明日花は入所した。友達は沢山ぃるかしら。職員さんは優しいかしら。ご飯は美味しいかしら・・・期待と不安を抱え、両親と共に施設を訪れる。
 (あれからもう一年になるのね。新しく入った人もきっと不安だよね。仲良くしよう)
ぼんやり考えていると部屋替えが始まった。施設長さんが発表する。


201=大島明子・小倉あや・北村明日花
担当=酒井あゆみ

202=青木健太・大谷順
担当=川島優平

203=鈴木由美・長崎援絵・山本由以奈
担当=内田盟

204=磯辺正基・水補早人
担当=森田孝助

 この施設は4階建、2階から4階が居室になっている。3人ずつ12部屋だ。
「じゃあたまには遊びにいくね」
「うん、ばいばい」
 式が終わり明日花は有香に告げた。去年同じ部屋だった青山有香(ゆか)、明日花より2つ上だ。大人しくてあまり話さないタイプだが、明日花とはすぐ仲良くなった。
「有香ちゃんどっかで会った気がする」
入所してしばらく経った頃、明日花は有香に話した…
「へぇーどこで?」
「わかんない。ただなんとなく懐かしい感じがしてたの。有香ちゃん感じたことない?」
「・・・別にないよ」
相変わらず言葉少なだが、有香は明日花の話に興味があった。いったいどこで?
有香には全く記憶がなかった。
「何かの本で読んだことがあるの。前世やあの世で何かご縁があったから、この世でも出会ったって」
「へぇー、じゃーさみんなご縁があったの?」
「うーんそういうことになるね。ご縁っていっても、色々あるの。家族の場合もあるし、ただちょっとすれ違っただけってこともあるの。だからね、記憶がなくても懐かしく感じることあるらしいの。人に対してだけじゃない。建物とか動物に感じることもあるらしい。私はないけどね」
どこか学者みたいだ。有香は思った。以前有香に会った記憶はもちろん明日花にもない。ただなんとなく懐かしい感じは今も変わらない。表面意識では忘れていても、潜在意識はちゃんと覚えている。そうに違いない。有香と同じ部屋だったのは偶然なのか? それとも巡り合わせ?
「とにかくこれからもよろしく」


つづく....