清水義範氏著の小説「ザ・勝負」(講談社文庫・2005年4月15日発行)の中に「対決その2 ゾロアスター教VSジャイナ教」という小編がある。

 ゾロアスター教もジャイナ教もよく知らない人が多いかも知れない。

 ゾロアスター教は紀元前1000年頃イランで生まれた宗教で、善悪二元論の宗教として知られる。この世を善と悪の戦いの場であるとし、最後には善が勝利するという。

 ジャイナ教は、仏教と同じ時代、同じ地域で生まれた宗教で、その教義は仏教とほぼ同じだ。バラモン教のカースト制度と、生贄による動物の殺生に反対する立場だ。仏教と違い戒律を厳格に守らなくてはならない。

 詳しくは清水氏の「ザ・勝負」を読んでいただきたい。

 ゾロアスター教徒はインドに約95000人の信者がいる。世界の信者を合わせても14万人前後だ。一方、ジャイナ教徒は、ほぼインドだけだが、420万人ほどの信者がいる。

 清水氏も結論付けたように両教徒はマイナーな宗教ながら金持ちが多い。インド最大の企業タタ・グループのトップは歴代ゾロアスター教徒だ。ジャイナ教徒は、インド人口のわずか0.4%ながらインド全体の個人税の2割を納めている。

 さてこの小説の設定の誤りだが、2人の父親がそれぞれの宗教の信者という箇所だ。ジャイナ教のほうは、戒律が厳しく職業や食べものはじめ日常生活での制約も多く、異教徒で信者になる人はまれだ。しかし作家の高橋和巳氏などは来世はジャイナ教徒になりたいと言っているほどで、信じる人には門戸を開いている。

 ところが、ゾロアスター教徒は男親がゾロアスター教徒でないと信者になることはできない。こじつけとしては、父親がイラン人かインド人のゾロアスター教徒だったということも言えようが、どうにも無理があるように思う。