254段 | 楽しく行こうよ♪

楽しく行こうよ♪

人が好き! 人に優しく♪ 自分にすこし優しく♪


 

よろづのことよりも、情あるこそ、
男はさらなり、女も、めでたくおぼゆれ。

 

なげの言葉なれど、
切(せち)に心に深く入らねど、

 

いとほしきことをば、「いとほし」とも、

 

あはれなるをば、
「げに、いかに思ふらむ」
など言ひけるを、伝へて聞きたるは、

 

さし向ひて言ふよりもうれし。

 

いかで、
この人に思ひ知りけりとも見えにしがなと、
常にこそおぼゆれ。

 

-- 枕草子 --     清少納言

 


【現代語訳】

 

ほかのどんなことよりも、情のあるが、
男はもちろん、女も、すばらしく思われる。

 

たとえいい加減な挨拶で、
ほんとうに深く心から出たものでなくとも、


人の気の毒なことに対しては「
気の毒に」とも、

 
また、
悲しんでいる場合には

「ほんとに、どんなにか悲しいでしょう」

 

などと言ったのを、
人から口伝えに聞いたのは、


面と向かって言われたのよりも、
うれしい。

 

なんとかして、
その人に、自分がその人の親切に

感謝しているということだけでも

 

知ってもらいたいものだと、

常日ごろ思われることだ。