「あるビジネスマンの話」
寝る間も惜しむほど働く、
働きづめのビジネスマンがいた。
彼は、久しぶりに、
数日間の休みが取れたので、
南の島にバカンスに出かけた。
しかし、ビーチで
のんびり寝そべっていても、
まったく、くつろげない。
仕事一筋で生きてきた彼は、
こうして休んでいることが、
無駄な時間を過ごしているように
思えてきてしまうのだ。
島の住民たちを見ていると、
ほとんど働く様子もなく、
毎日毎日、ビーチで
砂遊びをしていたり、
海で泳いでいたりしている。
彼は、次第にいらだちを募らせた。
「奴らは、なんて、怠け者なんだ。
遊んでばかりいるから、
貧しい暮らししかできないのだ。」
彼はいたたまれなくなって、
島の住民に声をかけた。
「君たちはなぜ働こうとしないんだ」
住民の一人が、
首をかしげながら答えた。
「働けば何かいいことがあるのか?」
「お金が稼げるじゃないか。」
「お金で、何かいいことがあるのか?」
彼は、あきれ顔で言い放った。
「お金があれば、私のようにこうして、
南の島で、バカンスを楽しむこと
だってできるじゃないか!」