目の前で死亡した運転手・・・兵庫県警察時代の備忘録 | 『満月と魔力の謎。』

目の前で死亡した運転手・・・兵庫県警察時代の備忘録

兵庫県警察時代


事故当直で私が二十四時間勤務についていた日のことである。


大型貨物車問土が正面衝突との一一O番通報があった。現場に急行してみると、

 

一台のほうの運転手はすでに救急車で病院に運ばれたあとだった。


問題は、もう一台のほうであった。フロント部が押しつぶされて大破していたため、


ハンドルなどで運転手の下半身がはさまれ、動くに動かせない状態となっていたのだ。


やがてレスキュー隊が到着。


救出作業が始まった。しかし運転手の出血はひどく、


当初は意識がはっきりしていたものの、しだいに意識を失っていくのがわかった。



「おい、大丈夫か、しっかりしろ。もう少しだぞ、がんばれ」


私は懸命になって励ました。が、


そのかいもなく、まさに私の自の前で、運転手は息を引きひんしとったのである。


このときほど、自分の無力さを痛感したことはない。


瀕死の怪我人を前にしてなすすべもない自分が情なく、


またやりきれない思いでいっぱいであった。