本日のテーマ写真:

そこに触れても良いですか?気が急いて、会いたくて、風をきるように馬で闇夜を駆け抜けていく
懐に入れた土産の、菓子の袋を思いやれば、目を輝かせ喜ぶであろう、ウンスの姿が思い浮かばれて、チェヨンの頬が弛む
チェヨンはウンスを一人、屋敷に残してきていた。一泊二日の随行任務の、帰路についていたのだ
ん?
イムジャの部屋の明かりが消えておる…
何故だ?
おらぬのか?
遅くに屋敷に戻れば、明かりの落ちたウンスの部屋が目につく。どうしたのだろうかと、チェヨンはそれを不思議そうに眺める
暗く明かりの落ちた部屋に、怪訝な気持ちが芽生え始め、自然と足が大股になり、早足で進んでいく
胸によぎる小さな不安を表すかのように、逸る気持ちで屋敷の戸を、ガラリと力任せに抉じ開けた
「イムジャ、今戻りました」
中の様子を警戒しつつ、状況を確認するように、屋敷の敷居をくぐりると、慌てて下働きのミンスが駆けよってくる
屋敷の主の戻りに気づいたミンスは、お帰りなさいませと、深々と頭を垂れて迎える
ミンスの表情から、緊急性がない事を、即座に確認をするチェヨン
心配が取り越し苦労だった事で、気を張った胸を撫で下ろす
「今戻った」
チェヨンは短く挨拶をすると
イムジャは出てきておらぬのかと、辺りに視線を泳がせ軽く見回した
そこに居らぬ事を確認すると、チェヨンは眉を少ししかめて、イムジャはどうしたのだと視線を送る
その主人の視線の意図に、すぐに気づいたミンス。少し申し訳なさそうに、チェヨンにウンスの事を伝えはじめた
「旦那様、奥様は、お疲れになっておられるようで…」
チェヨンを見上げてそう告げたのだ
「イムジャが?」
「はい、夕刻、典医寺(チョニシ)から戻られてからも、大層お疲れになったご様子でございました…
旦那様がお戻りになるまで寝ていらっしゃるからと、夕餉も取らずに、そのままお眠りになっております
ただ、旦那様がお戻りになったら、その…お屋敷に入られる前に、起こして欲しいとおっしゃっており…」
チェヨンの事をよくわかっているミンスは、疲れていた様子のウンスをあえて起こさずに、一人で主人のチェヨンを迎え入れたのだ
そんなミンスにチェヨンは、そうしてくれてよかったと、満足しているように、無言の笑みで讃すると
「すまない、そのまま寝かしておいてくれ。後は俺が」
チェヨンはそう言い、屋敷の者にもと、旅先より持ち帰った土産を、ミンスにそっと手渡した

寝屋にて
音を出さぬよう気配をひそめ、部屋の中に静かに進んでいく
明かりの火は既に落ちていて、外から薄い光だけが差しこめていた
布団を掛けずに薄い衣を、なだらかな腰から下にかけて眠るウンスが、寝台に横たわっていた
すぐに起きれるようにと、布団にわざと入らなかったのだろう
そのような事をせずともよいのに…
チェヨンはウンスを、目でいたわりかける様に、やさしい眼差しで、真っ直ぐに見つめた

ウンスの浅い息遣いが、部屋の中にすーすーと柔らかく響き渡る
心地よいその音色に胸が安らぎ、心が小さくぽっと温かくなる
それに誘われるように、無性に目の前に横たわる、ウンスの寝顔が恋しく思われ、今すぐこの目におさめたいと強く思う
チェヨンは、そっと寝台に近づいて、すやすやと眠るウンスを見降ろした
薄明りをたよりに、目をじっと凝らすと、ウンスは眉間に小さくシワを寄せて、すっかりと眠りこくっている
寝顔を見てどこか安心したチェヨンは、ほっと一息を漏らして、その姿を愛でるように薄らと笑みを浮かべた
心配が安心へと変わり、チェヨンの肩の力がすーと抜けていった
改めて今度はしっかりと…
すやすやと眠る、我が妻の表情を…
ウンスの寝顔を再び眺めると、途端に美しい寝顔に、目が離せなくなり、惹きつけられる
たった一日や二日会えなかっただけなのに、俺はこんなにも…イムジャの寝顔に、魅せられてしまうとは…
あの四年の歳月、俺はよく堪え忍べたものだ…たかが二日だ。俺はなんと、欲深くなったのだろうか
手に入れても尚、ウンスを貪欲に欲する
そんな、自分の想いにチェヨンは照れくさくなり、ふっと笑いがこぼれた
それと同時にチェヨンは、ウンスが寝ているのをよいことに…
ひとつ…ひとつ…
ゆっくり時間をかけて、ウンスの隅々までを鑑賞するように…
頭の先から、ウンスの一つ一つを辿り、唇までと…唇を這わせるかわりに、視線で撫でまわしていった
なだらかな形の整った眉、魅了するよう線を描いた瞼、筋の通った小さな鼻に、誘うようなふっくらした唇
きれいな陰影を作る、窪みまでもが目につき気にかかる
寝息と共に小さく動くそれぞれが、甘い匂いを放つかの如く、囁きかけ魅了してくる
目を細めながら、まじまじと見つめて、愛しい妻の寝顔を、誰にも邪魔される事はなく、心ゆくまで味わっていったのだ
そして、その辿る愛撫の最後に、唇に視線が到達すると…
ほんの小さく開いた、隙間に目がいく
喉が急に渇いたように思えて、
思わず、ゴクリと喉を鳴らす
突然、触りたい衝動に駆られる
胸の中が、チリチリ音を立ててくすぶりを見せて、急に熱を帯び、あつくなっていくのだ…
ぐらりと抑えきれない物が、下の方から胸先まで漂ってきた
触れたい思いで、愛欲にかられはじめて…
チェヨンは、伸びた指先に力を張り巡らせて、誘われるがまま指先を伸ばしていく
ウンスのあどけなく、薄く、無防備に開いた唇に、ゆっくりと近づけていった
その瞬間
奥様はお疲れになって…
ミンスの言葉が思い返される
伸ばした手をハッと引き戻す
疲れておると…
せっかく良く寝ておるのだ
イムジャと話せぬのは少々寂しいが、触らば起こしてしまう
触りたい欲望に、起きて自分を迎え入れて欲しい抑えきれない想い…
しかし、疲れているウンスを、このままゆっくりと休ませてあげたい気持ち…
葛藤と戦い覚悟を決めると
ぎゅっと目を強く瞑り、張りつめた指先をグッと握りしめた
小さな欲の灯火をかき消すように、駄目だ、駄目だと、頭をぷるぷると振って、自分を諌めたのだった
「あら、ヨンァなの?」
突然、静寂の中で、耳にしたウンスの声に、チェヨンはハッとしたように、驚いて目を開けた
寝台を見返せば、ウンスがゆっくりと、重く落ちていた瞼を開き始めている
俺のせいで、起こしてしまったかと、チェヨンは少し慌てる
「イムジャ、起こしてしまいましたか?」
申し訳なさそうにチェヨンは唇に歯をたてて、ウンスに静かに問いかけた
「ごめんね、私、寝ちゃって…」
起きて迎えれなかったことを、申し訳なく思ったウンス。額にしわを寄せ、チェヨンを見つめ返す
顔色も悪くないようだ
ウンスの元気な声と姿に、また安堵する
そして、先ほどまで自分がしていた事の、やましさを誤魔化すように、チェヨンは悪戯な顔を浮かべると
「イムジャ、自分だけ野遊会に行けなかった事、ふれくされて寝ておったのだろ?」
明るく、けたけた笑いながら、ウンスに鼻先に顔を急に近づけて言った
からかうチェヨンに 「やだわ、あなたったら、そんな訳ないじゃない」 とウンスが頬を少し膨らませ、唇を尖らせる
その表情にトクンと胸が叩かれ
芽生えた欲が、またそそのかす
ウンスの顔のそばにあった、身を少し起こして、またそこを鑑賞すれば
その、尖った唇に目線がぴたりと奪われる
先ほど押さえたはずの慕情が、再び胸の中に舞い戻ってくる
「イムジャ、起きずともよい」
起き上がろうとするウンスを、そっと寝台に押し戻すと、チェヨンはそのまま、ウンスの上に乗り上げた

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某所で集まっている愉快な仲間たちのおかげ

(笑) で、先週は完全に脳がそこに捕らわれて、やや怪しいネタばかり書いたので、今週は自粛して、もし、書くとしても少量にとどめる予定です

なので、この後も、一般記事で公開できるお話になります

タイトルが若干、怪しげですが、純粋なお話ですので、ラブラブモードご期待なさらずに
