こんばんは
りおです

シンイ仲間から「姫はじめ」のお話を書いている人って案外いないよねって言われて、ちょうど、そっちに年明けからすっかり頭が行ってしまっている、りお

それなら、ちょうどいいじゃんってことで…姫はじめだけじゃないですが、さっそく書いてみました。

アメ限定ではなくて、全公開できるように書いたので、ラブラブはご期待せずに…

そして、2015年度も、うちのブログのテーマは 「ウンスの嫌よ嫌よは、好きのうち」でいきます


本日のテーマ写真:


イムジャ、機嫌を直してくれ




「あ~食べ過ぎたわ。あんなに食べなければよかった。お腹が苦しい」

「だから言ったのです食い過ぎだと」

あれほど何度も止めたではないかと、呆れた声でチェヨンが窘める

「だって、美味しかったんだもん。お正月の今しか食べられないのよ。逃したら勿体ないじゃない」

高麗のお正月のお食事、大好きなのよね。口を小さく尖らせて、ウンスはチェヨンに言い訳をした

マンボ兄妹の店からの帰り道、年始の街並みを…二人ゆっくりと景色を楽しみながら、手を繋ぎ歩いて行った

道中は閉じている店も多く、いつもよりひと気も少なく閑散としていた

ちょっと寒いけど、ヨンァの大きな手から伝わる温かさが染み入り、心が温まりぽかぽかとする

満腹ですっかりご機嫌なウンス。繋いだ手をぶらぶらと、振り歩いて、チェヨンとの穏やかな時を楽しんでいた

毎年、毎年この方は懲りない。いつも同じ台詞をいっておるのだ

あんなに食べなければ。もう何度その台詞を聞いた事だろうか

イムジャの食べなければよかったは、結局は口先だけなんだ

どう考えても、自粛をしようとする者の食い方ではないだろう

くるしい~と、腹を抱えるように撫で下ろすウンスを見て、チェヨンは、その姿が可笑しくて肩を震わせていた

風がぴゅーと吹きつけて、ウンスがぶるりと体を震わすと、繋いでいた手を離して、チェヨンはウンスの肩を抱き寄せた

互いに顔を見合わせほほ笑みあうと、寒さをやり過ごすように、身を寄せ合ってまた歩いて行ったのだ

その矢先、ウンスが、突然思いもよらぬ事を言い出した

「そもそも、あなたが悪いのよ」

ウンスは顔を顰め、上を見上げて、チェヨンを睨み付けた

ころころと変えるウンスの表情が可笑しい

チェヨンは突然、自分に向けられた矛先に、少し驚いて目をぱちくりとさせる

またこの方は、今度は何を言い出すのかと、ウンスの次の言葉が待たれた

きっとろくでもない事であろう

ぷっと、吹き出しそうになるのをぐっと堪えチェヨンは問い返した

「なんの事です?」

チェヨンは目を細め、様子をうかがう様にウンスを見下げると、ウンスはふて腐れ顔で、チェヨンに不満を漏らす

「だって、初日の出を見に行きかったのに。今年も起こしてくれなかったじゃない」

「え?その事ですか。それとイムジャの食い過ぎと何の関係が?」

まさかその話が出てくるとは…。思いもよらなかった。くっ、イムジャは本当に予測がつかない方だ

「だって、ほら。初日の出に行ければ、マンボのオンニの店はいけなかったじゃない。つまりはあなたのせいよ!」

よくもまあ、そんな事が言える。だからイムジャは面白い

呆れ笑いを浮かべながらも、そんな下らないやり取りが心地よく、そんな他愛もないやり取りに、チェヨンは楽しさを覚える

そもそも、イムジャは疲れて、ぐっすりと寝ておったではないか

そのようなところを、下手に起こせば機嫌が悪くてかなわぬ

俺は、一応、申し訳程度に起こそうとしたが、つついた俺の指先を、鬱陶しそうに振り払ったのは誰だと思うておるのだ

「イムジャは、疲れてぐっすり寝ておったではないか。俺は、明け方イムジャを、間違いなく起こしました」

はっ?呆れた。

何が疲れてよ…

「ヤァ!そもそも、誰のせいで疲れたと思っているのよ。今年こそは、絶対に初日の出に行きたかったのに」

そう来たか、若干耳が痛む

「さぁ…」

こうならば、開き直りだ

「さぁ。じゃないでしょ!ねぇ、ヨンァ、何処の誰のせいよ?」

形勢は変わらぬか…

「まぁ、心当たりがない事もないが…」

むしろ大ありだ

「あっ、呆れた。心当たりがないどころか、どう考えてもあなたのせいよ。だから言ったのよ、もう止めようって」

言われたか?
言われたな…

「イムジャ、来年こそは共に参ろう。な?来年こそ必ずお連れいたしますので、そのように怒らないでくれ」

「まったく…絶対よ?」

「はい。必ずや…。来年こそ、イムジャと共に日の出を見ましょう」

毎年、毎年この人は懲りない。私はいつも元旦に、同じ台詞を言っている気がする

来年こそは共になんて、本当に、この人は、口先だけなんだから

一晩中起きているだけでも眠いのに、もう明け方には、くたくたなのよ

どう考えても、ヨンァは、反省なんて言葉、三歩進めばすっかり忘れているわね

鶏よ、にわとり!

反省して、自粛をしようとするなら、適度って言葉をいい加減覚えて欲しいものだわ

チェヨンはふて腐れるウンスの肩を、誤魔化すように無理やり引き寄せ、耳もとで唆すように甘く囁いた

「イムジャ、機嫌を直してくれ。甘酒を飲みにいきますか?」

この方の機嫌を直すには、酒、食い物、祭り事だ。食い物はもう入らぬだろうから、これしかあるまい

「えっ?いいの?」

一転し表情を変え、目を輝かせるウンス

ほら、図星だ

イムジャは、俺に簡単に手懐けられ過ぎだろうと、また呆れ笑いがこぼれる

「今日は正月です。参りましょう」

ここは折れるとしよう

「やったぁ。早く行きましょ」

そのように、よい大人が、ぴょこぴょこと飛び跳ね回ってまったく…チェヨンは微笑ましげに、ウンスをじっと見つめた

外の街並みは寒いが、俺の心は温まる

イムジャは、手をぐいぐいと引っ張り、今にも走り出しそうな勢いだ

この方はすぐ調子に乗る

「しかし、ほどほどに…」

予め釘を刺さねばと、チェヨンが、諭すように、ウンスの目をまじまじ見つめた

「まぁ。呆れた。自分は、”ほどほど” がちゃんと出来ない癖にね。よく言うわ」

まずい、また立場がまずくなる
下手にとばっちりが来ぬうちに…

チェヨンは、何の話だと素知らぬ顔をして、ウンスの手をぎゅっと握って引き、満面の笑みで歩き出した


 その晩の事

「イムジャ」

「なに?」

「そろそろ、床に参ろう」

「私、今日はあっちの部屋で寝るわ」

「なっ、何を言っておるのだ」

「ねぇ。ヨンァ。今日は三が日よ。三が日っていうのはね、女性のために、妻に休息を与えるためにあるんだから」

本当は、家事をお休みするって意味だけど、家事はほとんどしてないし、どう考えても、一番の重労働は、これよこれ!

三日間くらいは、妻のお勤めをお休みしたって罰は当たらないわよね

「イムジャは、何が言いたいのだ」

「だから、つまりは、この三日間は、私の休養期間って事よ」

「はっ。何を馬鹿な事を…」

「だから、私は今日は、一人で、ゆ~くり寝ますから。よろしくね」

「ちょっと待て」

「やっ、やだ。手を離してよ」

「イムジャ、”姫はじめ”という言葉を知らぬのか?その、”三が日”とやらの前に、”姫はじめ”であろう。天界ではどうか知らぬが、ここでは重要なしきたりです」

「はっ、呆れた。”姫はじめ”が重要な事だなんて、そんな話聞いた事もないわ」

「今俺が決めました。チェ家当主の言うことは、いわばチェ家に居る者のしきたり。我が一族の訓に加えます」

「ぷっ。やだ、あなた何て書くつもりなのよ?三が日より、姫はじめを重視せよって書くわけ?」

「何か問題が?」

「あなた、有名人だって忘れたの?そんな馬鹿な物を残せば、後世まで受け継がれて、チェヨンの祠堂に飾られて笑い者よ」

そんな恥ずかしいものが後世に残ったら、ユ夫人である私まで笑いものじゃない

「……」

「そもそも、昨晩、大晦日の夜だって、日をまたいで朝まで…だったんだから。もう、姫はじめは達成よ、達成!じゃぁね」

誰のせいで初日の出を逃したと思うのよ

「待てっ」

「何よ。まだ何かあるの?」

「イムジャ。一年の計は元旦にありです。何事も最初が肝心であると、倭国の毛利元就という者が言っておるとか」

「あら。何事も最初が肝心なの?じゃぁ、なおさら、気を付けないと。もう、眠いのよ。ヨンァ、お休み」

「イムジャ。新年早々夫に、そんな辛い思いをさせるつもりか?」

「あら、ヨンァ。妻に新年早々、本来貰えるはずの休みも与えずに、あなたは辛い思いをさせるわけ?」

「なっ、辛い思いをだと…?辛いと?イムジャの気持ちは、よう分かりました」

「あら、分かってくれたのね。旦那様、じゃぁ、お休みなさい♪」

「イムジャ、本当に辛いのですね?」

「えっ?」

「本当につらいかどうか確認せねば」

「はい??」

「辛い思いなのであれば、俺がどのような事をしようとも…イムジャは悦に入った表情はせぬはずであろう?」

「えっ、はっ…ちょっ…」

「もし、本当に辛いならば、辛いなりの顔をしていただかねば」

「ええ!」

「イムジャは、感じずにいられる自信があるのだろう?」

「何を馬鹿な事を…」

「本当に、辛そうならば止めるとします。しかし、そうでなくば…」

「やっ、あなた何を…?」

「姫はじめです。イムジャ、途中で止めくれてと、本当に言える自信があるのか?」

「きゃぁ、や~。ちょっ、あぁ~きゃーーー!!!!」

無駄な抵抗は余計に俺を煽るだけ。

結局は、「ウンスの嫌よ嫌よは、好きのうち」。これも、チェ家に伝わる、重要な格言の一つ。つまりは、始めてしまえばこっちのもの

そして…

【一年の計は元旦にあり】

今年一年、この先が、思いやられるウンスさんなのであった



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