本日のテーマ写真:
そのような物は好かぬ
今日こそは、何でかなのか訳を聞いてみよう!ついに、そう思い立ったウンス
「ミンスさんちょっといいかしら」
「奥様どうなさいましたか?」
声に気づいたミンスは、料理する腕を止め、ウンスに振り返った
「その…私ずっと気になっていて…うちの料理には、何で人参が食材に使われてないの?あるわよね人参?」
「えっ?」
「今日でもう、1か月よ。何でかなって、ずっと気になって…」
ある時、おかしい事に気づいた。
私は気になって、それから指折り数えていた。今日で、もう1か月が、経とうとしていたのだった
くすくすとミンスが笑う
「その…旦那様がお好きでないので」
えっ?
予想外の答えが舞い戻ってくる
「ヨンァが?」
ミンスの答えに、びっくりしたウンスからは、素頓狂な声がでる
「幼い頃から苦手だったようですよ」
ミンスは、おどけたように笑ったのだった
やだ、信じられない
あの人に、苦手なものがあったなんて
β-カロチンにビタミンA、食物繊維にカリウムだって含まれちゃう
栄養たっぷりの、人参が嫌いだなんて、好き嫌いする、子供じゃない
この時代にサプリなんてもちろんない
体が基本の武士でしょ?
駄目よ、好き嫌いなんて
日ごろからの、食事から摂る、栄養摂取が大事なんだから
人参は25大アレルゲンでもないし、おそらくだけど単なる、好き嫌いね
私はもう、あの人の、妻だもん。ちゃんとね…あの人の体のコンディション整える事も考えないと
ふふっ、そう思うと、照れくさいような…
自分でも、まだ慣れない「妻(つま)」の響きが心地よい
よーしと、張り切る妻ウンス
「今日は料理に、人参入れてくれない?」
「よろしいのですか…?」
「嫌だなんて私が許さないから大丈夫」
私は厳しい妻よと、ウンスは腰に両手をあてて、フンっと威張って見せた

あっ、やだ
やっぱり避けているじゃない
本当に、人参苦手なんだ…
「ねぇ、ヨンァ。ほら、それよ、それ。それもちゃんと食べてよ」
「それとは何です?」
ウンスの突然の指摘に、チェヨンは目を丸くさせ、何の事だか分からぬといった風に小首をかしげる
「人参ちゃんと食べてよ」
「えっ…」
「人参はね、その中に、栄養がた~っぷり含まれているのよ」
「…人参は…好かぬ」
「ちょっと、好かぬって。ダメよ、ちゃんと食べなさいよ」
「好かぬと言っておるだろう」
むむむっ、ドクターの私に、そんな言い訳が通用するとでも思うの?
「ほら、あーんして」
ウンスは箸でとった人参を、チェヨンの口許に運んだ
しかし、チェヨンは、すました顔をぷいと背け、しれ~としている
「んっ、んん?ほら、あーんしてってばぁ。ねぇ、ヨンァ~」
唇をぷくっとさせ、ちょっと甘えたように、可愛くねだってみるウンス
「要りません。そのような物」
そのような物って…
おねだり作戦、この手でも、駄目なのね…
まぁ、ヨンァったら、どうしても食べないつもりね
「ちょっと、駄目でしょ、せっかく作ってくれたのに」
「要らぬと言ったら、要らぬ!」
鬱陶しそうに、箸を手で払い、また顔を横に背け、ふて腐れるチェヨン
本当に子供じゃないんだから…
高麗の大護軍ともあろう人が、人参を食べれないなんて笑っちゃうじゃない
いいわ、今日は諦めてあげる
リベンジはまた明日よ
絶対あきらめないんだから!

「腹がすいておらぬのだ」
やだ、呆れた…
「ちょっと、何よそれ。今ご飯一緒に食べようって座ったじゃない」
お腹空いたような顔してたくせに
「腹がいっぱいなので、今宵は、副菜だけ頂くことにします」
「はっ?ちょっと、ヨンァ、ご飯よ、ご飯。ご飯もちゃんと食べてよ」
「要らぬ…」
やだ、この人ったら、何としても食べないつもりね。本当に頑固なんだから
ウンスのアイディア料理、高麗風チャーハンを一口食べたチェヨン
しかし、その後から、それを口にしようとしなかった
その日の昼間、私はミンスさんに頼んで、ある料理を作ってもらった
ソウルにいた時、仲良かった友達が、よく言ってたのよね
人参をなかなか食べてくれない、子供のために、細かく刻んで、チャーハンやハンバーグにするのよって
「えっ、奥様、今日もですか?」
「そう、こうなったら、絶対あの人に食べさせようと思って」
「でも…全部残されておいででしたよ」
「そうなのよ…だからね、ミンスさん。今日はこまかーく刻んで、たくさんの野菜と一緒にお米と炒めてちょうだい」
卵やチャーシューは無いけど、チャーハンみたいにすれば、あの人だってきっと…
しかし、そんなウンスの工夫もむなしく、チェヨンは…断固として人参入りのご飯を食べようとしなかったのだ
やっぱり、駄目か…
お手上げかしら?
何かないかしら…
うーん、いい方法ないかな
あっ、そうだ!
その手があったわね

「ヨンァ、愛妻弁当よ」
ウンスがチェヨンにお弁当を渡す
「”あいさいべんとう”とは何ですか?」
くすくすとウンスが笑いかける
「私の愛情が、この中にたーぷり詰まっている、お弁当って事よ」
訝しげな顔をするチェヨンに
無理やりお弁当を持たせたウンス
先に出仕する、チェヨンの背中を見つめて、ウンスは呟いた
ふふふっ…
あの人ったらどうするかしら?

「あら、ヨンァ、お帰りなさい」
「……イムジャ。謀ったな…」
「くすくすくす。あら、ヨンァ、お弁当の箱見せてよ」
「嫌です」
「食べてないの…?」
少しさびしそうに、ウンスがチェヨンを見上げて、問いかける
「……あのような物…
残せるわけがなかろう」
「うそっ食べたの?」
「あれは、はぁとであろう…イムジャの愛がこもった”あいさいべんとう”だと…。なれば、俺だけの物です」
「くすっ」
「捨てることもかなわぬ。俺しか食えぬのだから、食うより他あるまい…」
やったー大成功ね
ふふっ、ハート型

いわゆる、デコ弁ってやつね
愛情たっぷり、栄養たっぷりの、ウンス特性の愛妻弁当よ
ウンスがくすっとチェヨンを見上げると
チェヨンは、恨めしそうに、じろっとウンスを見下ろす
ウンスは、飛び跳ねるように
やったーと喜んで
チェヨンの首に抱き着いたのだった

「ねぇ、ヨンァ。あなた、いつから人参嫌いだったの?」
「覚えておらぬが、好みません…」
「子供みたいね」
「こども?」
「幼子の事よ」
「俺が幼子のようだというのですか?」
「そう幼い子って人参、嫌いな子が多いのよ。でも栄養価が高いのよ人参って。だから、嫌々しないでちゃんと食べないとね」
この時代は食材が豊富な時代ではない
摂れるところから、ちゃんと栄養を取っておかないとね。体が資本だものこの人は
「イムジャは本当に口煩い」
「あら、よい母親になると思わない?」
「母親にですか?」
「そうよ。オンマっていうのは、そう言うものなのよ」
いつの日か、オンマとは、母上を意味すると言っておった…
イムジャが、母になると…
クスッ
それには、まず子が必要であろう
「イムジャ、頑張って、食ったのだ。褒美は頂けぬのですか?」
「えっ?ヤダ、あなたったら、何を言っているのよ」
「イムジャは先ほど、俺は幼子のようだと言ったろ?子が褒美をねだるのは、当然の事ではないか」
「くすくす…じゃぁ、ご褒美は、お菓子か何かね」
「そんな幼子を騙すようなものではなく、俺は大人の褒美のが…」
「ヤァ!ヨンァ!ちょっとあなた、言っている事が、矛盾しているじゃないのよ!」
「何を言うのです。母になるには子が必要。俺は大人の褒美が必要。辻褄はちゃんとあっております」
まぁ、本当に駄々っ子だわ
もう、あなたはどうして、
いつもそうなるのよ…
子供っぽい事を、大人の男の色香を漂わせて平気で言い放つ
ウンスは、呆れた物言いをしている、チェヨンをじろりと睨み付けた
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