

※連載ものです、順番にお読みください
1.ウンスのハロウィン
2.チュンソクのハロウィン
3.ウンスのハロウィン2
4.トクマンのハロウィン
5.ウダルチのハロウィン
6.みんなのハロウィン
7.2人のハロウィン
今年の流行は看護婦さんとか血まみれスプラッタだったらしいですよ!テレビで特集をやっていました。子供たちはみんなアナと雪の女王ですね♪
今日31日のハロウィンに高麗風ハロウィンを書いてみました
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本日のテーマ写真:
ウンスのハロウィン
屋敷中に甘い匂いが充満していた
あら…いい感じ!
うまく出来たじゃない
ウンスはその朝、唯一まともに作ることが出来る”手料理”…野苺のジャムを作っていた
これなら…
あの人…
これから目にするであろう夫、チェヨンの驚く姿が脳裏に浮かぶ…ウンスはにたりと悪戯に微笑んだ
自分の指をぺろりとひと舐めする
甘酸っぱい~。うーんいい匂い…
浮かれ気分でニヤニヤと頬が緩んでしまう。そしてこれから巻き起こるサプライズに、胸が弾んだ
よーし…
そーっと…そーっと…
くすくすっ
足音を出さずそして気づかれぬように、忍び足でのっそり…のっそり、大股で静かに歩を進めていく
そして目的の人物チェヨンの背後を取る
よしっ、行くわよ…!
ハナッ、トゥッ、セッ
「Trick or Treat?(トリックオアトリート)!!」まるで小悪魔のような、高らかな声色を出し、目的の男をその背後から脅かしたのだ
突然背後から聞こえた、聞いた事もない声色。今だかつて耳にしたことがない、言霊が宿ったような謎の呪文が耳に響く
奇妙な気配を感じ、すぐ様チェヨンは身を翻した。と、同時に壁にかけていた鬼剣をサッと取り上げる
目に見えぬ速さで、その鞘を抜き投げ捨てる。そして背後に潜む”小悪魔”の首元に鬼剣をキッと突きつけた
「……」
チェヨンは目を見開いた
何度もパチパチパチと小刻みに瞼を閉じたり、開いたりを繰り返す
唖然としたチェヨンは、驚きのあまりその口許は半分開いたままであった
「イ…イムジャ…」その人物に目を見張る。突きつけた鬼剣を握る手元が、かすかにカタカタ震えた
ウンスは予想をしなかったチェヨンの行動に、同じく目を大きく見開いて、その表情は凍りついていた
チェヨンと目が合うと同時に、自分の置かれた状況を把握する。半分泣きそうになりながら、鬼剣を突きつけるその男を上目づかいで睨み付けたのだ
チェヨンはウンスにすぐ気付くも、首や頬、そのウンスの手が真っ赤に血だらけになっている事に目が奪われた
唇が凍りつき言葉がでない
血の気が一瞬にしてサッと引いた
手にした鬼剣をガチャンと床に投げ捨てる。詰め寄るように、血塗れのウンスの両肩をぐっと掴む
「イムジャ!大丈夫か!何があったのだ!!」血だらけで立ちつくす我妻に、チェヨンは我を忘れる。ウンスの両肩を揺さぶり問いかけた
チェヨンのそんな必死の形相に、ウンスはひどく困惑する
こんなはずじゃなかったのに…
泣きたい気分…
ウンスは少し気まずそうに、口を小さく尖らせ顔をしかめる
「だから違うのよ…」
今度は、たいそう気まずそうな、泣き出しそうな困惑の表情を浮かべた
目に見えるその悍ましい姿とは異なり、ウンスからは恐怖や緊迫感が一切見られない
武士であるチェヨンは、自分が思うような事態ではない事を、経験から即座に判断をしたのだった
少し落ち着きを見せ、状況を確認しようとウンスをじっと見回す
するとウンスの体から発せられる何か…よ知っている野苺のような甘酸っぱい匂いがチェヨンの鼻をかすめてきた
緊急性がない事を察知したチェヨンは、ふ~と全身を強張らせた体の力をぬく
そして、床にしゃがみこむと、先程投げ落とした鬼剣を拾い上げすっと鞘に戻した
壁に鬼剣を戻す
そこで一人いじけ立ち竦んでいるウンスの手を引き、寝台にそっと座らせる
そして、瞳に優しい光を浮かべ、ウンスの頭部を優しく数度撫で上げた
チェヨンは近くにあった椅子を引き、ウンスの正面に置く
ハァ…
また大きくため息をこぼした
冷静さを徐々に取り戻すように、すっと静かにそこに座った
「イムジャ、それは何です?」ウンスの手を大きな手で優しく握りしめ、落ち着いた冷静な声で問いかけた
「何がよ…」
「だから何です?」
「だから何がよ…」
ウンスも小さくふーっとため息をついた
少し頭の中で何かを巡回させた後、覚悟を決めたようにぽつりと話し出した
「だから…Trick or Treat?(トリックオアトリート)よ…。今日はその…ハロウィンの日だから…」ウンスは言いにくそうに、凝視するチェヨンから視線を逸らし話す
「”とりっくおあとりーと?はろうぃん”?それはどういう事です?そして貴女の…その…その恰好は何です…」
首もとや手は真っ赤に染まり、血まみれ状態かのような姿になっているではないか
「これは…その…最近、流行してるスプラッター仮装よ…。えーっと、何て言えばいいのかしら…悪霊とか、死者みたいな仮装っていえば分かる?」
チェヨンは下唇を小さく噛みしめて、じっとウンスを見つめていた。小さくいいえと、首を振った
「分かんないわよね、えっと…ハロウィンってね、本当は、秋の収穫を祝って悪霊などを追い出す宗教的な儀式なの
それが天界で広く広がってね、一般人もやるようになって…南瓜(カボチャ)でお菓子を作ってパーティーをするのよ
で、Trick or Treat?(トリックオアトリート)って呪文を言うの。あっ、この意味は”ご馳走をくれないと悪戯するよ”って意味でね…
その呪文を唱えられたら…言われた人はお菓子をあげないといけないの」
ウンスはチェヨンに分かりやすく、ハロウィンの内容を説明した
「イムジャが俺にその呪文を告げた…という事は、俺はイムジャに菓子を差し出さねばならぬのですか?」ウンスの話を聞くうちにチェヨンは、完全に落ち着きを取り戻した
先ほどまで表情が固まっていたウンスも話していくにつれ、にこにこと楽しげな顔つきに変わっていく
チェヨンは天界のそのイベントに、段々と興味がそそられてきた
「そうよ!あなたお菓子を差し出さなきゃ駄目なのよ」ウンスはニヤリと悪戯な笑みを浮かべる
クッ…
イムジャというお方は、先ほどまであれほど落ち込んでおったのに…
借りてきた猫のように小さかったウンス。今度はまるで天下を取ったかのように、意気揚々と開きなおった様子
チェヨンはプッと笑いがこぼれ出た
「イムジャ俺は菓子など持っておりません…」どうしたらいいのだ?と少し困った顔をし見返す
その答えを待ってました!とばかりに、ウンスがニタリと頬を高く上げ、イヒヒと小悪魔みたいな笑みを浮かべた
「ハロウィンはね、お菓子がもらえないと、報復の悪戯が許されるのよ!!!」そういうと、両手の指先を、爪を突きつけるかのように”ガォ”と指先で形を作る
目の前のチェヨン両手を引き力任せに引っ張って、ウンスはチェヨンを寝台に猫が飛び付くようエイっと押し倒した
イムジャ…
「なっ、何を…」
チェヨンは鳩が豆鉄砲を食らったかのような、そんな驚きの表情を浮かべる
突然ウンスがチェヨンを押し倒した。あまりに呆気にとられ、身をひるがえす事もままならなかった
気付けばウンスはさっとチェヨンの上に乗り上げ、その体の下に組み敷かれてしまう
トクントクン…
トクントクン…
チェヨンの胸が小さくバクバクと鼓動する
イムジャ…
何を…
ウンスが自分の上に馬乗りになっている。困惑する自分の中に、かすかに生まれてくるそんな甘美な期待にチェヨンの胸はどこか胸が弾む
ウンスは再びイヒヒヒと笑うと、再び”ガオ”とポーズを取りチェヨンに覆いかぶさったのだ…
「うわ、わ、おわっやめ…てくっれ…」
チェヨンが寝台の上を転がりまわる…止めてくれという声は半分言葉になっていない
「アハハハ、ダメよ、悪戯だもの」
「頼むイムジャ、そこはダメだ…」
「クスクスッ、嫌よ、止めてあげない~♪お菓子ちょうだいよ!!」
「かっ、かし、など…うぅ、く…わぁ…」
「お菓子くれるまでやめないんだから♪」
「だ、だ、あわっ、ぐわっ…」
そこにはウンスに全身をくすぐられ、転がりまわるチェヨンの姿があった
「ハァ…面白かった♪」
すっかりご機嫌になったウンスは、至極満足げな笑みを浮かべる。もぅ涙が出ちゃったと、目頭を押さえる
「俺は死ぬかと思いました…」
チェヨンも妻から仕掛けられたその事に、笑いが止まらない
二人は何だかおかしくなり、顔を見合せケタケタと笑いあった
「ヤァ!チェ・ヨン!何でこんな朝っぱらから、こういう事になるのよ…」ウンスはブスッと膨れていた
せっかく綺麗につけた血のりのジャムもグチャグチャじゃない…呆れた顔でチェヨンを睨み付ける
「イムジャ、そのような感覚を呼び起こしておいて、自己責任だろう」
チェヨンはクスクスと甘く笑い、肩をスッと撫で上げる。満足したように、ウンスの白肌にチュっと口づけを落とす
そして名残惜しそうにもう片方の肩にも口づけ残すと、近くに落ちていた夜着を優しく肩にふわりとかけてあげた
「あっ!」
何かを思い付いたように
突然ウンスの眸がきらきらと輝く
「ヨンァ、そうそう私ね、いい事思いついて!今日、宮殿でもね、ハロウィンをしようと思うの」
ねっ、いいアイディアでしょ?
ウンスはまた悪戯な笑みを浮かべる
ウダルチのみんなでしょ、ムガクシのオンニ達、内官さん達、あっ、そうだ、叔母様と、チョナ、ワンビママもね♪
うきうきと思案を始める
そんなウンスを尻目に…一瞬にして再びその身体中の血の気が引いていく…
まさか、イムジャこれをあそこでやると???何と馬鹿な事を…
呆れ笑いを浮かべ、目を細めウンスを見つめるチェヨン
すると突如として…良からぬ妄想がむくむくと浮かんできた
”お菓子くれないと悪戯しちゃうわよぉ”!ウンスがガォとポーズし、ウダルチ達を次から次へと襲っていく
襲われたウダルチは、逃げまとうも、その顔はニヤニヤにやけているのだ
「医仙殿!菓子はない、さぁ悪戯を」
「どうか悪戯してくだされ」
「俺もだ!俺も菓子はやらぬ!」
「どんな悪戯をしてくれるのだ?」
ニヤニヤと鼻の下を伸ばした男達が…いやらしい笑みを浮かべるのだ
ウンスの悪戯を胸を高鳴らせ、目を輝かせ心待ちにしている
そんな悍ましい姿が目に浮かぶ
チェヨンは背筋が寒くなり、ぷるぷるっと頭を左右に振った
ハッ…
何という事だ…
自分が作り上げた妄想である事も忘れ、チェヨンはイライラと苛立ってくる
ならぬ
絶対、阻止せねばならぬ
ウンスはうきうきと浮かれて、頭のなかであれこれ試行錯誤を繰り返す
どうしようかしら?みんなお菓子は持ってないものね…あ、でも、チョナと、ワンビママはきっとお持ちよね
ウダルチさん達は、この人の面白ネタでも語ってもらおうかな♪
そうね…ムガクシさん達は、気になる人をカミングアウトしてもらうとか?
横にいるチェヨンの事など、気にもかけず妄想に花を咲かせる
そんなウンスを、チェヨンはキッと睨み付けた。そして、すくっと立ち上がった
「イムジャ、朝一で大事な軍義があり…顔を出さねばなりません。俺は先に参る故、イムジャはゆるりと来られよ…」
「あっ、あらそう?分かったわ。気を付けていってらっしゃい~」チェヨンをちらりと見るも、ウンスの頭の中はハロウィンの作戦会議中…それどころではなかった
覚えておれイムジャ
憎さ余って、愛しさ万倍…
誰がそのような…穢らわしい儀式を許すと思うのか…
浮かれ無邪気にはしゃぐウンスを…一人その部屋に残していく。何か決意を固めたような顔を浮かべ屋敷を後にした
「あれ?あの人…今日は非番って言ってなかったけ??まぁ、いいか」
どうせなら、もっと本格的にね♪
ウンスもスクッと立ち上がり、高麗式ハロウィンの準備をはじめた
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