こんばんは

りおです。検温のくだり…
我が家の実話です…♪


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本日のテーマ写真:
鬼の霍乱かくらん 前編



くすくす…

「まさに鬼の霍乱(かくらん)ね」 チェヨンを見下ろしてウンスは言う

そう、チェヨンが風邪を引いたのだ

ここ高麗は秋から冬に…季節は移り変わりを見せる。朝晩はなんだか肌寒いな…そう感じる事が増えるようになった

ここ最近、元の残党が村を襲い略奪を働いている。連日討伐のため遠征していた。その疲れも出たのか、赤い顔をして夫チェヨンが突然の帰宅をしたのだった

私はクスっと笑う

「私が今日は非番でよかったわ…。そうじゃなきゃ、あなたの事だから…どうせその辺にぶっ倒れるように寝ているのがオチよ」 フゥ…と小さな息を吐いた

熱で辛そうなチェヨンを横目で見て思う
今日はちょうど仕事がオフだった。タイミングが本当よかったわ…

高麗に私を攫った男チェヨン。私はその人を怒りにまかせて刺したことがある…。その時もあの人は周りに自分の弱みを悟られまいと、刀傷残るその体すら隠そうとした

熱なんかじゃ帰ってくる男じゃない。あぁ…きっと彼ね。チュンソクさんが無理やり帰してくれたんだわ…私はそう思ったのだ

チュンソクさんありがと…
ウンスは心の中で呟く

「ほらほら、ちゃんと布団をしっかりかけてね」布団の端をもちチェヨンの首元までしっかりとかけてあげる

「しっかり、温かくして休まないとね」そっと 子供に言い聞かせるように、チェヨンの目を見つめ髪の毛を優しく撫でた

「水分もちゃんと取らなくちゃダメよ…後で白湯を取ってきてあげるわ」
あ、でも熱が高いから、水にしようかしら?ウンスは頭の中であれこれ世話しなく考えていた

テキパキと手際よく事をすすめる

そうしている間も、チェヨンはグッタリして寝台に横たわってるのだ。ハァ…ハァ…と、息づかいも荒く熱も高そうだ

ウンスはその姿を見つめる
辛そう…かわいそうに…

しかし、そんなチェヨンを見ていると、唐突にあら、何だか妙に色っぽい…そう思ってしまったのだ

自分の中に降って湧きだしたような、そのやましい考えに…ヤダ、私ってば病人相手に何を考えてるの…ダメよ、ダメよ。ウンスは慌て焦る

誰よりも見慣れているはずの病人姿。しかし普段風邪をひくなどあり得ないチェヨンの病人姿なのだ…。憂いを帯びたようなその表情に、漏れ出る吐息…。眸は潤みどこか儚げな様相だ…

わが夫ながら何てセクシーなの…ウンスは思わずそんなチェヨンに見とれて、つい惚れぼれとしてしまったのだ…

ダメ、駄目よ!これじゃ私、ドクター失格じゃない!そんな思いを払い落とすかのようにウンスはプルプルと頭をふった

よし!
腕をまくり上げ張り切るウンス

「イムジャ…妙に嬉しそうではないか?」
熱い吐息を吐く…そして、話すのすらも苦しげに声を出す

「えっ?そう??」ドキッとし、目をくるりと見開く。そしておどけた顔を見せた

ウンスにチロリと視線を向ける
「ほら、そのように弾んだ表情をしておるではないか…」チェヨンは床に横たわり、上目使いでウンスを睨んだ

あらら、私ったらバレちゃったかしら?
そう、ウンスはどこかウキウキしていたのだ

いつもは屈強なチェヨンが熱で弱っている…でも、私は他でもない医員、そうドクターなのだ。自分の腕を振るえる事が嬉しいのだろうか。もしくは、いつになく大人しい弱ったチェヨンが可愛くて…そしてどこか可笑しくて…物珍しく…

ヤバいヤバい。浮かれすぎね…私

そんな思いを悟られまいと、ハハハと笑う。誤魔化すようにウンスは話をそらした

「ヨンァ!ラッキーじゃない!主治医がこんなに近くにいるなんて!私がちゃ~んと看病してあげますからね!」布団を再度整えてあげる

「あなたは大人しく寝てなさい。私は厳しい医員なのよ…」そういいながら腰に手を当てる。そして威張り気味にフンっと鼻をならしたのだ

主治医か…それも悪くないやもしれぬな…
チェヨンは気だるい自分の熱い体を感じつつ、心のなかでそう呟いた

「まずはバイタルね!」寝台に横たわるチェヨンのそばに腰を下ろした。ウンスがテキパキと診察を進めていく…脈を測り、体をチェックする

「ねぇ、ヨンァ体調はどうなの?どんな感じ?ちゃ~んと主治医に話してよね。ん?」弛んだ表情は跡形もなく姿を消し、ウンスは医者の顔をしていた

「体が…だるいです…。あとは、喉が痛みます」ハァ…と小さな吐息が漏れる。チェヨンが話すのも辛そうに、声を押し殺して答えるのだ

ウンスはコクコクと首を頷かせ
「うーんきっと扁桃腺炎ね。」ほら口を開けてあーん。大きく口を縦に開き、その口真似をして見せた

そんなウンスのしぐさが愛らしくおかしい。ふっとこぼれるように笑い、チェヨンが口をあーんと真似をし大きくあけた

喉は扁桃腺まで大きく腫れ上がっている。あら白の水疱が見える。ヘルパンギーナじゃない。子供の夏風邪だけど、抵抗力が落ちてると大人もかかる伝染病だ

こんな季節に…よほど抵抗力が落ちてたのね。チェヨンの体調の変化に、医者である自分が気付かなかった事が少し悔やまれた

へルパンギーナは子供の風邪。大人が掛かると悪化しやすい。そして何日も高熱が続くのが特徴なのだ。現代でも特効薬はない。抗生物質も効果はない。じっと安静にし熱が下がるのを待つしかない

「あら…やだ…喉が真っ赤じゃない…。相当痛かったでしょ?」チェヨン喉の赤さに思わずチェヨンの喉元に手を添える。複雑な思いがする。ヨンァあなたとても疲れているのね…じっとその人を見つめたのだ

チェヨンはふっと笑う
イムジャは熱ごときで大袈裟な…

そして熱を帯びた目で、ウンスを見つめる
チェヨンは無言で「はい」と頷いたのだ

この人は変わった。昔は痛い?と聞いて、はいと答えるような人じゃなかった。そんな弱味は私だけには見せてくれるのだ。心がポーと温かくなった

「熱はどう?」チェヨンのおでこに手を当ててみる…やはりかなり熱い。しかしこの寒さウンスの手も冷え切っているのだ。ここはどうかしら…チェヨンの首に手を当ててみるも、同じように激しい熱さを感じるのだ

チェヨンは思う
イムジャの手は冷たくて心地が良い…

あ、ダメだわ…
私、今手が冷たいから…

これでは正確に熱が測れないわ…とウンスは思う。ここには体温計何てない

そして、「あっ、そうだ!」と、何かを思い出したようにニコリと微笑みをうかべたのだ

「ヨンァ、ちょっといいかしら?」ウンスは自分の手のひらで、優しくチェヨンの頭を軽く抑えこむように包み込む

突然のウンスのその行動に驚きを見せるチェヨン。そんなチェヨンに、大人しくしてなさいねと、ニコリとまた笑いかける

そしてウンスはそのまま、自分の顔を近づけていき…発熱している熱い額に、そっとキスをしたのだ…

ウンスはそのままじっと動かない
そのまま目を何かを考えるように、そっと瞑っているのだ

「イ、イムジャ…どうしたのです?」急に額にキスをされたことに…熱で赤い顔をさらに赤らめ、チェヨンは驚きの表情を浮かべている

「ヨンァ、動かないで」ウンスはチェヨンの言葉と動きをし~と静止する

ウンスはしばらくの間…そのままの姿勢を崩す事なく保つ…ハナッ、トゥ、セッ

そして、もういいわと、突然手を離しパッと身を起こしたのだ

「やっぱ駄目ね、相当あるわ。40度近いかもしれない」ウンスは何かを測ったかのようにそう告げたのだ

「…なんです今のは…?」突然の口づけと、ウンスから発せられたその言葉が、ただでさえ思考能力の低下してるチェヨンを混乱させる

「あぁ、今の??検温(けんおん)したの。あ、え~と、つまり体の熱さをみたのよ。手ってね周りの気温に左右されやすいの。

手が冷えてると体感温度が変わってしまうのよ。でも唇はそんなに温度が変わらないの…。だからこうして唇で熱を測ったのよ」

ウンスは先ほどからずっと医者の表情をしている。そこにいる患者に優しい微笑みをたたえ、そう説明をしたのだ

むかし幼い頃、アッパが…風邪を引くとアッパがそうやって検温してくれた。私はそれが、くすぐったくて、気恥ずかしくて、アッパーヤダァやめてよ~そう、良く言ったものだ。懐かしいソウルの優しい父を思い出す

ところが突然…
チェヨンがむすっとした表情をする

「……」

急にそっぽを向き
黙りこんでいるようだ

え??
あれ…急にどうしたのかしら…

ウンスは突然、不機嫌になった夫に驚く

「ちょっヨンァ、何その顔…どうしたのよ?」ウンスはチェヨン頬に手をあて、具合でも悪くなったのかしら?と診察をしようとする

そんな手を振り払うかのように、チェヨンが顔を振り、その手を鬱陶しそうに振り払った

「ねぇ、あなた…だからどうしたの?」ウンスはちょっと困って、子供に話しかけるかのように優しくチェヨンを問いただした

「言いたくありません…」チェヨンがむすっとそっぽを向いたまま答える

あら、やっぱり拗ねてる…
何か怒っているわねこれ…

また、きっと…どうしょもない事ね…
クスッと心の中で笑う

「ねぇ、ねぇってばぁ~」甘えた声で様子を伺う。そして、寝ているチェヨンの体をやさしくなでるように揺する

何怒ってるのかしら…
今の検温?
何がまずかった…?

ウンスは少し困った表情をし眉をさげた
「ねぇ、言ってくれないとわからないわ…」ちょっと拗ねた声でチェヨンに問いかけた

「ねぇ、ヨンァ。ちゃんと言ってよ…何でもちゃんと話してってそう約束したじゃない」拗ねて口を閉ざしている…そんなチェヨンを諭すように声をかける

しばらくすると、観念したのか、チェヨンは言いたくなさげに重い口を開いたのだ

「イムジャは、いつも…そのように…そのように患者の熱を測っておるのか?」

そのような事を言うのも情けなく気が進まぬ。しかし、気になる気持ちも隠しきれない。ムスっとふて腐れ顔でチェヨンはそこにいる妻を睨んだ

ぷっ…
思わず吹き出してしまう

「ちょっと、あなた…私が他の人にもこうやって、熱を測っていると思ったの?クスクス…ヤダ、そんな訳ないじゃない…」

ヨンァってば…
熱の辛い体を抱えて、こんな時までそんな事を…大笑いしたいのをぐっと堪える

ここで大笑いしたらもっといじける。あなたったら…。もう本当に馬鹿なんだから…そう思いつつ胸がどこかキュンと熱くなった

チェヨンの髪の毛をあやすように撫であげる「ヨンァ。こんな事をするのはあなただけよ。そんな事気にするより早く元気にならないとね」ウンスはそう言って、チェヨンの額にそっと優しく口づけを落とした

実は、昔は良くやったのよね…。でも、ほとんど子供達にだけよ。まぁ…インターン時代付き合った元彼にも…ちょっと…やましい思いに心の中でチロリと舌をだした

チェヨンはそんなウンスの心の内を見透かすかのように、相変わらずふて腐れた顔で、ウンスをジロリと睨む

もう…まるで駄々っ子じゃないの
ウダルチの皆がみたら、腰を抜かすわね
大護軍がこんなにも子供っぽいなんて…
誰にも信じて貰えないわね

私だけに見せる…
そんなあなたの姿を…


ウンスは思う
いつもなら、壁際に追い詰められて……
きっと散々な目にあうわ
今日はそれも出来ず憎まれ口ね
ふふふ…と心の中で笑う


チェヨンは思う
イムジャ。”じんこうこきゅう”とやらも、ろくでもない…気に入らぬものであった。”けんおん”とやらも…イムジャめ。元気になったら覚えておれ


そんなチェヨンの心の内など知らずに、ウンスはさぁ、何からしようかしら?背をただし張り切るのだった


後編に続く
ちなみに、今回は甘々な展開になりません(・_・;)・・・・・あ、続編の事です



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