そうっと穏やかに並んでゆっくり歩く。
反抗期真っ盛りの娘が静かになるくらい、
こころ此処にあらずなくらい、
茫然自失。
ゆっくりゆっくり歩いて。
小さな声で恥ずかしそうに、
安価なものをおねだりした。
大学を三年生で自傷するくらいの哀しみで、
諦めたのは、
私に学費の負担をかけないため。
親バカかもしれないけど、
進学クラスにいて、
そこそこ出来る子だったんだよ。
避けておいた、私の奨学金を充てるつもりだったんだけど、
陰湿なイジメやストーカー被害で学校に行けなくなったために、
公的扶助が受けられなくなった。
私に出来る事は全部したい、と、
家で彼女の勉強を見た。
それがまた邪推を呼んで、
自宅に家庭教師を呼んでいると周りが決めつけて、
勝手な嫉妬と八つ当たりで、
進学希望も通らなかった。
悔しいから別の高校の進学クラスに合格、
頑張ったけど、
母子家庭は貧乏だけど、
勉強も出来ては世の中が面白く無いらしい。
本当に子どもの適性を見つけ出して伸ばす、
教育現場と機構があるのか、
甚だ疑問。
ハンデがあって教育の機会を奪うのも差別なら、
秀でてる子どもに伸びる教育を享受しないのも差別だ!と、
亡き父が、
昔々に言ってくれてちゃんと勤勉さで、
女性だけれども教育の機会を与えてくれた。
母親を四歳で亡くし、父親を十九歳で亡くした、末っ子で唯一の男の子に、
伯母たちは内職をして、生活費を仕送りしてくれたらしい。
働いてそんな実家は嫌だから里帰りはするけど、
跡は継がないと言い放った母が嫁に来ても、
若い頃はやりあったらしいけれと、今はどうだろう。
母は両親揃っていたけれど、女性だったし、
おじいちゃんは戦争引き揚げでこころを壊していたみたいだし、
男尊女卑が当たり前のじだいだったから、
きょうだいですばぬけた才能があっても、
学校に行かせて貰えなかったから、
自分の身内と否応なしに比較せざるを得なくて、
混乱したのだと思う。
だから私には、実の娘でありながら、
かなり意地悪だった。
遊びも友達も作らず、
進学を強くすすめて缶詰にしたのは両親なのに、
行けばヤキモチ、
行けなかったら罵倒。
そんな十代と二十代だった。
青春とは名ばかりで、
私は本当に心から楽しみたい事を実現できなかった。
そういう意味で、私は娘に勉学を強いて来なかったし、
幽閉もしなかった。
学歴が無くても家族に受け容れられる人が羨ましくて、
それでも自分の娘だから、
顔に感情に出さずに来た。
でもそれは、時に我儘を助長し、辛抱が足りなくなる。
バランスが難しい。
そうして大学進学を諦めるのに、
今となっては生死に関わるような自傷をした事で、
母子家庭の経済困窮から世間の目を外してくれた事で、
私を自責から解放してくれた本当は頭のいい、
優しい娘なんだ…。
でも、やりきれない時は勿論あって、
ママは大学出てるからウチの気持ちなんて解らないんや

と当たり散らす。
有名大学に行く事を使命とされてきた私とは別だけど、
どちらも世間の皺寄せを受けて生きている同士。
息子もそう。
年齢、性別、収入、国籍、学歴…
今や趣味で娯楽のブログさえ、
ランキングされる世の中。
もう、そういうの、押し付けないで欲しいし、
解らないように国民を脅す支配階級が決めたカラクリは、
適用をやめて欲しい…
そんな事を想いながら、
娘を保護して帰って来た。
留守番息子も無事の帰宅を見届けて、
疲れきったのか、深い眠りの中。
お姉ちゃんも倒れた。
そんな同世代の子がいる事も、
恵まれている人は鈍感なんだろうね。
個人的には鳩山さんの毎年お母様からいただいてた、
何十億というお小遣いで、
数多の苦しい事情を抱えた人達が助かると思ってるよ。
自分の娯楽に何十億。
一円が無くて餓死。
変な世の中。
私は私を変という事にしてる。
事実として、女性で、母子家庭で、肩書きも何もない、
ただのお母さんが勉強しながら考えても、
まともに考えてくれるどころか、
相手になんてしてくれない。
日本人だけらしいよ。
名刺にダラダラと長い会社などの肩書きで、
自分を修飾するのは。
肩書きじゃなく、
人間力で生きてもらえないもんかな。
だとしたら、名刺には、
親から貰った名前だけでいいはずなんだ。
命につけた最初の贈り物なのにね。
…変なの。
私も休みます。
もうもたないよ、色々。