後ろをカップルが歩いていました。
盲目の彼氏と、通常の彼女です。
彼女は別の場所である人に「働かなくていいんだからいいじゃん」と視覚障害の人に対する障害者の手当ての事を表現されたのだとか。
彼女は、「すっごく悔しかったし、めっちゃ言いたい事あったけど、本当に本当にその場でそうしてもその人に伝わるかどうかも含めて、いっぱいいっぱい考えて、結果我慢して言い返さなかった・・・でもすっごく悔しかった(原文そのまま)」と。
そんな声が聴こえた。
奇しくも私も似たような事を、哀しいかな娘に言われた事がある。それをつい思いだした。
そうしてそれを聴いていた彼が言った。
『もし僕の目が見えたら、お金要らんよ。しっかり働くよ。』
「そうやんな!欲しいのはお金やなくて、視力やんな!!」と彼女。
私は・・・胸が熱くなった。
今日も体調がよくない。最近は特に安定剤が手放せない。人の目も怖い。娘の無理解が哀しい。
障害者になりたくてなったんじゃない。気付けば苦痛がいつも一緒だった。
普通と言われることが出来なかった。奇異に見られたりした。
両親にも理解されなくてはっきりと「育てにくい」「気持ち悪い」「どうしてそんなに身体が弱いの!」とまで言われた。
「必死になっても足りないんだから、発熱してもお腹壊しても症状がちょっとでも我慢できるようなら、お布団の中に教科書とノートと鉛筆持ちこんで、横になりながら出来るでしょ!!!
100点ばっかりとってたら東大だって入れるんだからやりなさい!!!」
神経性だとは思って貰えずお腹を通したら「食べるからや!ただでさえ肥ってるのに出されたからっていって食べてどうすんのんな!自分で判断して絶食でもせんかいな!」と何日も絶食することなった。
そんなある日次の日の予習が終わってやっと深夜2時くらいに御風呂に入れたら強烈な貧血に見舞われて真っ暗になってバッターン!って倒れてしまった。
二階で休んでいた母はそれを真っ直ぐに守っているとは思わず(そもそも私の事なんて見てなかったと思う)「ウルサイ!なにこんな時間にバタバタやってんの!!」と大声で怒鳴って、
倒れていた私を見に来ることは無かった・・・私は育ててもらって申し訳ないが母に心を許しきれていない・・・
ずっとこうだったから解って貰えないのは解っていた。すぐパニックを起こす母。私にこの障害の特徴が出て診断が下った時に、母にもその可能性を示唆したら、
「何よ!自分が障害者やからっていって、人まで障害者にせんといてんか!私がそんなわけないやろ!私はいつでも正しいのに!」と返された事もある・・・
あれが親なりの愛の形かもしれない。でも未だにやっぱり解らない。混乱する。
そこそこ自分で出来る事が出て来て、価値観の違いから大喧嘩して、出て行く!と啖呵をきったとき、親は大慌てした。
事実として具体的に私がこなしていたり判断している家の事がもう多かったからだ。
でも、子どもだから、障害者だから、私への目線は偏見で染まっている・・・私はそういう事にいつしか敏感になっていった。
それが今日、背後から聴こえた。丁度お家賃を振り込むために金融機関のATMの前だったので、ふらついたのもあり、不思議君に待ってもらって、そのカップルの会話を噛みしめていた。
盲目の彼は「そう言った人・・・お金さえもらえればいい、のような価値観になってしまっているんだね・・・僕の目は・・・もう見える事が無いから、見えるようになって”ほら、欲しいのはお金じゃないんだよ”って見せて証明する事は出来ないしなあ・・・」と彼女に言った。
彼女はとっても哀しそうで悔しそうだった・・・。
私も思います。働くの好きなんです。人と関わるの、元々は好きだった。
欲しいのは・・・お金で買えない、理解というもの。
だけど、そのカップルの話に入る訳には当然いかず、
言葉にならない何とも言えない気持ちをただ噛みしめるしかなかった・・・
苦しい・・・