格闘技観戦の為に会場に足を運ぶと心に残る試合が多々ある。
目の前で起こった事に戦慄し凍り付く試合…
📀ゲーオ・フェアテックスVS久保優太📀
凍り付いていた会場を爆発させる試合…
📀武尊VSチャールズ・ボンジョバーニ📀
圧倒的不利に思われた選手がジャイアントキリングを成し遂げた試合…
📀平本蓮VSゴンナパー・ウィラサクレック📀
グッドルーザーなんて言葉もあるが、結局は輝くのはいつも勝者で敗者は足早にリングから引き上げるべき。
私も勝者こそが前進すべきで敗者は後退して然るべき。それが格闘技の本質だと常々思っている。
ただとある試合。
関西のエディオンアリーナ…いや、その当時はまだ大阪府立体育館と呼ばれていた今度のK-1のある第一ではなく第二競技場で行われた試合のみ敗者の姿が何より印象に残っている。
海人VS安保瑠輝也(試合動画確認)
1R:瑠輝也(10-9)
序盤中間距離での攻防、体格・リーチを活かした瑠輝也が優勢に試合を進める。
海人はジリジリと前に出てくるが時折スイッチ・二段蹴りを繰り出す瑠輝也のRか…
2R:海人(2度ダウン奪取にてKO勝ち)
2Rの攻防も中間距離での攻防。スイッチをしながら自分の距離で試合を進める瑠輝也だが、ジャブ・ローでジリジリと詰める海人…
攻防の最中、瑠輝也がジャブ→やや変則なオーバーハンドの右→左ボディと繰り出した所に海人が左フックを効かせ瑠輝也は後退。ロープ際での打ち合いになるが、海人の嵐の様な連打の前にたまらずダウン。
立ち上がり打ち合いで時折サウスポーになるもオーソドックス構えでの打撃。最後は再びロープ際で海人の右の顔面前蹴りがモロに入り試合を終わらせた。
私はこの当時は海人も瑠輝也も知らず、パンフレットには未来のエース対決と書かれていたが
よくある紹介文だなくらいに思っていた。
だが目の前で行われた試合は数ある格闘技観戦においても忘れられない試合となった。
本来であれば勝者の海人のショートレンジで連打でまとめる強さが印象に残っただけだろうが、敗者の瑠輝也がもっと強くなれるのに今の環境では勿体無いなという気持ちの方が強く残ったのを今でも覚えている。
だからこそ瑠輝也が名門のTRYHARDに移籍した時は嬉しく感じたし、これでもっと強くなれるだろうと期待した。
そこから数年立ち、結局そのTRYHARDを辞めるなど紆余曲折があり、ゴンナパーにKO敗け。そこで迎えた前回の試合は…
👊林健太👊
KREST所属オーソドックス・インファイター…
気持ちが強く前に前に出て打ち合いにいくハードパンチャー…
一番印象に残っているのが石田勝希との試合のせいか、打たれ強いというイメージは無くフィジカル的にはライト級ではそれ程大きい印象は無い。
📀石田勝希VS林健太📀
例えばオーソドックス構えの選手がオーソドックス構えの選手に奥足で右ミドルを打てばどうしてもモーションがあるので相手は攻撃を貰う準備が出来るし、貰いながら前に踏み込む事が出来る。
所が前足で打つクイックモーション左ミドルなら、相手は準備が出来ず貰ってしまい前に出辛くなる。
前に出辛いというのはK-1の短い3Rのリングでは致命的で、Rが進めば相手からすると焦りが出てしまい却ってじり貧になる。
今回の瑠輝也VS林建太の様にリーチ差がある場合は中間距離に釘付けにし、そこで優位に試合を進める事が出来る。
📀森坂陸VS江川優生📀
②サウスポー
対戦相手と構えが同じ場合、インファイトする場合は相手の懐に入る過程が必要になる。
その過程は構えが同じならそのまま踏み込めば良いだけだが、対戦相手が逆構えの場合は通常は相手の足の外側から踏み込む必要がある(井上尚弥は外側から踏み込んだが)。
📀ゴンナパー・ウィラサクレックVS林健太📀
③前蹴り(で良いからね)
これはかの美人の篠原悠人のお母さんが中澤純との2回目の試合のRインターバル中に指示していた言葉だが一つの真理だと思う。
相手の打ち合いに来たいのを前蹴りで邪魔する。
前述した様なクイックモーションでない通常のロー・ミドル・ハイキックは横から回し込むので無理やり相手の懐まで踏み込む事もできる。
だが前蹴りは真正面から飛んで来るので、真正面からの踏み込みは邪魔される。
前蹴りの巧い選手としては武尊が思い浮かぶ。
武尊はやりたい事は懐に入ってのド突き合いかもしれないが、その過程として相手のド突き合いをしたいタイミングに合わせるのではなく自分がド突き合いを仕掛けている印象。
📀武尊VS郷州征宜📀
以上が瑠輝也が林健太と戦う時に有効だと個人的に考えていた戦法…
林健太は瑠輝也との試合前に「近寄れば何も出来ない」と言っていたが裏を返せば「近寄らなければ何も出来ない」という事。
さてそこを踏まえて試合はどうなったか…
1Rドロー(10-10)
両者共にオーソドックス…
瑠輝也が良い左ジャブを入れるがややコーナーポストでの攻防。
林のワンツー→左ボディが繰り返し入りそのまま打ち合いが始まる。瑠輝也はサウスポーにスイッチして左ミドルを入れるが林は尚も前に出てパンチを振るう。
押し返し逆に林にコーナーを背負わせるが、すぐに反転し再び瑠輝也がコーナーを背負う展開。ガードを固め瑠輝也に右ボディストレート→左ボディと打ち込む。
瑠輝也は大振りの左フック・二段蹴りと返し一度はコーナーから脱出するが再び林にコーナーに詰められガードを固めた所にワンツー→左ボディと貰う展開。
瑠輝也は右上段ヒザ→クイック左ミドルと入れそのままサークリングするがまたコーナーを背負い攻防。打ち合いから間合いが空いた所で瑠輝也は再びサウスポーにスイッチ。
瑠輝也の左ミドル・左ストレートが面白い様に林に入るが再びオーソドックスに戻しコーナーポストでの打ち合い。第1R終了。
2R:瑠輝也(10-9)
両者1R同様にオーソドックスからスタート。
ジャブの差し合い。至近距離でのパンチの打ち合いは回転力のある林の土俵。
ただ林はやや打ち疲れか手数が減ってきた所に瑠輝也は逆に手数を増していき前蹴り→右飛びヒザも印象が良い。瑠輝也は再びサウスポーにスイッチ。ワンツー・三日月蹴りと面白い様に入り林を後退させるがオーソドックスに戻しコーナーポストに詰められ打ち合いになり2R終了。
3R:瑠輝也(左ストレートを打ち抜きKO勝ち)
両者再びオーソドックスでの攻防。
打ち合いになるが、瑠輝也の右ストレート→サウスポーにスイッチ・左ストレート→再び左ストレートで試合を終わらせた。
📀瑠輝也VS林健太📀
この試合を視て感じたのは瑠輝也はどんなつもりで試合に臨んだんだろうという事(体調が悪くてあのファイトスタイルにせざるを得なかったとかなら仕方がないが)…
元から因縁はあったみたいだし、相手の土俵でぶっ潰してやると考えていたのだろうか?
その気持ちは理解できるし、今回の試合は勝てたから良かった。
但し今後の試合、と言うか次の試合に今回と同じファイトスタイルでいけば間違いなくブッ飛ばされると思う。
リーチのある選手がコーナーポストに詰められて打ち合いに応じる…
瑠輝也はチンギス・アラゾフのファイトスタイルを目指していると語っているが、チンギス・アラゾフがそんな事するだろうか?
勿論格闘技をする以上打ち合いをしなければいけない事もあるだろうが、自分の武器は何か?
それを考えて試合をする事が大事だと思う。
例え話が漫画なのもどうかと思うが、私の好きなリクドウというボクシング漫画に柳涼太郎という選手がいて瑠輝也によく似ている。
リーチがある選手で指導者には相手の手の届かない場所で有利に試合を進める狙撃手としてのファイトスタイルを強要されるが、闘志を抑える事に折り合いがつかず指導者の元を去る…
最終的にその指導者が柳を導きたかったのは中間距離だった。
瑠輝也が今後どんなファイトスタイルでやっていくかは分からない。
ただ私にとって単純に勝ったから凄い‼️と思う選手ではない。期待しているからこそもっと良い動きができる、もっと強くなれると思ってしまう。今後もそれは変わらないだろうm(_ _)m