7 愛されるもの・愛される花
老人は乱暴に、ハサミの背を、せっかくの飴になすり付けた。
(あらら)
と思うと、不思議なほど艶かしい、曲線のウサギの出来上がり。
あんなに乱暴に扱っているのに、何故こんなに、正確に、美しい物が作れるのか。
「ミーナ。ちょっと見て、これかわいい」
老職人の技に見とれていると、フィーネが、隣のテントから声を上げた。
「なになに」
「見てー、これ。これなんか、いいんじゃない?」
可愛らしい、花柄の砂糖壷を持っている。
「誰のプレゼント?」
「私のっ」
「男の子の、買いに来たんでしょ、フィーネ」
「そんなに笑わないで。さっき、ミーナに似合いそうな、髪止めがあったよ。お姫様にあげるといい、お人形も」
「うそ。どこどこ」
「女の子のプレゼントは分かりやすいのにねー」
それにしても、欲しい物ばかりだ。
フィーネは結局、クッキーの抜き型を買った。
もしも上手に作れたなら、
「私、最高にうれしい。泣いちゃうかもしれない」
小さな紙袋を胸に抱えて、何度も彼女は、そう言った。
「泣いちゃ駄目よ、渡してもないのに」
「ミーナ、お城に来て。夜なら、オーブンも貸してもらえるわ。お姫様も「増やし目」の仕方がいま一つ、分からないっておっしゃっていたし。クッキー作るの、手伝って」
「おがまれても……」
「駄目なの? 今から、って言ってる訳じゃないの。結界師の仕事が暇なときでいいから、お姫様のお部屋にちょっと来てほしいの。すぐに終わらすから」
「うん……でもね……」
クッキーの作り方や、編物の手伝いをするのは苦ではない。妹のように可愛いフィーネの頼みなら、なおさらのこと、このクッキー作戦を成功させてあげたいと思うけれど……。
ジェルソミーナは自分が、『二度とお城には行けない』ということを、おずおず話した。
「なぜ」
フィーネは咎めるように目を見開いて、
「分かった。誰かに何か、言われたんでしょう、きっと!」
なぜ、こういう時の女友達は、妙に勘が鋭いのだろう。鋭すぎる。
ジェルソミーナが黙り込んだのを見て、確信を持ったフィーネは、
「駄目よ、そんなの気にしちゃあ。あ、もう一つ当ててあげる。相手は「ミド副執政官」でしょ! そうでしょ? いやな奴だもん。この前だって、私が……」
勢いに乗って、しゃべってはいけない事までしゃべり始めた。
「……そんな訳で、嫌がらせしてくるの。本棚にホコリがたまっているだとか、椅子が平行に並んでいないだとか、ふざけないで! 掃除は私の仕事じゃないのよ?」
(言われた相手は、ミド副執政官じゃないんだけどな)
あの執念深い、陰湿な政治家を思い出しながら、それでも彼女は止められない。
(ミド氏が相手なら、いつものことだし、こうも深刻にならなくて済むんだけど……)
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(あらら)
と思うと、不思議なほど艶かしい、曲線のウサギの出来上がり。
あんなに乱暴に扱っているのに、何故こんなに、正確に、美しい物が作れるのか。
「ミーナ。ちょっと見て、これかわいい」
老職人の技に見とれていると、フィーネが、隣のテントから声を上げた。
「なになに」
「見てー、これ。これなんか、いいんじゃない?」
可愛らしい、花柄の砂糖壷を持っている。
「誰のプレゼント?」
「私のっ」
「男の子の、買いに来たんでしょ、フィーネ」
「そんなに笑わないで。さっき、ミーナに似合いそうな、髪止めがあったよ。お姫様にあげるといい、お人形も」
「うそ。どこどこ」
「女の子のプレゼントは分かりやすいのにねー」
それにしても、欲しい物ばかりだ。
フィーネは結局、クッキーの抜き型を買った。
もしも上手に作れたなら、
「私、最高にうれしい。泣いちゃうかもしれない」
小さな紙袋を胸に抱えて、何度も彼女は、そう言った。
「泣いちゃ駄目よ、渡してもないのに」
「ミーナ、お城に来て。夜なら、オーブンも貸してもらえるわ。お姫様も「増やし目」の仕方がいま一つ、分からないっておっしゃっていたし。クッキー作るの、手伝って」
「おがまれても……」
「駄目なの? 今から、って言ってる訳じゃないの。結界師の仕事が暇なときでいいから、お姫様のお部屋にちょっと来てほしいの。すぐに終わらすから」
「うん……でもね……」
クッキーの作り方や、編物の手伝いをするのは苦ではない。妹のように可愛いフィーネの頼みなら、なおさらのこと、このクッキー作戦を成功させてあげたいと思うけれど……。
ジェルソミーナは自分が、『二度とお城には行けない』ということを、おずおず話した。
「なぜ」
フィーネは咎めるように目を見開いて、
「分かった。誰かに何か、言われたんでしょう、きっと!」
なぜ、こういう時の女友達は、妙に勘が鋭いのだろう。鋭すぎる。
ジェルソミーナが黙り込んだのを見て、確信を持ったフィーネは、
「駄目よ、そんなの気にしちゃあ。あ、もう一つ当ててあげる。相手は「ミド副執政官」でしょ! そうでしょ? いやな奴だもん。この前だって、私が……」
勢いに乗って、しゃべってはいけない事までしゃべり始めた。
「……そんな訳で、嫌がらせしてくるの。本棚にホコリがたまっているだとか、椅子が平行に並んでいないだとか、ふざけないで! 掃除は私の仕事じゃないのよ?」
(言われた相手は、ミド副執政官じゃないんだけどな)
あの執念深い、陰湿な政治家を思い出しながら、それでも彼女は止められない。
(ミド氏が相手なら、いつものことだし、こうも深刻にならなくて済むんだけど……)
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