6 愛されるもの・愛される花 | 南域結界☆ ジェルソミーナ

6 愛されるもの・愛される花

 プレゼント相手を想像しようとした途端、あろうことか、ある男の顔が浮かんだ。
 口は悪いし性格も悪い、デリカシーがない上に、女癖が悪い。
 キザで、自信過剰で、散財家。
 多くの人の幸福よりも、自分一人(と彼女)の快楽だけを、最大限に追求する、脳天気、無責任、放蕩男。
 なのに、つき合う女にだけは事欠かない(これが一番の謎なのだが)。

(――ジュンクリフ)
 そんな男を引き合いに出すのもどうかと、正直、かなりためらわれたが、
(それでもあいつ、いろんなプレゼントもらってるしな。それでいて、結局一番、喜ぶのは「あれ」。他の男でも……まあ、フィーネちゃんにもらって、嬉しくない事はないだろう。……第一、可愛いし)
 フィーネは落ち着きなく、辺りの雑貨屋を、見渡している。
「クッキー。なんて、どう?」
「クッキー?」
 あきらかに声が驚いている。
 ジェルソミーナは、人差し指を、左右に振って、
「大切なのは、気持ちとフィーネちゃんらしさ、よ。フィーネちゃんらしい、かわいらしさとあたたかさを、ね。変に高価で「らしくない」物よりも、ちょっと凝ったクッキーに挑戦してみましょうよ。ゼリーを混ぜたり、チョコレートムースで飾ったり、お絵描きしたり……ね。なにより、クッキーなら渡す理由に困らないわ。『ちょっと味見して欲しいの』とか『作りすぎちゃって……もし良かったら』とかね」
「あげたことあるの?」
「ううん。私はクッキーを作れない子に、代役として作ってあげて、作戦を授けるだけ。突然もらっても、物より自然でしょ?」
「クッキーか……」
「あ、別にプチケーキでもいいのよっ? なんならシュークリームとかにも、挑戦してみない?」

 食品街の奥まで来て、辺りは、お菓子を作る材料、道具のテントで一杯になっている。
 砂糖を溶かし、犬や猫や竜を作る、飴職人のテントの前で、子供や大人が、垣を連ねて立ち止まっている。
 ジェルソミーナも、立ち止まった。
 お世辞にもきれいとは言えない、節くれだった指が、小さなハサミの先端を、白いもちもちとした腹部にくわえこませる。
 引っくり返す。
(あら?)
 足が出来ている。切り落ちたりはしないで、長い耳も出来た。


>INDEX