1 愛されるもの・愛される花 | 南域結界☆ ジェルソミーナ

1 愛されるもの・愛される花

   三章 愛されるもの・愛される花



 講義終了の木槌を、議長が鳴らすか鳴らさないかのうちに、三人は表へ飛び出していた。
「やったあ、終わったあー!」
 感動のあまりカヤ中尉が、不謹慎にも、こぶしを作って叫んでしまう。
「終わったなあ、カヤ!」
「おおっ!」
 夜の、議場前の階段で、ジュンクリフ中尉とカヤが片手ずつ。そして両手を、互いに打ち合わせる。

「やだよこんなの。なんで僕まで、講義を受けなきゃ駄目なのさ。しかも六日間! 昼食後と夕食後に、毎日っ!」
「そう言うなよ」
 うんざりした顔で、さっさと階段を降りようとするニック少尉の肩に、ジュンクリフが腕を回す。
「終わったんじゃないか。あとはパアッと、遊ぼうぜ」
「そうだよニック! これで僕らは自由の身だ。もう微積も併有法も、捨てちまえ! よしっ、酒だっ、マディの店に飲みに行こう!」

 三人の乱痴気騒ぎは、当然、会議場の上司にも丸聞こえであった。
 立ち上がりかけていた特殊部隊指揮官・ダマラ少将も、そのままの姿勢で動けなくなってしまっている。
「あー」
 静まり返ってしまった出席者全員を、どうにかしようと、苦しまぎれに、上座横手の老人が咳払いをした。
「……声がちと、大きすぎますな」
 ちなみにこの老人、オミト将軍と呼ばれる近衛連隊の司令官で……ジュンクリフの元上官である。

 彼の悪戯の後始末役、とでも言おうか。顔はさすがに落ち着いたものだが、
(あの坊主、いくら言ったら分かるんじゃい)
 机の下で一つ二つ、指を折り数え、ぐっと肝に溜め込み、我慢している。
 だが、ニックやカヤの元上官だった、ドランコ将軍やエズビ将軍は、さすがにたまりかねた様子で、
「そういう問題ではないでしょう」
 と冷たくあしらう。

「彼らの件は」
 上座のガービン総司令が、一つ溜め息をつき、間に入ってきた。
「今はまだ、様子見ということでよろしいでしょう。彼らの会議と任務は、これで終わった訳ではない。我ら統帥部と将軍諸君は、今回、最終回の一回限りの参加だったがな……セブ主任」
「はい」
 黒板の前で、白衣の主任が、姿勢を正した。
「講習、ご苦労だった。実に、ためになった」
 補佐官ネーブルの欠伸を見ぬふりして、元帥は、上座の席を立った。
「では解散」


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