10 鏡の微笑
「奴を、わたしの前から遠ざけろ! 二度と、このわたしの前に姿を現すな! 消え失せろ!」
ウサギのリップルとお菓子の袋を掴んで、マチルダはホウキを抱え直し、窓へと向かった。
「待て!」
テーブルの上に、じっと両手をついている。顔色がロウソクのように真青になっているのが、よく見えた。
「あいつはどこだ」
戸棚の影、鏡の中を目捜しして宰相は尋ねた。
「あいつは一緒ではないのか?」
少女は首を傾げた。
宰相の機嫌が悪くなっていく。
「ここにいた女だ。あの時、この『鏡』に映っていた女だ!」
砕けはしなかったものの、銀色の鏡が音をたてて震えた。
「あいつはどうした!」
「分かんなあい」
「分から……? そうか。もう一人、いたな。お前と一緒に来た女が」
「まあちゃんのお姉ちゃん」
消え入りそうに答える。
「では」
宰相は苛々と、鏡の表面を、こぶしの裏で叩いた。
「ここにいた女は何なのだ。あの時、部屋には、お前達二人と、わたししかいなかった。では、ここにいた女は誰なのだ! なぜここに、いないはずの者が、映る!」
「分かんない……」
「いや、何かを知っているはずだ。おかしくなったのは、お前達が来てからだ。あの女は何だ、どうして鏡の中にいる! 答えろ!」
少女はついに泣き出した。
「分かんないの……」
「知っているはずだ。そうでなければ、こうも立て続けに、お前達絡みで、不愉快な事ばかりが起こるはずがない。結界師もそうだ、お前達もそうだ、一体何を隠している。なぜわたしを不愉快にさせる。お前達は一体、何をしでかすつもりなのだ。そしてあの女は!」
「分かんないんだってばあ」
水晶の破片の中に、腰を落として泣き始めた。
「分かんないの。遊びに来ただけなのに」
「もういい、帰れ!」
宰相は私室の扉を開いた。そして壁の剣を取り上げると、マチルダを残し、足早に廊下を去って行ってしまった。
マチルダはしばらく泣いていた。
ポケットの中から、ようやくのこと、ヌイグルミのウサギが顔を出した。
「オコラレチャッタネ」
「いいんだあ」
マチルダは涙を拭った。ポケットからハンカチを出そうとすると、中身の入っていないキャンディの包み紙ばかりがこぼれ出てきたので、マチルダはウサギの耳で目を拭った。
「マアチャン」
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ウサギのリップルとお菓子の袋を掴んで、マチルダはホウキを抱え直し、窓へと向かった。
「待て!」
テーブルの上に、じっと両手をついている。顔色がロウソクのように真青になっているのが、よく見えた。
「あいつはどこだ」
戸棚の影、鏡の中を目捜しして宰相は尋ねた。
「あいつは一緒ではないのか?」
少女は首を傾げた。
宰相の機嫌が悪くなっていく。
「ここにいた女だ。あの時、この『鏡』に映っていた女だ!」
砕けはしなかったものの、銀色の鏡が音をたてて震えた。
「あいつはどうした!」
「分かんなあい」
「分から……? そうか。もう一人、いたな。お前と一緒に来た女が」
「まあちゃんのお姉ちゃん」
消え入りそうに答える。
「では」
宰相は苛々と、鏡の表面を、こぶしの裏で叩いた。
「ここにいた女は何なのだ。あの時、部屋には、お前達二人と、わたししかいなかった。では、ここにいた女は誰なのだ! なぜここに、いないはずの者が、映る!」
「分かんない……」
「いや、何かを知っているはずだ。おかしくなったのは、お前達が来てからだ。あの女は何だ、どうして鏡の中にいる! 答えろ!」
少女はついに泣き出した。
「分かんないの……」
「知っているはずだ。そうでなければ、こうも立て続けに、お前達絡みで、不愉快な事ばかりが起こるはずがない。結界師もそうだ、お前達もそうだ、一体何を隠している。なぜわたしを不愉快にさせる。お前達は一体、何をしでかすつもりなのだ。そしてあの女は!」
「分かんないんだってばあ」
水晶の破片の中に、腰を落として泣き始めた。
「分かんないの。遊びに来ただけなのに」
「もういい、帰れ!」
宰相は私室の扉を開いた。そして壁の剣を取り上げると、マチルダを残し、足早に廊下を去って行ってしまった。
マチルダはしばらく泣いていた。
ポケットの中から、ようやくのこと、ヌイグルミのウサギが顔を出した。
「オコラレチャッタネ」
「いいんだあ」
マチルダは涙を拭った。ポケットからハンカチを出そうとすると、中身の入っていないキャンディの包み紙ばかりがこぼれ出てきたので、マチルダはウサギの耳で目を拭った。
「マアチャン」
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