7 鏡の微笑
その時、猫が真っ先に異変に気付いた。人間が気付く時には、猫はすでに舞台を飛び降りている。
顔を隠した男達が、観客達をかき分けて、舞台の上になだれ上がってきたのである。
「きゃあああっ!」
マントの下に隠し持っていたナイフに気が付いて、婦人達は一斉に左右に飛びのいた。
ジェルソミーナも逃げようとするが、奥まった所にいる彼女は、木箱や逃げまどう主婦達に阻まれて、思うように動くことができない。
男の一人が彼女の肩をつかんだ。
が、思いきり足を踏みつけられて悲鳴を上げる。その隙にジェルソミーナは舞台を飛び降りた。
リーダー格らしい男の合図で、男達は群集の中に飛び出した。
先回りをしていた男が彼女に手を伸ばす。だが、割り込んできた牛の頭に邪魔されて届かない。
一方、ジェルソミーナも屋台の間に逃げ込みながら、生ゴミやガラクタに足を取られて逃げにくそうだ。
キーツ宰相はその様子を、テラスを移動しながら初めから見ていた。
男達は結界師を、広場の中から教会の門前へ、追い込もうとしているようだ。
(なにをしている!)
あまりにも結界師らしかぬ追い込まれ方に、キーツは吐き捨てた。
(なぜ逃げない!)
彼は自分の矛盾した台詞に、気付いていない。
ジェルソミーナは思わず転倒した。
「いてててっ」
足首に、都市旗を吊り下げるロープが絡みついている。焦って、それをはずす。
「どこへ行った」
「こっちだ!」
ジェルソミーナはまた駆け出した。ギターはまだ弾きこなせたが、右肩のケガが治っていない。
魔法を使うために力を入れると、骨が砕けそうに痛むのだ。
「あっちに追い込め!」
「急げ!」
男達の足音が間近で響く。
ジェルソミーナはテントの柱から広場の様子を覗き見て、一瞬の隙にパレードの、花で飾った大きな車の影に隠れた。
「お姉ちゃんなあに?」
花冠の少女が、車の上から彼女を覗き込んだ。
「隠れんぼ?」
ジェルソミーナはあいまいな表情で、微笑み返す。
「なにをしているの。みんなに手を振ってあげて」
母親らしき声が、少女を引き離す。
「あのねー。ママ」
「お利口にしてなさい。みんな見てるわよ」
「あのね、あのね」
「じっとしていなさい。お利口にできない子、ママきらいよ」
「いたぞ!」
広場の出口で待ち構えていた男が、仲間に叫んだ。
「おい、そこだ!」
男達は一斉に飛び出した。
彼女は鼓笛隊の合間を縫って、仮装行列の中に紛れ込む。
けれど、男の手が伸びて、ジェルソミーナの腕をつかみ取った。
「離して!」
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顔を隠した男達が、観客達をかき分けて、舞台の上になだれ上がってきたのである。
「きゃあああっ!」
マントの下に隠し持っていたナイフに気が付いて、婦人達は一斉に左右に飛びのいた。
ジェルソミーナも逃げようとするが、奥まった所にいる彼女は、木箱や逃げまどう主婦達に阻まれて、思うように動くことができない。
男の一人が彼女の肩をつかんだ。
が、思いきり足を踏みつけられて悲鳴を上げる。その隙にジェルソミーナは舞台を飛び降りた。
リーダー格らしい男の合図で、男達は群集の中に飛び出した。
先回りをしていた男が彼女に手を伸ばす。だが、割り込んできた牛の頭に邪魔されて届かない。
一方、ジェルソミーナも屋台の間に逃げ込みながら、生ゴミやガラクタに足を取られて逃げにくそうだ。
キーツ宰相はその様子を、テラスを移動しながら初めから見ていた。
男達は結界師を、広場の中から教会の門前へ、追い込もうとしているようだ。
(なにをしている!)
あまりにも結界師らしかぬ追い込まれ方に、キーツは吐き捨てた。
(なぜ逃げない!)
彼は自分の矛盾した台詞に、気付いていない。
ジェルソミーナは思わず転倒した。
「いてててっ」
足首に、都市旗を吊り下げるロープが絡みついている。焦って、それをはずす。
「どこへ行った」
「こっちだ!」
ジェルソミーナはまた駆け出した。ギターはまだ弾きこなせたが、右肩のケガが治っていない。
魔法を使うために力を入れると、骨が砕けそうに痛むのだ。
「あっちに追い込め!」
「急げ!」
男達の足音が間近で響く。
ジェルソミーナはテントの柱から広場の様子を覗き見て、一瞬の隙にパレードの、花で飾った大きな車の影に隠れた。
「お姉ちゃんなあに?」
花冠の少女が、車の上から彼女を覗き込んだ。
「隠れんぼ?」
ジェルソミーナはあいまいな表情で、微笑み返す。
「なにをしているの。みんなに手を振ってあげて」
母親らしき声が、少女を引き離す。
「あのねー。ママ」
「お利口にしてなさい。みんな見てるわよ」
「あのね、あのね」
「じっとしていなさい。お利口にできない子、ママきらいよ」
「いたぞ!」
広場の出口で待ち構えていた男が、仲間に叫んだ。
「おい、そこだ!」
男達は一斉に飛び出した。
彼女は鼓笛隊の合間を縫って、仮装行列の中に紛れ込む。
けれど、男の手が伸びて、ジェルソミーナの腕をつかみ取った。
「離して!」
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