4 赤いリボン
「はっ」
二人の王女はそこから動けなかった。
客が去り、王が去って、中庭に誰もいなくなってからも、しばらくは動けなかった。
やがてカトリーヌが妹の手を引っぱり、自分の部屋に連れて帰った。
二人の王女は確かに似ていた。
今、長椅子の上に、二人仲良く並んで座っているのを見ても、鏡が間に仕込まれているかのように、二人は似ていた。
確かに気味が悪い程。
シルクのハンカチを握りしめて、お互いの手でお互いの手を握っていた二人は、しばらくの沈黙の後、突然泣き始めた。型くずれもなく、美しく巻かれた髪を、しずくが伝って落ちた。
「姉様」
大人しいマーガレットが、弱々しい声を紡ぎ出して、ようやくのように一つの文章を姉に投げかけた。
「姉様、私死にたくない」
カトリーヌはマーガレットを抱きしめた。マーガレットは頬を、姉の肩に押し当てた。
二人は抱き合って泣いた。
陽が傾き、沈んでも、二人はその手を決して緩めようとはせず、泣き続けた。
やがて刻を告げる鐘が鳴った。
彼女達の部屋は安全なように塔の最上階に作られた、静かな、いわば外界から隔離された場所だった。
部屋の窓が小さく作られているのも、外の焼きつけるような陽差しが、王女達の肌を傷付けないように、配慮されたものである。そこには普通、レースのカーテンがかけてある。本棚には本はたくさん入っていたが、手が届かない所のは取る事が出来なくて、また侍女も取ってくれなくて、読んだ事はない。ただ、くるみの木で作られた机の上から、二人がお気に入りのピエロの人形が、愛想良く笑って、こちらを見下ろしている。
こんな時刻になるまで明りを点けなかった事はなかったために、二人には高すぎる天井も、広すぎる棚の列も、とても不気味に思えた。
カトリーヌはもう一度、マーガレットを強く抱きしめた。
そしてゆっくりと言った。
「マーガレット。私と替えっこしましょ。あなたがカトリーヌになるの。そうしたらあなた、死ななくても済むわね。ねえ、良い考えでしょ。私のおリボン、あなたにあげるわ。ね、そうしてあなたが私に、そのリボンをくれたら……」
カトリーヌは自分のリボンをマーガレットの髪に結わえ直した。
「あなたはどこから見てもカトリーヌだわ」
マーガレットはもう一人の王女を見上げた。
王女は笑って言った。
「忘れないでね。あなたがカトリーヌなのよ」
泣いている王女の髪を、笑っている王女が優しくなぜた。
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二人の王女はそこから動けなかった。
客が去り、王が去って、中庭に誰もいなくなってからも、しばらくは動けなかった。
やがてカトリーヌが妹の手を引っぱり、自分の部屋に連れて帰った。
二人の王女は確かに似ていた。
今、長椅子の上に、二人仲良く並んで座っているのを見ても、鏡が間に仕込まれているかのように、二人は似ていた。
確かに気味が悪い程。
シルクのハンカチを握りしめて、お互いの手でお互いの手を握っていた二人は、しばらくの沈黙の後、突然泣き始めた。型くずれもなく、美しく巻かれた髪を、しずくが伝って落ちた。
「姉様」
大人しいマーガレットが、弱々しい声を紡ぎ出して、ようやくのように一つの文章を姉に投げかけた。
「姉様、私死にたくない」
カトリーヌはマーガレットを抱きしめた。マーガレットは頬を、姉の肩に押し当てた。
二人は抱き合って泣いた。
陽が傾き、沈んでも、二人はその手を決して緩めようとはせず、泣き続けた。
やがて刻を告げる鐘が鳴った。
彼女達の部屋は安全なように塔の最上階に作られた、静かな、いわば外界から隔離された場所だった。
部屋の窓が小さく作られているのも、外の焼きつけるような陽差しが、王女達の肌を傷付けないように、配慮されたものである。そこには普通、レースのカーテンがかけてある。本棚には本はたくさん入っていたが、手が届かない所のは取る事が出来なくて、また侍女も取ってくれなくて、読んだ事はない。ただ、くるみの木で作られた机の上から、二人がお気に入りのピエロの人形が、愛想良く笑って、こちらを見下ろしている。
こんな時刻になるまで明りを点けなかった事はなかったために、二人には高すぎる天井も、広すぎる棚の列も、とても不気味に思えた。
カトリーヌはもう一度、マーガレットを強く抱きしめた。
そしてゆっくりと言った。
「マーガレット。私と替えっこしましょ。あなたがカトリーヌになるの。そうしたらあなた、死ななくても済むわね。ねえ、良い考えでしょ。私のおリボン、あなたにあげるわ。ね、そうしてあなたが私に、そのリボンをくれたら……」
カトリーヌは自分のリボンをマーガレットの髪に結わえ直した。
「あなたはどこから見てもカトリーヌだわ」
マーガレットはもう一人の王女を見上げた。
王女は笑って言った。
「忘れないでね。あなたがカトリーヌなのよ」
泣いている王女の髪を、笑っている王女が優しくなぜた。
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