3 赤いリボン | 南域結界☆ ジェルソミーナ

3 赤いリボン

 王はグラスを取った。
 途端、王女達の頬に笑みが戻った。
 でも、もう少し見ていましょうよ、とマーガレットが言いかけた時、王の激しい声が、それを遮った。
「処刑するに決まっておる。国に害をなすものぞ。今は体内に眠っておっても、いつその魔物が目覚めるか分からん。即、広場へ引き出し、見せしめとせよ。近頃、不穏な動きをしている輩どもにも、良い薬となろう。馬鹿な愚民どもも、これで少しは賢くなればいいのじゃが」
「おそれながら陛下、それらの件は何でも、大臣がうまく策をろうしている最中だと聞きますぞ。まずは陛下、南東に侵入した帝国軍(パストラル)と、独立運動の高まっている南の町の動きを、警戒しておく必要があります。奴ら、王室にごたごたが起こったのを知れば、これを機にと、襲いかかってまいりますからな。ですから、なにとぞ公に処刑を実行なされる事だけは、お控えに」
「それぐらい大丈夫じゃ」
「いいえ、陛下。兵士となる者の多くが、一般の民衆である事を、お忘れになってはなりません。陛下のお力を見せ、畏怖の念を抱かせる事も大切ですが、しかし過度の恐怖は、兵士の陛下へ対する、忠誠心を損なわせる……」
「そんな事は分かっておる」
「大臣が、陛下の御広量を、民衆に広めているようでございますれば」
「ならどうすればよい」
「内々に……密かに、始末なさいませ」
「うまくいくか?」
「はい。必ず。なにしろお二方とも、城より外へは出た事もなく、また、この戦続きで、お二方の事を気にする者など一人もおりませぬ。例え、二人いたのがいつか一人になっても、誰がその理由を問う者がおりましょうぞ」
 客の低い笑い声が、室内に静かに広がった。
「ふむ」
「よくお考えを。国家の一大事でございます」
「……下の娘にのお……まさかあの伝説が、わしの代の事じゃとは思いもよらなんだわ。『悪しき魔物、稚児に宿りて、箒星の陰、美しき姿となり雄々しき国を滅ぼし、姉、王、女王を食い殺すであろう』――何も悩む必要はあるまいて。すぐに始末せねばならぬ」
「なるほど、おかしな事が続いた年でございましたな」
「あれらは似すぎじゃ。気味が悪い。しかし悪魔が姉の姿を真似て、女王の体内に潜り込んだのだとすれば、全て納得がいく。あれは忌み子じゃと、父の霊が教えてくれておったのじゃ。気味が悪いと思ったのも、自分の娘と思えぬのもそのせいじゃ」
「それでは陛下」
「いつ何時、正体を現わすか分からぬゆえ、用心してな。マーガレットの処刑を任せる」


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