5 エピローグ
不思議なリボンだ。
彼女は思う。毎朝、髪を結い上げる度、今でも新品のような光沢を放つ。色あせない青、すり切れない布地。やわらかな感触。いつまでも変わらず瑞々しい、あの頃の気持ちのような、あたたかな青。
それはあの、まだ幼かった少年の、彼女への想いでもあるのだろうか。十数年経った今でも、少年の気持ちは変わることなく……
(どこかの空で、私のことを考えていてくれている……?)
もう一度、拡声器が彼女の名前を呼んだ。
元級友は肩をすくめて、早く行けよ、と学舎を指さした。
「その前にお前、俺が今くれてやったタオルで、顔拭いといた方がいいぜ」
リュイの魂がこの世から消えていることなど、彼女にはなんとしても信じられなかった。
あの少年は必ず帰って来る。約束したんだ、一緒に海を見に行こうって。
「レシング君! ジェルソミーナ!」
ついに教授が腹をたてて、学舎の外にまで飛び出してきた。
「聞こえておるのかね! 鞭と百行清書を追加されたいのかね!」
「やべっ。百行清書だっ」
「ごめん。私ちょっと行くね」
走りだした彼女の背で、青いリボンが弾んだ。
時計台は倒れ、学舎は半壊。説教室に行くにもどこから入ればいいと言うのだろう。彼女は瓦礫を飛び越した。
『僕が死んでも君には……、僕のこと、忘れさせたりはしないから』
懐かしい、誰かの声が聞こえたような気がして、レシングはふと、青い空を振り返った。
挿入話 「できそこないのレシング ―ずっとあなたといたいから。大切な人へ―」
完
(たぶん)挿入話の "お姫さまもの"へ…… つづく
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彼女は思う。毎朝、髪を結い上げる度、今でも新品のような光沢を放つ。色あせない青、すり切れない布地。やわらかな感触。いつまでも変わらず瑞々しい、あの頃の気持ちのような、あたたかな青。
それはあの、まだ幼かった少年の、彼女への想いでもあるのだろうか。十数年経った今でも、少年の気持ちは変わることなく……
(どこかの空で、私のことを考えていてくれている……?)
もう一度、拡声器が彼女の名前を呼んだ。
元級友は肩をすくめて、早く行けよ、と学舎を指さした。
「その前にお前、俺が今くれてやったタオルで、顔拭いといた方がいいぜ」
リュイの魂がこの世から消えていることなど、彼女にはなんとしても信じられなかった。
あの少年は必ず帰って来る。約束したんだ、一緒に海を見に行こうって。
「レシング君! ジェルソミーナ!」
ついに教授が腹をたてて、学舎の外にまで飛び出してきた。
「聞こえておるのかね! 鞭と百行清書を追加されたいのかね!」
「やべっ。百行清書だっ」
「ごめん。私ちょっと行くね」
走りだした彼女の背で、青いリボンが弾んだ。
時計台は倒れ、学舎は半壊。説教室に行くにもどこから入ればいいと言うのだろう。彼女は瓦礫を飛び越した。
『僕が死んでも君には……、僕のこと、忘れさせたりはしないから』
懐かしい、誰かの声が聞こえたような気がして、レシングはふと、青い空を振り返った。
挿入話 「できそこないのレシング ―ずっとあなたといたいから。大切な人へ―」
完
(たぶん)挿入話の "お姫さまもの"へ…… つづく
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