10 魔法のことば | 南域結界☆ ジェルソミーナ

10 魔法のことば

「で、第二段階の魔法が」
 レシングは固く目を閉じて、危うげに両手で印を切る。
「これはどういう事なんだ、お前知ってるんだろ。おい、フランドル! フランドル!」
「第二段階の魔法が……」
 言いかけて、レシングは口を閉じた。学院長が全く、自分に意識を留めていないことに気付いたからである。
「先生……?」
「ああ、ごめんレシングちゃん、フランドル先生をね……」
 振り返った時には、あの気味の悪い壁は消えていた。代わりにあるのは、ごく標準的な透明な壁のみである。
 学院長は唖然と、その場に突っ立った。
「……やはり、全て幻覚なのかもしれない」
 レシングはわずかに首を傾げて、返事の代わりに、
「あのね、第二段階をね」
 おそらく、彼女はフランドルに随分と強く言われて来たのだろう。あのいつもの威圧的で命令調な指示に従って、少女はおずおずと印を切った。
 たちまちのうちに小さくとも新たな壁が……それも透明の壁が、彼らの前に浮かび上がった。
「……」
 壁は、目の前で分裂を果たした。
 学院長は自分の頬を、指で思いきりつねってみた。
 夢は、覚める気配がない。
「……で、これが私の学年でできる、魔法なんだけど……」
 少女は当惑したように、ぽつりと呟いた。
「試しにやってみたら……」
 分裂した二枚の透明の壁が、ゆっくりと右に動き始めた。
 学院長の顔からは、完全に血の気が失せていた。
「よしっ」
 慌ててポケットから手を出すと、学院長は床の上にあぐらをかき、何を思ったか両足の靴を放り出した。
「よし、レシングちゃん。じゃあ……じゃあ、次はこうだ。手をこう、こんな風に組んでごらん。そう。そう。そして、こんな具合に唱えるんだ」
 低い声で、彼はゆっくりと呪文を唱える。
「やってごらん」
 少女は神妙にうなずいた。そして、指を組んだ。
 二枚の壁は震えながら、新たな呪文を聞いている。
 後ろの透けて見える、青みがかった現実味のないガラスの壁は、それぞれ別々に、別々の速度で中央の部分を膨らまし始め、やがて、ゆっくりと完全な球体になっていった。
「そうだ! 偉いぞ!」
 学院長は両手を叩いた。
「じゃあ次は」
 少女は言われた通りに厚手の壁を作り、巨大な球体を作った。
「よし!」
 学院長はまた呪文を教えた。
「今度はちょっと難しいよ。無理はしなくてもいいからね」


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