4 魔法のことば | 南域結界☆ ジェルソミーナ

4 魔法のことば

 口には出さないが、扉に視線を送る。
 ベトルが扉に手をかけると、扉はわずかに奥へと開いた。
「学院長先生!」
 レシングの声だ。
 もちろん、学院長もベトル達も、少女のこんな力強い声を聞いたことがない。
 少女はいてもたってもいられないように、絨毯の中で両足を開いて、
「見て!」
 すっと息を吸い、手を組み、目を閉じる。
 と、平穏そのものだった机の上で、一枚のメモ用紙が風に煽られ、震えて、やがて、机の上から静かに滑り落ちた。
 プリッターとベトルは顔を見合わせた。
 学院長もしばらく口も利けずに、一枚の、床に落ちたメモ用紙を見つめている。
「レシング……」
 少女は何かを待つように、じっと学院長を見上げている。
「君は……」
 学院長は、少女の肩に手をかけようとした。
「……魔法だ!」
 我慢しきれなくなって、ベトルが叫んだ。
「魔法だったんだ、あれは! リュイの告白。あれが魔法だ! 魔法が、魔法の言葉で解き放たれたんだ!」
「そうですね、きっとそうです! あれが魔法だったんですよ!」
「そうだろ?」
「そうですとも!」
 学院長は薄く開いた扉を開ききり、廊下を覗き、
「魔法なのは分かっとる! それよりここで何をしとるんだ!」
 精一杯、怖い顔で睨みつけた。
「魔法だ、魔法だ!」
 教授と教員ははしゃぎ続けている。下階から騒動を聞きつけて、教職員たちが集まってきていた。
「レシング!」
 学院長は両手を広げ、一人佇む少女を抱き上げた。
「ほんっとうに君は、いい子だよ!」
 小さな学生は恥ずかしそうに、学院長を見上げた。


>INDEX