9 すべてのはじまり
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「……というふうに、不毛な練習を続けておりましたな」
二人の様子を盗み見していた老教員が、翌朝、朝礼を終えた同僚にすり寄って、話して聞かせた。
「ほお。どうにか口だけは利けるようになりましたか」
出勤札を裏返して、嘲るように、男は金縁眼鏡の下側から、せむし男を返り見た。
「口も利けないようじゃあ、魔法なんて到底無理だ……ってどなたか、おっしゃっていましたが……ありゃあ、どなたの御説でしたっけねえ、せんせ? 賭けは相変わらず……レシングにはお賭けにはならないんで」
「ふっ。馬鹿馬鹿しい。誰が。だったら、君が賭けたまえよ」
名簿で相手の額を叩いて、教授は先へ歩き出した。
「そうだ。君が賭けてくれたら奴さん、きっと泣いて喜ぶだろ。なんてったって一応君も、担当教員の一人なんだから。僕と違って、顔馴染みだ」
「そんな、ガキに感謝されたってねえ。嬉しくともなんとも」
「そりゃそうだ」
皮肉たっぷりに笑って、彼らは通りすがりの女性職員に挨拶をした。
「リュイがレシングの相手になっているようですよ」
職員が、すれ違いざま囁いた。
「そりゃあ、ご苦労なこった」
「学院長も学院長だが、生徒もあきらめが悪い」
「伝統じゃないですか」
「学院長さえしっかりしていれば、こんな事にはならなかった」
「あの人は学院の経営を、ちっとも分かっていない」
「そうそう、それですよ」
職員は声を、いっそう落とした。
「次の、学院長の話が出ていること、ご存知ですか」
「ほお」
金縁の眼鏡が輝いた。
「まだ正式な話にはなっていませんがね。我々、同志の間だけで……」
「なら、今夜話を聞かせて下さい。我々、教授会も集まりましょう。声掛けは僕がやっておきます。いつもの飲み屋で……話したいことは皆さん、山ほどあるでしょうから……」
そして彼らは、夜の集会の予定を立て始めた。
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「……というふうに、不毛な練習を続けておりましたな」
二人の様子を盗み見していた老教員が、翌朝、朝礼を終えた同僚にすり寄って、話して聞かせた。
「ほお。どうにか口だけは利けるようになりましたか」
出勤札を裏返して、嘲るように、男は金縁眼鏡の下側から、せむし男を返り見た。
「口も利けないようじゃあ、魔法なんて到底無理だ……ってどなたか、おっしゃっていましたが……ありゃあ、どなたの御説でしたっけねえ、せんせ? 賭けは相変わらず……レシングにはお賭けにはならないんで」
「ふっ。馬鹿馬鹿しい。誰が。だったら、君が賭けたまえよ」
名簿で相手の額を叩いて、教授は先へ歩き出した。
「そうだ。君が賭けてくれたら奴さん、きっと泣いて喜ぶだろ。なんてったって一応君も、担当教員の一人なんだから。僕と違って、顔馴染みだ」
「そんな、ガキに感謝されたってねえ。嬉しくともなんとも」
「そりゃそうだ」
皮肉たっぷりに笑って、彼らは通りすがりの女性職員に挨拶をした。
「リュイがレシングの相手になっているようですよ」
職員が、すれ違いざま囁いた。
「そりゃあ、ご苦労なこった」
「学院長も学院長だが、生徒もあきらめが悪い」
「伝統じゃないですか」
「学院長さえしっかりしていれば、こんな事にはならなかった」
「あの人は学院の経営を、ちっとも分かっていない」
「そうそう、それですよ」
職員は声を、いっそう落とした。
「次の、学院長の話が出ていること、ご存知ですか」
「ほお」
金縁の眼鏡が輝いた。
「まだ正式な話にはなっていませんがね。我々、同志の間だけで……」
「なら、今夜話を聞かせて下さい。我々、教授会も集まりましょう。声掛けは僕がやっておきます。いつもの飲み屋で……話したいことは皆さん、山ほどあるでしょうから……」
そして彼らは、夜の集会の予定を立て始めた。
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