6 二つの秘神
夜の静寂を壊すまいとする、蚊の鳴くような細い声だ。
ドアの隙間から、鴨居に隠れて顔の見えない、巨大な体が現れた。
おそるおそるドアを開ける視界いっぱいの大男、ならぬ虎男ベトル教員は、使いが遅くなったその言い訳として、医術部の研究室から、腕いっぱいの食料や医薬品をもらってきていた。
医術部は普段、刺激の少ない落ち着いた、静かな生活を好んでいるだけあって、深夜の、しかも眼を血走らせて飛び込んでくる大男には、かなり仰天させられたようである。
ベトルは心配気に、まだ明かりのついているらしい室内をのぞきこんだ。
「お」
彼がその時目にしたのは、つらそうに咳き込むプリッター教授の姿と、やんちゃ坊主テトラの姿であった。
「て……てめえー……」
雄牛の目に、炎が宿ったように見えた。
「ちょっと来いっ!」
「なんだよ、虎男っ。俺はなんにもしてねえよっ」
「馬鹿野郎っ、おめえがいるだけで先生は病気になるんだっ。出てけ!」
「なんだとーっ」
少年はもっと何かを言おうとしたが、太い腕がその口を塞ぎ、彼はあっという間に部屋の外へ連れ去られてしまった。
「ごほん……ごほん……っ」
プリッター教授は苦しそうに咳をする。
宿舎のどこかで、聞きなれた二人の怒鳴り合いが聞こえた。
「春が来る頃には……」
私のことも、あの子のことも、全てが落ち着いていればいいのですが。彼は、血糊のついた手の平を見た。
窓の外では、風が吹き荒れている。
「一人でいる子を放ってはおけない……。リュイ君という子は、いったいどういう子なんでしょうかね……」
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ドアの隙間から、鴨居に隠れて顔の見えない、巨大な体が現れた。
おそるおそるドアを開ける視界いっぱいの大男、ならぬ虎男ベトル教員は、使いが遅くなったその言い訳として、医術部の研究室から、腕いっぱいの食料や医薬品をもらってきていた。
医術部は普段、刺激の少ない落ち着いた、静かな生活を好んでいるだけあって、深夜の、しかも眼を血走らせて飛び込んでくる大男には、かなり仰天させられたようである。
ベトルは心配気に、まだ明かりのついているらしい室内をのぞきこんだ。
「お」
彼がその時目にしたのは、つらそうに咳き込むプリッター教授の姿と、やんちゃ坊主テトラの姿であった。
「て……てめえー……」
雄牛の目に、炎が宿ったように見えた。
「ちょっと来いっ!」
「なんだよ、虎男っ。俺はなんにもしてねえよっ」
「馬鹿野郎っ、おめえがいるだけで先生は病気になるんだっ。出てけ!」
「なんだとーっ」
少年はもっと何かを言おうとしたが、太い腕がその口を塞ぎ、彼はあっという間に部屋の外へ連れ去られてしまった。
「ごほん……ごほん……っ」
プリッター教授は苦しそうに咳をする。
宿舎のどこかで、聞きなれた二人の怒鳴り合いが聞こえた。
「春が来る頃には……」
私のことも、あの子のことも、全てが落ち着いていればいいのですが。彼は、血糊のついた手の平を見た。
窓の外では、風が吹き荒れている。
「一人でいる子を放ってはおけない……。リュイ君という子は、いったいどういう子なんでしょうかね……」
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