2 二つの秘神
窓の中で、少年は小さく呟いた。
ロウソクの明かりが風もなしに揺れた。
少年は、フードを目深にかぶり直す。赤い唇が、歯をたてて固く結ばれた。
部屋の中は陰気で、湿気に満ちている。
時々、ぽたんぽたん、と水音がするのは、昨夜の大雨が天井裏にまで染み込んでしまっているからに違いない。
「最近のある研究では――」
子供たちのけたたましい笑い声が聞こえる。何かを打ち据える鈍い音。
大人たちは誰も気付かないのか。
ロウソクだけが、風もなしに揺れつづける。
「この世には二つの神しかいないことが、分かっている」
木靴の足音が、また丸天井に響き始めた。
「一つは魂を作る神と、一つは闇を作る神」
笑い声に罵り声。
ホウキを持った子供たちの、激しい声だけしか聞こえない。
天井から柱を伝って、雨粒が彫像の眉間の上に垂れ落ちる。
木靴の音が響く。
けれど彫像は無言のままだ。闇の底。今までずっと、そうであったように。微動だにしない。
静かに。ひっそりと。無言のまま。
少年は闇の中から、さきほどまで自分が居た、光溢れる、窓を見返した。
そこには確かに、自分が開いた窓があった。
「僕には時間がない」
この闇の中だけは無限のようだ。
「有りもしない神に祈りを捧げられるほど、僕は盲目的な信仰をもってやいやしないし」
少年はわずかにうつむいた。
「残された時間もわずかでしかない」
すぐ近くの階段を、人が上がってくる物音がした。
少年はとっさにローブの裾を持ち上げると、神官が部屋へやって来る前に、また闇の底へ消えていった。
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ロウソクの明かりが風もなしに揺れた。
少年は、フードを目深にかぶり直す。赤い唇が、歯をたてて固く結ばれた。
部屋の中は陰気で、湿気に満ちている。
時々、ぽたんぽたん、と水音がするのは、昨夜の大雨が天井裏にまで染み込んでしまっているからに違いない。
「最近のある研究では――」
子供たちのけたたましい笑い声が聞こえる。何かを打ち据える鈍い音。
大人たちは誰も気付かないのか。
ロウソクだけが、風もなしに揺れつづける。
「この世には二つの神しかいないことが、分かっている」
木靴の足音が、また丸天井に響き始めた。
「一つは魂を作る神と、一つは闇を作る神」
笑い声に罵り声。
ホウキを持った子供たちの、激しい声だけしか聞こえない。
天井から柱を伝って、雨粒が彫像の眉間の上に垂れ落ちる。
木靴の音が響く。
けれど彫像は無言のままだ。闇の底。今までずっと、そうであったように。微動だにしない。
静かに。ひっそりと。無言のまま。
少年は闇の中から、さきほどまで自分が居た、光溢れる、窓を見返した。
そこには確かに、自分が開いた窓があった。
「僕には時間がない」
この闇の中だけは無限のようだ。
「有りもしない神に祈りを捧げられるほど、僕は盲目的な信仰をもってやいやしないし」
少年はわずかにうつむいた。
「残された時間もわずかでしかない」
すぐ近くの階段を、人が上がってくる物音がした。
少年はとっさにローブの裾を持ち上げると、神官が部屋へやって来る前に、また闇の底へ消えていった。
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