1 二つの秘神 | 南域結界☆ ジェルソミーナ

1 二つの秘神

   第二章



 ――神に、祈ったところでなんにもならない。
「それは、間違ったことだと思いませんか」
 暗闇の中を、ロウソクの小さな明かりだけが移動していく。
「苦しみのあまり、神にすがったところでどうにもならない」
 木靴の音が、固いタイルの上を進んでいく。
「それは、はやまった考えではありませんか」
 変声期をむかえていない、ソプラノの少年の声が丸天井に響く。
「あなたは何に助けを求め、どんな時、何のために、誰のために、その名を呼びますか」
 少年は閂(かんぬき)に手をかけ、彼の二倍ほどの高さもある鉄の窓を押し開いた。
 そこからは魔法学院の中庭が一望でき、今まさに、眼下で六、七名の少年少女たちが、取り囲んだ一人の少女を、ホウキの柄で小突きまわしている真っ最中だった。
「神に祈ったところで、なんにもならない」
 ホウキに打たれて倒れ伏した少女の下腹部を、一人の少年が足で蹴り上げた。
「それは……」
 少女の腕は、何かをつかもうとするように空を掻き、腹部に与えられたもう一撃で、また地面へと落とされた。
「それは、祈る神を間違えているからだ」


>INDEX