10 お気楽ジュン君の憂鬱な一日
「……まさか、わざと結界師にマイエル砲を撃たせていますの? 敵を煽って砲を乱射させ、できるだけ早く試作機のマイエルを枯渇させる。まさか、最初からそれを狙って……?」
「おほほほほ」
シトラビンス准佐はおっとりと笑い声をたてた。
「でも」
笑い声がぴたりと止まった。
「もう限界に達してしまったようですわねー」
特殊部隊の新型マイエル砲が、深紅の火花を散らしている。
あれはマイエルの光ではない。結界師の腕にまとわりつく、マイエルの反射光も何かが変だ。
ジュンクリフが叫んでいる。結界師が肩で息をつきながら、マイエル砲の砲口を調整した。
結界師は砲を操りながら、四方に張った大きな結界障壁でジュンクリフや特殊部隊を守っているのだ。
だが、それも限界にきていた。
「はあ……はあ……はあ……」
「しっかりしろよ、ジェルソ!」
ジェルソミーナの頭が、砲に寄りかかるように下がっていく。
「馬鹿野郎、寝るな! まだ死にたかねーだろーっ!」
(おかしい)
そうジュンクリフは思った。
(なんでこんなに早く、精神力が擦り減ってるんだ。こいつ、もうちょっと持つはずだろ。おかしい。まさか、砲から漏れてるあの光か?)
ジェルソミーナの操っている中距離駆動砲。その側面から漏れ出る金色の光。その金色の光は彼女の腕を這い上がり、蜘蛛のように糸を吹き、波のように動いている。
あれは何かの故障だと思っていた。彼もやばいとは気付いていたが、もうしばらくは大丈夫だろうと放っておいていた。
(あれはやっぱり、故障じゃねえのか……っ?)
経験の少ない顧問官は、今にも倒れそうな結界師へ足を踏み出した。
一方、台座上の試作機では、一見、何事もなさそうに見えて、枯渇寸前のマイエルと、空になった冷却タンクのために、砲の中で異常な発熱が起こっていた。
「えーっと、えーっと……」
計器盤の針が、狂ったようにぐるぐると回っている。
機関整備兵の後ろに、神父が立った。
「どうかしましたか。何か不都合でも?」
「いや、大丈夫だ。なんでもない!」
整備兵はとっさに、計器盤を体で隠した。
(なんなんだ、この目盛? なんでこんな風になっちまったんだよーっ)
怯えながら神父の目を盗み、整備兵は配線やら金属管の詰まっている砲の側面を開いてみた。なにがどうなっているのか、全く分からない。
(えい、ままよ!)
「閣下の御心を騒がす者よ、滅び去るがいい!」
渾身の力を込めて、整備兵はハンドルを引いた。
「きゃあああっ!」
これが試作機の爆発だと理解するよりも早く、エナは両足の戒めも引き千切り、並みならぬ速度で崩れていく崖際から逃げ出した。
「やですわあ。ついに壊れちゃいましたのねー。ゼフ博士に、また怒られちゃいますわあ」
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「おほほほほ」
シトラビンス准佐はおっとりと笑い声をたてた。
「でも」
笑い声がぴたりと止まった。
「もう限界に達してしまったようですわねー」
特殊部隊の新型マイエル砲が、深紅の火花を散らしている。
あれはマイエルの光ではない。結界師の腕にまとわりつく、マイエルの反射光も何かが変だ。
ジュンクリフが叫んでいる。結界師が肩で息をつきながら、マイエル砲の砲口を調整した。
結界師は砲を操りながら、四方に張った大きな結界障壁でジュンクリフや特殊部隊を守っているのだ。
だが、それも限界にきていた。
「はあ……はあ……はあ……」
「しっかりしろよ、ジェルソ!」
ジェルソミーナの頭が、砲に寄りかかるように下がっていく。
「馬鹿野郎、寝るな! まだ死にたかねーだろーっ!」
(おかしい)
そうジュンクリフは思った。
(なんでこんなに早く、精神力が擦り減ってるんだ。こいつ、もうちょっと持つはずだろ。おかしい。まさか、砲から漏れてるあの光か?)
ジェルソミーナの操っている中距離駆動砲。その側面から漏れ出る金色の光。その金色の光は彼女の腕を這い上がり、蜘蛛のように糸を吹き、波のように動いている。
あれは何かの故障だと思っていた。彼もやばいとは気付いていたが、もうしばらくは大丈夫だろうと放っておいていた。
(あれはやっぱり、故障じゃねえのか……っ?)
経験の少ない顧問官は、今にも倒れそうな結界師へ足を踏み出した。
一方、台座上の試作機では、一見、何事もなさそうに見えて、枯渇寸前のマイエルと、空になった冷却タンクのために、砲の中で異常な発熱が起こっていた。
「えーっと、えーっと……」
計器盤の針が、狂ったようにぐるぐると回っている。
機関整備兵の後ろに、神父が立った。
「どうかしましたか。何か不都合でも?」
「いや、大丈夫だ。なんでもない!」
整備兵はとっさに、計器盤を体で隠した。
(なんなんだ、この目盛? なんでこんな風になっちまったんだよーっ)
怯えながら神父の目を盗み、整備兵は配線やら金属管の詰まっている砲の側面を開いてみた。なにがどうなっているのか、全く分からない。
(えい、ままよ!)
「閣下の御心を騒がす者よ、滅び去るがいい!」
渾身の力を込めて、整備兵はハンドルを引いた。
「きゃあああっ!」
これが試作機の爆発だと理解するよりも早く、エナは両足の戒めも引き千切り、並みならぬ速度で崩れていく崖際から逃げ出した。
「やですわあ。ついに壊れちゃいましたのねー。ゼフ博士に、また怒られちゃいますわあ」
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