「未来ちゃんの追悼興行こない?」8月の終わりくらいに誘われた。試合あったら練習あるからって断った。
試合は流れてしまった。でも追悼興行は行きたくなかった。理由はこねくりまわせばたくさん出てくる。とにかく行きたくなかった。
去年も追悼興行は行ってない。私は今、彼女とプロレスで繋がっているわけじゃないし、場違いな感じがした。なによりその時は突然の事で、その場に行くのがつらかった。
前夜も風邪ひいて寝込んでいたし、再度の誘いをまた断った。失礼だと思う。「気が変わったら、こっそりでもいいから来てね」いつもは押さない同期が言ってくれる。
大好きなプロレスを見なくなった。むしろ好きじゃなくなった。プロレスは関係ないのに、プロレスに彼女を奪われた気がした。その気持ちは復帰した同期の存在で薄れてきた。
ボーッとする頭で未来日記を見た。「行くだけでも行かなきゃ」ってシャワー浴びて家飛び出した。雨が降ってた。
七時からだったのに五時についてしまった。会場内で待たせてくれた。
会場内にはたくさんの写真があった。コスチュームもあった。紫のコスチュームは、私が未来ちゃんの家に遊びに行った時、一緒に考えたもの。
「体格いいからさ、シンプルで布少ないほうが絶対かっこいいよ!背中にはこーゆー布がついててね~、飛んだり、チョップしたりするとヒラッてなびいてたらかっこよくない?」
ラフ画を描きながら話し合った。「女忍者」をイメージしたそのコスチュームは、彼女にとてもよく似合っていました。
会場にいるのがツラくて開始ギリギリまで外にいた。
今日の追悼興行をビデオにして未来ちゃんの御両親に渡すらしい。一言頼まれたのに、どうしても言葉がでない。声を出すと泣いてしまって断ってしまった。
挨拶しなきゃいけない人がたくさんいたのに、できなかった。GAMIさんにはお礼も言えなかった。
売店だってチケット売りだって、もぎりだって、何かしら手伝うつもで来たはずなのにできなかった。
絶対挨拶しようと決めていた御両親には顔も合わせられなかった。
一年も経った。笑ってとまではいかないけれど、人前でしっかりするくらいの気持の整理はつけてきたつもりだった。全然ダメだった。
綾ちゃんがいる。早紀ちゃんがいる。ともちゃんがいる。
ツラそうだけど、元気そうだった。ちゃんと前を見てる感じだった。
思い出さなかった日はない。でも最近は思い出しても悲しい気持ちにはならなかった。充実した楽しい日々を過ごしてた。だからもう私は大丈夫だと思ってた。
私は彼女の死と向き合えずにいたのかな?