「何故貴様がここにいる?」
「なんだよ、そんなに出来の悪い弟の
顔を見たくなかったってか?
それともフィアンセをとられるとでも思ったのか?」
ベリエールはシモンと呼んだ少年に近付くと、
頬を打ちすえた。
「二度と私の前に現れるな!
私の花嫁に近付くことも許さぬ!」
「花嫁とか笑わせるぜ。愛してもないくせに。」
「どういうことなの?」
2人の会話から蚊帳の外だったエレノアが、
割って入ってきた。
「ベリエール、この人のこともだけど...
何か隠してるの?」
「本当に何も知らないんだな。」
シモンはエレノアに向き直ると、
こう言った。
「アンタもさっさとここを出て行った方がいいぜ。
不幸になりたくなかったらな。」
そしてシモンは去り際に、
ベリエールに向かって言い放った。
「いつかテメーの化けの皮、はがしてやっからな!」
彼はマントをひるがえし、茂みの中へ姿を消した。
「マム、シモンと何かあったの?」
エレノアに尋ねられると、マムはほんの一瞬
バツの悪そうな顔をしたが、
エレノアの足に甘えるようにすり寄った。
「心配せずとも、そやつはもう貴様の使い魔だ。
しかしまさか貴様と契約する前は、
シモンの使い魔だったとはな。」
「それよりベリエール、あのシモンって人は、
何者なの?
どうして会いたくないの?」
するとベリエールは、エレノアから目をそらした。
「あやつは、私の腹違いの弟だ。」
「そう言えばあなたのお母様は
既に亡くなったって言ってたけど...」
「あやつの母は父上の2人目の妃だ。
それも奴が幼い時に死んだ。」
「じゃあシモンは貴方の数少ない家族でしょ?
どうして嫌うの?」
「貴様は詮索好きだな。」
ベリエールはエレノアを睨みつけ、
彼女の腕を掴んだ。
「そんなことよりここは冷えるぞ。
中に入れ。」
「え?えぇ。」
2人は中庭から城中へ入り、
そのあとを一匹がついて行った。