セシリーの姿が見えなくなると、ジョゼフはロバーツ牧師に、
彼女から投げつけられた物をさし出した。
「あの、これ...」
それは青く輝く石のついた、銀の指輪だった。
「これが、エレノアに渡すつもりだった指輪ですか?」
「あいつが帰ってきたら、あいつにやってくれませんか?
今日の祭儀の後で、渡すつもりだったんです。
けどいざ渡そうという時にないと思ったら、
まさかセシリーが持ってたなんて...。
あの時、オレがセシリーにその現場を差し押さえられて、
連れて行かれなけりゃ、エレノアを置いていかなかったのに...」
ロバーツ牧師は祭儀が終わった後、
エレノアがジョゼフに呼ばれて彼に連れて行かれたことを思い出した。
それが彼がエレノアを見た最後の時だった。
「エレノアを貴方は、どこへ連れて行ったのですか?」
「教会の、薪置き場です。俺があいつを置いていかなけりゃ、
こんなことになんか...!」
泣きだしそうになったジョゼフを、ロバーツ牧師は彼の肩を軽く叩いて制した。
「それを悔やんでも仕方ありません。
まだエレノアが死んだとは限りませんしね。」
悔やみ切れないのはロバーツ牧師も同じだった。
どうしてジョゼフを真っ先に疑わなかったのか、
エレノアにジョゼフとの用事を優先させてしまったのか、
エレノアを自分から離してしまったのか、
様々なことを考えると、自分自身にも非があるかのように思えた。
「よく話してくれました。ありがとうございます。
ですがその指輪はあなたが自分で渡して下さい。
折角貴方がエレノアの為に用意したのですから。」
「いいえ、じつはこれ、親父のへそくりでこっそり買ったものなんです。
エレノアに渡せなかったのも、きっとその報いなんです。」
それを聞くなりジョゼフの父親である村長は
先程は恥ずかしさのあまり赤くなっていたのが、
今度は怒りで顔が真っ赤になり、若い者がそれをなだめた。
「それに、エレノアはこういうものは牧師様からなら受け取ると思います。
オレみたいな子どもが、女の子にこんな贈り物するなんて
似合いませんしね。」
ジョゼフはロバーツ牧師に、青玉のついた指輪を手渡した。
少し顔を赤らめた少年が、
何故エレノアに高価な贈り物をしようとしたのかを、
ロバーツ牧師は察した。
程なくして捜索班が帰ってきた。
残念ながら、彼らはエレノアも、彼女の手がかりもなしに帰って来たのだった。
しかし、教会の薪置き場裏に、何かを埋めたかのような小さな跡があったが、
ただ掘り返してみても、何もなかった。
その他の怪しいことはと言えば、教会裏の森のあちこちに、
青く短い毛が落ちていて、その傍に人間の子どものものらしい小さな足跡と、
とても小さな鉤爪の付いた足跡があった位だった。
しかしその未知のモノの青毛は、村人たちに戦慄を与えた。
足の小さな青毛の恐ろしい魔物が、
人間の子どもをさらって喰うという噂がレアリム村に広まるのに、
それ程時間はかからなかった。