レアリム村に寄進する者は、今や少ない。
エレノアとロバーツ牧師の食事は、具の少ないスープと固いパンのみである。
「さあ、今日も感謝の祈りを。」
夕食のたびにロバーツ牧師は神に、
エレノアはロバーツ牧師に生きていることへの感謝の祈りをささげる。
しかし今日のエレノアの祈りは、ロバーツ牧師への懺悔でもあった。
彼女はロバーツ牧師が貧しくて蔑まれていることを知っていたし、
それにも関らずに自身を養ってくれていることも分かっていた。
しかし彼女は森の木の実をロバーツ牧師ではなく、
怪我をした会ったばかりの動物に恵んでやったのだ。
それも単なる同情心からである。
「エレノア、食欲がないのですか?」
ロバーツ牧師に言われて、エレノアはずいぶん長い間手を組んでいたことに気付いた。
彼に無駄な心配をかけてしまったと感じ、
エレノアはスプーンで薄味のスープをすくい、口に運んだ。
既に慣れた味の為、うまいもまずいも感じなかった。
牧師様もこうして不快感もなくしてしまったのかしら、
とエレノアは感じた。
「すみませんね。私が不甲斐ないばかりに、
貴方にも苦労をさせてしまって。」
「いいえ、そんなことないです。
牧師様のおかげで、今の私がいますから!
むしろ私の方が申し訳ないくらいです!」
「そうですか。それならこれからも私と共に、
ここで神に身を捧げてくれますか?」
「勿論です!」
牧師様と一緒にいられるなら、どんなこともしてみせる。
エレノアは胸にそう誓った。
エレノアが一日の中で一番好きなのは、夜眠る時間である。
一日の全てが終わる安息の時であり、
何よりロバーツ牧師がお休みのキスをくれるからである。
今夜もまた、ロバーツ牧師が蝋燭を片手に、彼女の枕元にいた。
「エレノア、今日はなんだか疲れてますね。
何かありましたか?」
「なんでもありません。ただ...。」
マムは今夜、住み慣れたであろうねぐらではなく、
あの暗く寒い薪置き場で過ごしている。
お古の衣服を何枚か掛けてやったが、あれで寒さをしのげるのだろうか、
住処へ帰れなくて、寂しくないのだろうか、
などとエレノアは考えていたが、そんなことを口には出せなかった。
「ただ...何か心配ごとでも?」
「えっと、動物って、布団はどうするのか気になったんです。」
「あぁ、大丈夫ですよ。彼らは私たちのように布団をかぶらなくても、
毛皮があります。
私たちは煩わしいから頭髪さえ切ってしまいますが、
彼らは寒くてもいいように生やしたままにしていますからね。」
ではマムは、いつも服を着ているようなものなのか。
あんな寒々しい色の毛でも温かいのかしらとエレノアは思った。
「心配せずとも、神はあらゆる生き物に
生きる為の物を与えてくださっています。
私たち人間もこの物をつかめる手のように。」
ロバーツ牧師はエレノアの前髪をかきあげ、額に優しく柔らかいキスを落とした。
エレノアはその感触の余韻に浸りながら、ロバーツ牧師が「おやすみなさい」と言うのを聞いた。