キクとイサム(1959年製作の映画)

今井正監督の代表作。キネマ旬報ベスト・テン第1位。占領時代の落とし子である「混血児」 の問題をテーマとした社会派人間ドラマ。脚本は水木洋子。

戦後13年を過ぎた福島県会津の山村。アフリカ系の米兵と日本人の間に生まれた小学六年の姉キクと小学四年の弟イサムは、農家の祖母しげ子(北林谷栄)に育てられてきた。周囲からいじめられ辛い思いをしている二人のことを祖母が行きつけの医者で話したところ、アメリカの家庭への養子縁組を提案される。。。



 

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黒人の父親と日本人の母親との間に生まれるが、父は米国に帰国、母も既に亡くなっているため、田舎の村で祖母と一緒に暮らす姉弟のお話。面白く観れた。

人種差別を描いているが、祖母には愛情があり、隣家の夫婦や学校の先生も理解があって、一方的な描写でないのが良い。更には、米国内での人種差別にも触れるなどバランスがいいと思う。ラストも希望を感じさせる。今でも根っこの部分は変わっておらず、現代にも通じる。


今井正監督の代表作。キネマ旬報ベスト・テン第1位。占領時代の落とし子である「混血児」 の問題をテーマとした社会派人間ドラマ。脚本は水木洋子。

戦後13年を過ぎた福島県会津の山村。アフリカ系の米兵と日本人の間に生まれた小学六年の姉キクと小学四年の弟イサムは、農家の祖母しげ子(北林谷栄)に育てられてきた。周囲からいじめられ辛い思いをしている二人のことを祖母が行きつけの医者で話したところ、アメリカの家庭への養子縁組を提案される。。。

保守的な山村を舞台に人種差別が描かれるが、主人公の姉弟が子供らしい元気な生命力を発揮し映画に明るさをもたらしていた。演じた二人は今井監督が全国を回って探しあてた素人で実際に役柄と同じような境遇だったとの事。特に姉キクを演じた高橋エミ子さんの放つエネルギーに圧倒された(後に歌手としてレコード・デビューした)。彼女を選んだのは脚本の水木洋子で「この子でなければ脚本は書かない」とまで言い切ったのだそう。
 

水木は後に「暗い話を暗い主人公がお涙めいて演じたのでは,どうも常識的で,イジメッ子映画になるだけ」「私はこの作品でクソリアリズムから脱却したかった」と語っている。その志どおり本作は社会問題を取り上げつも、子どもの個性の尊重を描いた普遍的な作品となっていた。終盤のキクとしげ子ばあさんのドラマと終着点は、自分の想像を超えた最適解で恐れ入るしかない。

※当時48歳の北林谷栄が68歳の役を演じている。素晴らしい演技だったが、老婆役の為に前歯を抜いたという話を聞くと、他にオファーの仕方がなかったのかと考えてしまう。


 

キクとイサム