映画「ノルウェイの森」 | コルネットのうだうだ

映画「ノルウェイの森」

公式サイト
http://www.norway-mori.com/index.html


前提として、この映画は原作を読んだことがある人でないと楽しめないし、理解もできないと思われます(そう私も聞いていたので、昔読んだ文庫本を引っ張り出してきて、映画鑑賞の前日当日で読み終えました)。私が観に行ったとき、4人くらいの人がぱらぱらと途中で席を立って出て行きましたが、理解できない人だったんだろうな、と。

基本的に原作のストーリーをなぞってはいるものの、完全にいっしょではなく、また小説内の前提が省略されていたりするので、読んだことがない人には非常にわかりにくい映画になっています。そういう意味では、小説の「映画化」というよりは、「映像化」と言ったほうがいい。小説に出てくる各シーンを映像にするとこうなる、といった感じ。

【以下、ネタバレがあります】































いくつかの点で原作を変えており、それが私にとっては不満であり、原作の良さを損ねていると思いました。

登場人物の性格付けがまず違います。まだマシと思ったのは主人公ワタナベと直子でしょうか。違うと思ったのは、永沢さん、緑、レイコさん。小説のイメージにぴったりだったのは緑のお父さんだけでした。

私のイメージでは、永沢さんはあんなニヒルな感じでなく、背筋がぴんと伸びたエリート風。緑は活発で性格はカラッとしているが、実は秘めた苦労が伺える感じで、ずんぐりした体型に純和風の顔(あんなハーフっぽい顔でない)。レイコさんも竹を割ったような性格のおせっかいなおばさんで中島みゆき似のイメージ。

しかし、映画では登場人物がみんな影のある重い感じとなっているので、映画全体がすご~く陰鬱になってしまっている。登場する設定やシーンが重いものが多いので、キャラクターはもっとバラエティに富んでなければ、バランスが取れないのではないだろうか。

菊池凛子の直子はなかなか良いのでは。難しい役どころだし、小説では現状がわかりにくい(レイコの書く手紙の中で状況が断片的にわかる程度)でイメージが美化されているのだけど、映像化するとああなるのかな、とも思えました。

松山ケンイチのワタナベも、まあ良いと思う。もっとすっとぼけた、何を考えているのかよくわからない、ひょうひょうとしたキャラを考えていたんですが。

とにかく、キャラクターもセリフも、原作ではもっととんがっていたのが、ずいぶん丸められていたように思えました。60~70年代にはもっと熱さや生生しさがあっていいように思えます。

もっとも気に入らなかったのが、原作のテーマが変えられていたと感じられたところ。原作は「生と死」あるいは「生と性」がテーマと考えられ、すべての陰鬱さが、ラストには生への輝きとなってカタルシスとなり、吹っ飛ぶ感じが素晴らしいのだけど、映画ではそれがなくて、陰鬱なまま終わっていました。レイコさんも緑もめそめそしていたし、ワタナベも依然としてどっちつかずのままだった。

原作が多分に感覚的なのだから、それを読んだ監督ががどのように感じたかを映像にした、それでよいのかもしれないし、その意図が遂げられているのであれば、この作品は成功だったのかもしれない。監督は外国人だし、日本人のイメージとは違っているかもしれない。ちなみに観客に外国人女性がすごく多かったのが印象的でした。邦画で英文字幕も出ないのに。

まあいろいろと不満はあるものの、それなりに楽しめたし、ツッコミどころ満載という意味からすれば、ヨシとしましょう。