写真映画「ヤーチャイカ」
公式サイト
観ようかどうしようかと迷っていたのですが、ウチの近くの映画館では上映期間が1週間で日に1回しか上映されず、さらに今日は監督を務めた谷川俊太郎氏の舞台挨拶がある、とわかったので観るなら今日しかないと思い立ち、朝から観に行くことにしました。しかし、上映15分前に着いたときにはもう満席で、立ち見での鑑賞になりました。
覚和歌子と谷川俊太郎の詩に写真が組み合わさった映画、くらいの前知識しか持たずに観たのですが、ちゃんとストーリーがありました。通常の映画としても成り立つ作品ですが、あえて静止画(写真)と朗読と音楽によって物語を成り立たせています。スライドショーでもないし、紙芝居でもありません。新しい映画の形というべきものでしょうか。
通常の映画よりも写真が長く映されるせいか、1コマ1コマをじっくり見ることができるし、その間をつなぐのにイメージが広がります。観る者が想像力をかきたてられ、そのためにより印象に残るのだと思います。朗読は覚和歌子氏が行っています。また音楽がなかなか良いもので、私は鑑賞後にサントラCDを買って帰りました。写真・朗読・音楽がうまく融合して、独特の世界を創り上げるのに成功していると思います。
主演は香川照之と尾野真千子。静止画なので動きやセリフで演技ができない分、表情や体だけで表現しなければなりませんが、二人ともキャラクターや心の内面をうまく演じていると思いました。尾野真千子は私は初めて見た女優さんですが、なかなか美人で表情もよく、これからの活躍が楽しみです。
谷川俊太郎氏の舞台挨拶では、この作品の制作秘話や作品への思いを聞くことができて、よりこの作品への理解が深まりました。でもそれにもまして、何人かのお客さんが谷川氏へ投げかけた質問がどれも的を得ていて、谷川氏が丁寧に的確に答えておられたのが、これまた素晴らしかった。ミニシアターでの満席は100名程度のお客さんなのですが、やはり映画が本当に好きな、物事の分かる方が多いことを実感しました。20代と思われる若いお客さんの鋭い洞察には脱帽。今日は料金の何倍も得をした気がします。
「ヤーチャイカ」というのはロシア語で「こちらはカモメ」という意味だそうで、作品の本質をとらえた素晴らしいタイトルなのですが、興行的にはタイトルから映画の内容をイメージしにくく、タイトルを聞いて観てみたくなる、という気が起きないのではないかと思われるのですが、いかがでしょう。素晴らしい作品だけに、それが少し気になります。
上映館が少ないので観られる機会があまりないかもしれませんが、お近くの映画館で公開されていたらご覧になることをお勧めします。静かでじんわりと心に残る、とても良い作品です。
72.2Kg/21.5%