ホルスト5~ムーアサイド組曲
今回は「ムーアサイド組曲 A Moorside Suite」です。
これは金管バンドのための曲です。吹奏楽用に編曲もされていますが(ホルスト自編(2楽章途中までの未完)、ゴードン・ジェイコブ(Gordon Jacob)編、デニス・ライト(Denis Wright)編がある。「ホルスト1」でご紹介したCDには前2者が収録されている)、オリジナルの金管バンド版がやはり素晴らしく、編曲版はこれを超えていないと思います。この曲をご存知ない方で、第1組曲、第2組曲が好きな方ならファンになることでしょう。
【金管バンドをご存知ない方のために。通常の吹奏楽は木管楽器・金管楽器・打楽器で編成されていますが、金管バンド(Brass Band)は金管楽器と打楽器で編成されています。日本に金管バンドは数少ないと思われますが、ヨーロッパでは古くから歴史があり、特に英国で盛んのようです。金管バンドでは、ソプラノコルネット、コルネット、フリューゲルホルン、アルトホルン、バリトンなど、通常の吹奏楽では使われることが少ない楽器(サクソルン属)も使われ、分厚い和音、独特の柔らかい響きや鮮やかなテクニックなどが魅力です。近年ではフィリップ・スパークの「ドラゴンの年」が有名ですし、ひと昔前、金管バンドを描いた「ブラス!」という映画が話題になりました。】
1楽章「スケルツォ」はコルネットによる手まり歌のような旋律で始まります。仮に「あんたがたどこさ」のメロディと呼んでおきましょう(?)。この「あんたがたどこさ」がしばらく形を変えて何回か繰り返され、その後バンドを2分割してカノンとなります。つまり「あんたがたどこさ」の輪唱です(??)。なんてこと書くのだ、と怒る方がいらっしゃったらすみません。それほど親しみやすい曲という意味です。中間部ではコルネットが3和音で旋律を歌う中を、「あんたがたどこさ」から派生した「ドドドソー」の合いの手の伴奏が、あちこちから鐘の音のように聴こえます。
2楽章「ノクターン」はゆったりしていて、文字通り夜想曲です。コルネットソロで静かに始まります。水のしずくのようです。その水のしずくメロディがいくつか集まり小さな川のようになります。その後再びコルネットソロからユーフォニアムソロに受け継がれます。その後はバスパートがゆったりと動く上をコルネット群が柔らかい和音で大河のように流れます。この部分は非常に美しい。金管だけなのに、このようなまろやかな雰囲気を出せるというのは驚きです。
3楽章「マーチ」は一番有名な曲で、この曲単独でも「ムーアサイドマーチ」としてコンサートやCDで取り上げられていることがあります。3つの楽章を終結させるのにふさわしい爽快感満点の曲です。コルネット群によるファンファーレの後、すぐに旋律に入ります。この旋律の伴奏は印象的な長い下降音階で、私はこれを「大階段」と呼んでいます(勝手に)。旋律は「ミレドレミーミー」と聴こえるのですが、楽譜上は「ミードレミーミー」と書いてあります。大階段の伴奏が加わって前者のように聴こえるので、そのように意図されているのかもしれませんが、どちらの音形が旋律といってよいのかはわかりません。
金管バンド版のCDは、グライムソープのもの(3種類。下記1~3)、ブラックダイクのもの(金管版「惑星」とのカップリング。下記4)などが手に入りますが、私の好きなのは、グライムソープ(Grimethorpe Colliery PJB Band)による下記1のCDです。全然乱れない完璧なアンサンブル。そして楽章ごとの急・緩・急の表情の切り替えがうまく、この曲を知り尽くしているという印象を持ちます。値段も安くて、オススメです。
3、エルガー・ハワース指揮/グライムソープ・コリアリー・バンド(新録音)
https://www.musicstore.jp/database/search.php?order_no=034759
4、ジェイムズ・ワトソン指揮/ブラック・ダイク・ミルズ・バンド
https://www.musicstore.jp/database/search.php?order_no=014911