締め切りが近づいたエッセイを書いていて、

伊丹三樹彦と永田耕衣に共通点が多いのに気付き、整理した部分をコピー

 

 

耕衣と伊丹三樹彦は共通点が多い。両者とも播州育ちである。耕衣は加古川、三樹彦は三木。父親の姓は岩田。卒業校は共に、県工(兵庫県立工業学校)である。生まれた年も西暦でいえば、切りのいい、一九〇〇年と、一九二〇年。生まれ月は二人とも二月。さらに耕衣は、生まれてすぐに養子に出され、三樹彦は養母の家で育つ。共に神戸新聞俳句欄選者の経験があり、神戸市や兵庫県の文化賞を受賞しており、共に神戸新聞平和賞を受けている。

二人とも現代俳句協会の大賞を受賞している。そして最大の共通点は九十歳を超えて作句意欲がまったく衰えないことである。この稿を書いている最中に、金子兜太が九十九歳で「海程」を終刊とするニュースが届いたが、耕衣が主宰誌(「琴座」)を終刊としたのが九十七歳の時、「靑玄」の終刊は三樹彦八十六才の時であるが、継承誌「靑群」では名目的顧問ではなく旺盛な作句活動を続け、青玄終刊以後だけでも一万を超える句を三冊の句集などにまとめている。

 

 

 

二人の代表作の傾向はかなり異なる。しかし若い時の作品では、耕衣の方がかなり先鋭、かつ情緒豊かである。

 

耕衣は定年まで三菱製紙に勤務。55歳の定年前には、製造部長の職にあった。

エッセイでは紹介する紙数がないので、割愛したが、耕衣の代表作とされるものいくつか紹介。

 

「俳句検索」では1000句以上収録されているが重複がおびただしい。

実数は500句くらいか。

赤字が代表作

 

 

小桜や一枚の衣あればよし 永田耕衣 奪鈔
 
砂づきて行く魂嬉し夏衣 永田耕衣 物質
 
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 
うるめ焼く人にたのしく皿はあり 永田耕衣
 
餅膨れつつ美しき虚空かな 永田耕衣
 
まん中を刈りてさみしき芒かな 永田耕衣
 
朝顔や百たび訪はば母死なむ 永田耕衣
 
かたつむりつるめば肉に食ひ入るや 永田耕衣
 
道路ほど寂しきは無し羽抜鶏 永田耕衣
 
麦藁を横切つて根は寂しき人 永田耕衣
 
厄介や紅梅の咲き満ちたるは 永田耕衣
この句はエッセイの中で大阪弁俳句として引用。
 
恋猫の恋する猫で押し通す 永田耕衣
 
近海に鯛睦みゐる涅槃像 永田耕衣
 
酒倉を杜氏と歩く春の暮 永田耕衣
 
老松の風折れ口を嗅ぎに行く 永田耕衣
 
後ろにも髪脱け落つる山河かな 永田耕衣
 
うるめ焼く人にたのしく皿はあり 永田耕衣
 
水洟の水色膝に落つ故郷 永田耕衣
 
田水落つ母の蒲団の固きまま 永田耕衣
 
この道や茄子までうつらうつらかな 永田耕衣
 
照れ照れよ八十路越えこそスベリヒユ 永田耕衣
 
水虫の足裏で息し行く故郷 永田耕衣
 
河骨や天女に器官ある如し 永田耕衣
 
もう種でなくまつさをに貝割菜 永田耕衣
 
行けど行けど一頭の牛に他ならず 永田耕衣
 
源流に腰かけて居る翁かな 永田耕衣
 
晩年や左眼の涙を右眼容れ 永田耕衣
 
 草城の句を連想。
 
古池を触つて居れば眠りけり 永田耕衣
 
カットグラス布に包まれ木箱の中 永田耕衣
 
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 
水を釣つて帰る寒鮒釣一人 永田耕衣
 
寒雀母死なしむること残る 永田耕衣
 
芭蕉忌の枕が鳴るや仮の宿 永田耕衣
 
餅膨れつつ美しき虚空かな 永田耕衣
 
降る雪に老母の衾うごきけり 永田耕衣
 
母死ねば今着給へる冬着欲し 永田耕衣
 
夕凪に菩提樹の実の飛行(ひぎょう)せり 永田耕衣
 
朝顔や百たび訪はゞ母死なむ 永田耕衣
 
竹の実を噛みくだき居る安居かな 永田耕衣
 
夕凪や使はねば水流れ過ぐ 永田耕衣
 
人を見ぬ残花や山河くすくすと 永田耕衣
 
月明の畝あそばせてありしかな 永田耕衣
 
月の出や印南野に苗余るらし 永田耕衣
 
麦白く斯く熟しては切に寂しと 永田耕衣
 
瓜苗やたゝみてうすきかたみわけ 永田耕衣
 
父祖哀し氷菓に染みし舌出せば 永田耕衣
 
夕凪や使はねば水流れ過ぐ 永田耕衣
 
夏の夜の木をこぼれたる蝶々かな 永田耕衣
 
夏蜜柑いづこも遠く思はるゝ 永田耕衣
 
厄介や紅梅の咲き満ちたるは 永田耕衣
 
羽厚くなつて蝶々吾を包む 永田耕衣
 
天心にして脇見せり春の雁 永田耕衣
 
恋猫の恋する猫で押し通す 永田耕衣
 
近海に鯛睦み居る涅槃像 永田耕衣
 
野遊びの児等の一人が飛翔せり 永田耕衣
 
野を穴と思ひ跳ぶ春純老人 永田耕衣
 
いづかたも水行く途中春の暮 永田耕衣
 
夢の世に葱を作りて寂しさよ 永田耕衣
 
うそ寒や草の根這へる裏の山 永田耕衣
 
皆行方不明の春に我は在り 永田耕衣
 
河骨や天女に器宮ある如し 永田耕衣
 
千仞の谷に捨てけり白まくら 永田耕衣
 
あんぱんを落として見るや夏の土 永田耕衣
 
星ながら精しく掃きぬ冬の山 永田耕衣
 
後ろにも髪脱け落つる山河かな 永田耕衣
 
手を容れて冷たくしたり春の空 永田耕衣
 
うそ寒や草の根這へる裏の山 永田耕衣
 
空蝉に肉残り居る山河かな 永田耕衣
 
金色に茗荷汁澄む地球かな 永田耕衣
 
春海の纏き附く陸は残りけり 永田耕衣
 
人間の遠薄氷の時間かな 永田耕衣
 
澄む海や細かなる母を失ひき 永田耕衣
 
落し水母の白髪のきはまりぬ 永田耕衣
 
田水落つ母の蒲団の固きまま 永田耕衣
 
芭蕉忌の枕が鳴るや仮の宿 永田耕衣
 
水洟の水色膝に落つ故郷 永田耕衣
 
天上に映りて麦を刈り尽す 永田耕衣
 
夕凪や使はねば水流れ過ぐ 永田耕衣
 
手を容れて冷たくしたり春の空 永田耕衣
 
秋雨や空杯の空溢れ溢れ 永田耕衣
 
月明の畝あそばせてありしかな 永田耕衣
 
物として我を夕焼染めにけり 永田耕衣
 
少年や六十年後の春の如し 永田耕衣
 
大晩春泥ん泥泥どろ泥ん 永田耕衣
 
少年の死神が待つ牡丹かな 永田耕衣
 
もう種でなくまつさをに貝割菜 永田耕衣
 
暁暗も人類無かれ桃の花 永田耕衣
 
人を見ぬ残花や山河くすくすと 永田耕衣
 
死近しとげらげら梅に笑ひけり 永田耕衣

ユスラウメが実っているのに気付いた。

季節はどんどん前へ進む。

 

富松神社の大楠