里山で育つ子供は、季節の変化を身近に感じながら大きくなります。春には草花が芽を出し、夏には緑が濃くなり、秋には実りがあり、冬には景色が静かになります。そうした移り変わりを見て育つと、子供は自然に、世の中には流れがあることを知ります。いつまでも同じではないこと、苦しい時期のあとにまた違う季節が来ることを、頭ではなく心で覚えていくのです。
それは、その子の心の深いところに、とても大切な力を育てます。たとえば、つらいことがあっても、それですべてが終わりではないと思える力です。うまくいかない日があっても、また少しずつ前に進めると感じられる力です。里山では、葉が落ちる木もあれば、春になればまた芽吹く木もあります。寒い冬のあいだも、土の下では次の季節の準備が進んでいます。そういうことを小さいころから見ていると、「人生もきっと同じだ」と、自然に感じられるようになるのだと思います。
里山には、きれいなことばかりがあるわけではありません。雨が続いて畑が思うようにならないこともありますし、生き物の命の終わりを見ることもあります。でも、だからこそ子供は、世の中が思い通りにならないことを知り、それでも生きることにはちゃんと意味があると学びます。楽しいことだけでなく、さびしさや悲しさもある。それでも季節は巡り、暮らしは続き、また新しい命が生まれてくる。その繰り返しが、子供の心に「生きていくことは悪くない」「この世界には、ちゃんと希望がある」という感覚を残していくのです。
人生を前向きにとらえる力というのは、いつも明るく元気でいることではありません。苦しいときがあっても、また立ち上がれると信じられることだと思います。里山で育つ子供は、その力を自然の中から受け取っているのではないでしょうか。風の音や土のにおい、夕方の山の色、鳥の声や虫の羽音。そんな何気ないものの一つ一つが、その子の心の奥にやさしく積み重なっていきます。
そして大人になってからも、その記憶はきっと支えになります。つらいとき、迷ったとき、心のどこかで「また季節は巡る」と思える。すぐには変わらなくても、少しずつ状況は動いていくと感じられる。里山は、そんな生きる力を、言葉ではなく毎日の風景の中で子供に教えてくれる場所なのだと思います。
