*当シリーズの趣旨については、プロフィールを参照して下さい。

 

H・P・ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)

訳出過程での初校段階に於ける誤訳検証を続ける。

 

今回問題とする原文は、文脈としては、フィリピン奪回に際して米軍が投入した兵力や払った代償に言及した著者が、フィリピン戦やルソン島攻略作戦について評価している箇所である。冒頭のThisは、フィリピン戦への米軍の投入兵力や蒙った損害が大きかったことを指す

 

This raises two quite separate issues: on the one hand it invites consideration of the relative value of the two American offensives across the Pacific, and on the other hand it prompts examination of the infinitely more difficult question of whether, if not the Philippines, Luzon could have been bypassed.

 

次に、某大の監訳者が小生の元の訳を修正した後の訳を掲げる:

 

監訳者の訳このように考えていけば、二つの極めて異なった問題に気付く。第一に、太平洋で米軍が行った二方面での攻勢作戦を有効性の面で比較考量することが求められ、第二に、フィリピン解放は必要としてもルソン島を迂回することができなかったかという、答えるのが遥かに難しい問題の検証を促すこととなる。

 

:原文と監訳者の訳文とを対照して、訳文として不適切、若しくは誤訳と判定すべき箇所を指摘し、その理由を述べよ。

 

ヒントとしては、「訳文中の不要な“付け足し”のようなものに注目せよ」と言っておく。