*このシリーズの趣旨については、プロフィールを参照してください。

 

原語だけでなく文脈も考えて訳せ:今一つのdefeatの訳(問)

 

ウィルモット『大いなる聖戦・第二次世界大戦全史』(国書刊行会)

の訳出段階での誤訳検証を続ける。

 

このシリーズの前々回「ウィルモット『第二次世界大戦全史』訳出過程誤訳検証(46):defeat(問)」及び前回「ウィルモット『第二次世界大戦全史』訳出過程誤訳検証(46):defeat(答)で、defeatという単語の訳し方について論じたが、今回も同じ単語を取り上げる。

 

まずは原文を提示する。「見出しの誤訳・不適訳」について論じていた折に取り上げるのを忘れていたもので、前々回・前回と同様に一九四四年当時の東部戦線の戦況を記した箇所に登場してくる以下の一節である:

 

DEFEAT OF ARMY GROUP CENTRE

 

解説をすると、Army Group Centreは、東部戦線に展開されていたドイツ軍の中で最大規模の兵力を誇る軍集団で、この年にソ連軍の攻勢によって大打撃を受ける。

 

このような短い見出しの訳など容易いと思われるかもしれないが、以前に何度か言ったことを繰り返したい:短いものほど訳すのが難しい

 

以下の、二つの訳を提示する:

 

訳文①:ドイツ中央軍集団の壊滅

訳文②:ドイツ中央軍集団の敗北

 

問:いずれが適当な訳であろうか?今回は、当時の歴史の知識が必要であると考える。