昭和スパナのすべて-1/4
自社編-1
【2023年10月23日 追記】
再び10種類以上の新たなスパナを手に入れました。
さらに、昭和スパナをご存じの方に直接話をお聞きすることが出来ました。(昭和スパナは35年前に終業していますので、今となっては当時を知る唯一の方とのこと)
その際に、昭和スパナが保管していた写真を見せて頂き、これまで見たことがなかったスパナの存在も確認できています。
これで、昭和スパナの全貌が分かりました。
したがい、新たに入手した情報を追加して、『昭和スパナのすべて』を最終決定版として書き直しました。
情報量が2倍に増えましたので、従来の前後編から4部構成に作り直しています。
さらに、補足として調査顛末に関する5部目も。
掲載スパナは、全部で82種類(自社36種+OEM46種、さらにコンビレンチも5種)。
もの凄い数です。
間違いなく日本で一番多くの種類のスパナを作っていた会社です。
ちなみに、2番目はKTCで、スパナは45種類。
昭和スパナは戦前の昭和13年からスパナを作っていますが、当時の話を聞くことが出来たのは昭和37年から終業の昭和63年までについて。
昭和スパナ50年間の歴史の内、後半25年間の生情報になります。
聞き取った内容については、文頭に☆印を付けてあります。
・1/4…自社編-1(スタンダードSDFスパナ)
・2/4…自社編-2(ロングスパナ等+会社情報)
・3/4…OEM編-1(自動車メーカー向けOEM)
・4/4…OEM編-2(一般OEM)
・5部目…補足/調査顛末(商品情報は含まれていません)
なお、35年も前に終業している工具メーカーを詳細に調べ上げることが出来たのは画期的なことだと思います。
調査に4年が掛かっていますが、会社名すら分からなかった最初の頃の顛末については5部目の補足にて。
- - - - - ◇ - - - - - ◇ - - - - -
昭和13年にスパナ専業メーカーとして創業。
戦後も一般販売だけでなく日産等へのOEM納入も盛んに行っていて、昭和の最後の最後まで活躍していました。
昭和43年時点でのスパナ生産量は30万丁/月で、日本最大を誇っていたとのことです。
戦前からスパナを作り続けていて、かつJIS認証を最初に取得した7社中の1社であり、歴史も実力もある会社です。
そして、昭和が終わる直前の昭和63年6月に、日産向けOEMの終了に伴うスパナ生産量の半減を受けて、製造事業から撤退しています。(不動産管理に事業転換)
会社名『昭和スパナ製造』の通り、まさしく昭和を駆け抜けた会社です。
当ブログでは、日本のスパナ100年の歴史を取り扱うにあたり、明治から令和までの和歴で表示すると時の経過が良く分からなくなるため、西暦を中心に表示してきました。
但し、昭和スパナに関しては、創業から終業まで昭和ですので、昭和年号だけを使用します。(本文中に年代解説が多く、西暦と併記すると文章が長くなりますので)
↑昭和スパナで一番ポピュラーな凹尖りパネルの6本セット。
・ケース付きは非常に珍しいと思います。
・工場閉鎖時に従業員に配られた品と聞いています。
1. 会社沿革
※会社情報の詳細は、2/4『自社編-2+会社情報』の後半にて。
・昭和13年7月…『昭和鍛造工業所』を創業。
創業者の千葉壬驥(じんき)氏は、蚕糸製造器等で特許を持つ発明家で、蚕糸製造器の千葉製作所(鋳造業)を昭和12年年4月に設立した後に、スパナを主要商品とする鍛造メーカーとして『昭和鍛造工業所』を創業。
※千葉製作所と同時の昭和12年創業との資料もあり。
・昭和14年…スパナが広告に登場。
・昭和15年…『昭和スパナ製造所』に改名。
昭和鍛造工業所に関する資料は昭和16年までしか無く、代わりに昭和15年から昭和スパナ製造所が登場していることから、昭和15年に昭和スパナ製造所へ改名したと理解。
・昭和17年4月27日…"SDF"を商標登録。(登録番号…352046)
★"SDF"ロゴについて
(1) 由来…創業会社名:昭和鍛造 ⇒ Showa Drop Forge ⇒ "SDF"
(2) 読み方…エスデフ
(3) ロゴデザイン…蚕の繭(?)
・昭和スパナ創業者は蚕糸製造器の生産も手掛けていた方ですので、SDFロゴの"S"は蚕の繭をモチーフにしたのでは無いかと読者の方からご意見を頂きました。
確かに、ロゴの"S"が繭の形にそっくりですね。
- - - 終戦
・昭和24年7月21日…『昭和スパナ製造所(株)』として株式会社化。
戦後の統制経済の中で、関東信越(東京圏と新潟、長野)では作業工具として唯一の指定工場(優先的に物資入手)となり、終戦後すぐに操業を再開し、その経済統制法の終了後に株式会社化。
・昭和27年頃…さらに『昭和スパナ製造(株)』に改名。
・昭和27年11月15日…スパナでJIS認証を取得。(最初に取得した7社中の1社)
☆昭和62年末…日産へのOEM供給を終了。(同時に生産事業終了を決定)
・同年11月10日…事業廃止を理由としてJIS返上。
☆昭和63年6月…工場生産の完全終了。(不動産管理業に事業転換)
⇒ 生産終了に関する詳細は、本稿内のこちら。
↓会社名が異なる広告3種(戦前の昭和14年、16年と戦後の昭和43年)
※当ブログでは3社を総称して"昭和スパナ"と呼びます。
2. 商品情報
1) ブランド(ロゴ)…基本3種類(+3種類で合計6種類)
・国内:SDF、輸出:SHOWA、タペットレンチ:SHōWA SPANNERの3種が基本。
・ロゴ同士の合体もあり。(例:SHōWA SDF SPANNER)
・文字だけの"SDF"と"SHOWA"も少数あり。
☆最終期に"SPEAR KING"というクロモリ使用のブランドも登場。
2) OEM
生産量の50%が他社向けOEM。(昭和43年時点)
・自動車メーカー向け…ニッサン、ホンダ、ヤンマー
・工具メーカー向け…TONE、大阪鍛工
・工具商社向け…バンザイ、ニッサルコ、安全自動車(自動車整備機器の3大商社)
・自衛隊(桜マーク)
⇒ OEMの詳細は、昭和スパナ-3/4と4/4編にて。
3) 輸出
・22%が輸出。(昭和43年時点)
・SHOWAブランドでアメリカ向けに輸出。(楕円SHOWAと文字だけSHOWAの2種類)
・今でもヤフオクよりもアメリカebayの方が多く出品されています。
3. 掲載商品一覧
昭和スパナは、商品が多彩で、全体像を理解するのが難しくなっていますが、3要素(ブランド、パネル形状、スパナ形状)で分類すると分かり易くなります。
これまでに82種類(自社ブランド36種、OEM46種)のスパナと、さらに5種のコンビレンチ(全てOEM)が見つかっていて、それを3要素で分類したのが下表です。
・第1要素…ブランド(ロゴ)6種類
・第2要素…パネル形状(基本モデル)23種類 ⇒ 詳細は2/4編
・第3要素…スパナ形状3種(第1世代…卵型、第2世代…丸型、第3世代…やり型)
商品解説は、この一覧表の掲載順に行います。
なお、クロモリ製が12種もあり、昭和スパナは鋼材にも拘っていたようです。
1) 自社ブランド
2) OEM(別ページの昭和スパナー3/4と4/4にて解説)
4. 商品解説(ブランド別、さらにパネル形状別)
1)-1. フラットパネル
① 戦前 ★最初の昭和スパナ

・なんだかんだで200本以上の昭和スパナが手元にありますが、シンプルなフラットパネルにSDFロゴだけが刻印されているのは本品だけです。
・また、鍛造表面が粗く、スパナも卵形で、年代の古さを感じます。
・さらに、昭和16年広告のスパナが本品にそっくりです。
・SDFロゴが少し左寄りなのも一致。
・したがい、本品は昭和スパナ製造(旧・昭和鍛造工業所)の広告スパナそのもので、最初の昭和スパナ製品だと思います。
↑広告スパナの拡大
↓昭和16年『東京市商工名鑑』の広告
② フラットパネル JIS-H
・JIS-H/強化型のフラットパネルです。
・サイズ10x14でL=140であり、昭和32年改定後のJIS規格に合致する長さですので、昭和32年またはそれ以降の製造と分かります。(昭和31年までのJIS規格ではL=125)
・戦前モデルはSDFフラットパネルだけだったと理解していましたが、戦後のSDFフラットパネルはとても珍しい存在です。(見つかっているのは本品だけ)
・また、JIS-Hも珍しく、本品とバンザイ向けOEMの楕円"SHOWA"フラットパネルの2種類だけです。(他はJIS-NまたはJIS-S)
1)-2. 凸帯パネル
③ 凸帯 JIS無し-1 ★戦後第1号モデル
・凸帯パネル、卵型スパナ、JIS無し、裏面無刻印。
・JISマークが入っていないことから昭和27年以前のモデルになります。
・さらに、以下4点の理由より、昭和スパナの戦後第1号商品と考えるのが妥当だと思います。
(1) スパナデザインが第1世代と言える卵型。
(2) 同じ卵型でもこのモデルだけ異様に大きい。
(3) 裏面には何の刻印もありません。(のっぺりとしていて如何にも古そう)
・株式会社化した昭和24年頃、またはそれ以前で終戦直後の可能性もあると思います。
・ブランドロゴを表にして置くと、一般的には(95%以上の場合)小さなサイズの方が左に来ますが、このモデルは大きなサイズが左に来ます。
↑ホルダー付き3本セット。(レトロなネジ付きホルダーが素敵です)
↓その3本。
↑昭和25年前後ながらメッキ版(ユニクロメッキ?)もありました。(ミリサイズ)
★スパナの向きとスパナ規格の関係
・ブランド表示のある面を表にすると、左側には顔を下に傾けた小さい方のサイズが来るのが普通です。(メーカーを問わず95%以上に当て嵌まります)
・但し、日本の古いスパナでは左側に大きい方のスパナが来ていることが良くあります。
・昭和スパナも同様で、上の写真の通り同一パネルで同一サイズのモデルながら、新旧で向きが異なっていて、何故だろうと長く疑問に思っていましたが、JIS25社の再まとめをしていて理由が分かりました。
・スパナJIS規格は昭和27年に制定されて、昭和32年に長さ等を改定。
・最初の昭和27年規格のイラストでは左が大きい方のスパナになっていて、昭和32年の改定時に小さい方が左にかわっています。
・したがい、大小スパナの向きが変わったのは、JIS規格のイラストに素直に従った変更なのだろうと推察します。
・ちなみに、昭和27年のJISは、戦前にあったJES規格を踏襲していて、イラストも大きい方が左側に来ています。
・さらに、その戦前JES規格はドイツのDIN規格を参考にしていて、そのDIN規格で大きい方が左に来るイラストになっているのです。
・ちなみに、ほとんどのメーカーは最初から小さい方を左にするデザインを採用していますが、戦前からの工具メーカーでは昭和7年のJES規格イラストに従っていて、昭和32年のJIS改正まで踏襲していたのだろうと思います。
↑DIN規格 ⇒ JES規格/昭和7年
↓JIS規格/昭和27年 ⇒ 同/昭和32年(規格上で始めて小さい方が左側に)
④ 凸帯 JIS無し-2
・上の③に対しスパナ形状が卵型から丸型に変わったモデルです。
・JIS表示もありません。
・ただし、こちらには裏面に材料表示があり、③より新しいようです。
⑤ 凸帯 縦向きJISマーク ★最初のJISモデル
・表面にはSDFロゴだけ、裏面にはJISマークだけという珍しいSDFスパナです。
・JISマークが縦方向に刻印されているのは、さらに珍しいと思います。
・昭和スパナ最初のJISスパナだろと思います。
・JISマーク付きで、かつJIS-N、S、Hのクラス分けがされていませんので、昭和27年~30年の生産期間が短い製品と分かります。
・左側が小さなサイズのスパナに切り変わっています。
・JIS認証開始(昭和27年あたり)がスパナ向きの変換点のようです。
⑥ 凸帯 JIS-N
・綺麗なメッキの登場です。
☆ユニクロメッキ(亜鉛メッキの光沢クロメート処理)とのこと。
☆昭和スパナでは3種類の表面処理を行っていて、(1) ユニクロメッキ、(2) クロームメッキ、(3) 黒塗装とのこと。(戦前から戦後初期については情報無し)
☆上の⑤や⑥など『古いスパナはボディーが黒くなっているが、一部にメッキ跡も見られるので、ユニクロメッキが剥がれたのではないか?』とのこと。
・本品もスパナの向きが変わっています。(左側が小さいサイズ)
・JIS-N/普通型。
・JISクラス分けは3種…JISーN/普通型、JIS-H/強化型、JIS-S/やり型(固さは強化型と同じ)
★スパナ形状…基本3種
・左から卵型、丸型、やり型。
・丸型のみ19mmですが、卵型とやり型の3/4インチは19.05mmですので、同一サイズでの比較です。
・やり型は見分けが簡単ですが、卵型と丸型は似ているので見分けが難しくなっています。(卵型は下ぶくれ)
・丸型とやり型はJISで規定されたスパナ形状ですが、卵型は私が勝手に付けた名前であり、丸型に対し横に少しワイド(下ぶくれ)になっている時に使っています。
・卵型は戦前~戦後初期、丸型は昭和25年前後、やり型はJISで規定された昭和30年以降。
・なお、やり型にはスパナ先端の尖り度合いでⅠ型とⅡ型があります。
↓ 左側:先が細めのⅠ型、右側:太めのⅡ型。(上の写真はⅠ型)
1)-3. 凹パネル
凹パネルにはパネルの形状違いで、"尖り"に"帯"、"平行四辺形"の3種類があります。
⑦ 凹尖り-1 JIS無し
・凹帯パネルの左右端が少し尖った形になっていますので、"凹尖り"と呼びます。
・凹尖りパネルは、昭和スパナで最もポピュラーなモデルになっていて、本品で始まり、会社の最終期まで作り続けられます。
・本品はインチサイズのJIS無しモデルになっています。
・JIS無しですので、昭和スパナがJIS認証を取得した昭和27年よりも前の製品になると思います。
・もしくは、インチサイズなので、敢えてJISマークは入れなかった?
⑧ 凹尖り-2 JIS-N
・上のJIS無しに対しJIS-Nが追加されたモデル。
・スパナが丸型であることから、凹尖りパネルの初期モデルと思いますが、JIS-Nという表示がJIS規格で制定されたのが昭和30年ですので、それ以降のモデルになります。
・そして、やり型スパナが昭和32年に制定されますので、このモデルは昭和30年~32年頃の短期間モデルと推測します。
・さらに、この凹尖りパネルにはJIS無し⑦とJIS-N⑧の間にJISだけモデルがあった可能性があります。
・インチながらJISマーク付きですが、JIS規格が制定された昭和27年から昭和52年まではインチサイズでもJIS認証を受けることが出来ています。
↑ネジ付きホルダーの6本セット
⑨ 凹帯-1 JIS無し
・凹帯パネルが左右端までストレートで、まさしく凹帯パネルです。
・やり型の設定は無く、インチ仕様で、かつスパナが卵型であることから、ごく初期だけに存在したモデルと思います。
※表面の向きを間違えています、sorry!
⑩ 凹平行四辺形 JIS-N クロモリ
・凹平行四辺形パネル。
・昭和スパナがクロモリ鋼を使用した最初のモデルと思います。
・クロモリ鋼ながら、JIS認証は普通級のN。(JIS-H/強化型に出来そうですが)
・中央に刻印されている"B-102"は商品シリーズを表していそうで、上の⑨ "D-102"とも関連がありそうです。
・その⑨と本品共にインチサイズであること、やり型の設定が無いことから、B-xxxやD-xxxは初期商品シリーズの呼び方なのかもしれません。
↑昭和スパナが保管していた写真から、凹平行四辺形の6本セット。
⑪ 凹三角尖り
☆昭和スパナ保管写真の中に、凹パネルの両端が三角形に尖ったイラストがありました。
・セット写真を見る限りでは、イラストでは無く、実物写真に見えますので、実在していたのだと思います。
・スパナ形状が真ん丸ですので、凹尖りの初期モデルと思います。(昭和30年代?)
・試作品かもしれません。
・35x41という大型サイズが含まれています。
↓セット写真
⑫ 凹三角尖り/片口スパナ
☆上の⑪と同じく凹パネルの両端が三角形に尖ったイラストで、片口スパナです。
・昭和スパナの片口スパナは、初めてです。
・これも試作品かもしれません。
⑬ 凹帯-2/丸型
↑昭和スパナ保管写真(パンフレット用?)
・次の⑭と同じ凹帯ながら、スパナ形状がやり型ではなく、丸型。
・昭和36年の会社資料にこの写真が使われていることから、昭和36年よりも前の製品と分かります。(2/4編の『7.会社情報』資料-3)
↑こもまで…凹パネル/丸型スパナ
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↓この後… 同 /やり型スパナ
★スパナ形状…やり型Ⅰとやり型Ⅱ
・1965年頃にスパナ形状が丸型からやり型に切り変わります。
・前述の通り、やり型に2種類あります。
・Ⅰ型が先に登場し、途中からⅡ型も登場しますが、かならずしも切り変わった訳では無さそうで、Ⅱ型の方がポピュラーながら、両者は混在しています。
・なお、Ⅰ型とⅡ型の中間のようなスパナも存在し、どちらか明確に分けづらい場合もあります。
↓全体形状の比較。(上側がⅡ型、下側がⅠ型)
・実は、日産向けで、文字付きロゴ
と文字無しロゴ
のスパナ形状が明らかに異なっていて、解釈に困っていました。
・文字付きロゴの日産向け(やり型Ⅰ)は、昭和スパナ製ではない可能性もあると考えていたところで、やり型にⅠ型とⅡ型があることが分かり、文字付きロゴ版も昭和スパナ製であることが確認できた次第です。
↓文字付きロゴ/やり型Ⅰ(上側)と、文字無しロゴ/やり型Ⅱ(下側)
⑭ 凹帯-3、やり型Ⅰ、クロモリ
・やり型スパナです。(初期モデルですので、Ⅰ型)
・上の⑨凹帯-1(丸型スパナ)に較べて凹帯の幅が広くなっています。
・やり型+JIS-Sであり、最もポピュラーなモデル⑯凹尖りとコンセプトが似ています。
・クロモリ鋼だけが見つかっています。
・凹パネルのクロモリは、⑩⇒⑭⇒⑱と販売モデル変更になったのかと思います。
・製造記号が"4302・"の4桁であることから、昭和43年2月生産と素直に解釈しています。
・"・"は、鍛造型の修正1回。(製造記号の読み方については本稿の巻末に解説)
・なお、製造記号の3桁/⑦"103M"、⑧"102S、⑩"502A"、⑮"402C"(全てインチサイズ)については、x02が多く、2月生産ばかりとは思えず、製造年月では無さそうです。
⑮ 凹尖り、やり型Ⅰ、インチ、JIS無し
・インチサイズでJIS無し。
・国内で見つけていて、"JAPAN"刻印もありませんので、国内向けと思います。
・インチサイズでも昭和52年まではJISマークを付けることが出来ますが、敢えて付けていないのだろうと思います。
↑昭和スパナ保管写真(スナップ写真ではなく、写真風のイラスト)
・小刻みなインチサイズの6本セット。
⑯ 凹尖り/Chrome Alloy、やり型Ⅰ、JIS-S
・凹尖りパネルでやり型スパナ。
・昭和スパナで一番出回っているモデルですので、"The 昭和スパナ"になります。
・上の⑦、⑧に対し世代が新しくなり、スパナがやり型にモデルチェンジ。
・やり型スパナなので、JIS-Sになります。
・ミリとインチ両方の設定が確認できています。
・クロームメッキ。
☆裏面左側に数字2桁の製造記号"85"より、昭和58年または昭和48年の5月生産とのこと。
・なお、スパナ部がバフ仕上げされていますので、世代が新しく、昭和58年の方の可能性が高いと思います。
⑰ 凹尖り/Chrome Vanadium、やり型Ⅱ、JIS-S
・材質が"Chrome Vanadium"になります。
☆製造記号"62・"より、昭和56年または昭和46年の2月生産。
☆"・"より、修正1回の鍛造型。("・・"は鍛造型の修正2回)
☆本品の様に鋼材が固い場合は、3,000回打つ毎に鍛造型を修正していたとのこと。
(JISマークが付かない廉価版など鋼材が柔らかい場合は、8,000回程度毎)
⑱ 凹尖り/クロモリ、やり型Ⅱ、JIS-S
・材質がクロモリ鋼になっています。
・凹尖りのクロモリは、ほとんど見かけませんので、超貴重な逸品と思います。
・採用鋼に3種あることが分かります。
*⑯…Chrome Alloy(ほとんど全て)
*⑰…Chrome Vanadium(ごく少数)
*⑱…Chrome Molybdenum(ごく少数)
☆製造記号"3B"より、昭和53年または昭和43年の11月生産。
(昭和63年の11月は工場稼働停止の5ヶ月後なので対象外)
・材質3種比較…⑯Chrome Alloy、⑰Chrome Vanadium、⑱クロモリ(Chrome Molybdnium。
⑲ 凹尖り/ユニクロメッキ、やり型Ⅰ
・ポピュラーなクロームメッキの凹尖りパネルに対し、ユニクロメッキの廉価版がありました。
・但し、JIS-Sのままですので、材質/硬さは変えず、表面仕上げ度合いとメッキだけが廉価仕様になっているようです。
↑廉価、やり型Ⅰ/ユニクロメッキ(上側)と、やり型Ⅱ/クロームメッキ(下側)。
★6本セット用ケース
・展示会写真に6本セットが展示されていて、写真が小さいため読み取りにくいのですが、凹尖りの"S"だけで5種類のセットがあるようです。(展示台の上)
・S-61、S-65、S-67、S-69、さらにSS-67。
・S-61~69の4種は組み合わせサイズ違いだろうと思いますが、SS-67は何でしょうか?
・クロモリ仕様??
2) ブランド:文字だけSDF
⑳ 凹帯やや尖り、JIS-N、文字だけSDF
・⑯~⑱と同じ凹尖りながら、やや尖りの帯パネルになった独自のデザインです。
・ブランド表示がSDFロゴでは無くて、文字だけのSDF。
・裏面には材質表示も無く、JIS-Nの表示だけ。
・表面仕上げはクロームメッキでは無く、ユニクロムメッキ。
・実にあっさりとしていて、質実剛健なスタイルですが、商品性を訴える力はありません。
・SDFというブランド名(会社表示)が表面にありますので、一般向け市販品だろうと思いますが、これで売れるのか心配になってしまいます。
・可能性として2通り考えられます。
1) 安価優先で大小サイズを組み合わせた市販品 。(今の時代で言えば、量販店で良く見かける6本で千円以下のインド製の類い)
2) 産業機械等の付属品。
・いずれにしても、JIS表示がありますので、JIS規定により製造者記号を表示する必要がありますが、一般市販品との差別化で、SDFロゴの使用は避けた?
・JIS-Sでは無くJIS-Nであり、材質を落とすなど硬度をJIS-Nクラスにして、原価を抑えているものと思います。(メッキも安価仕様)
・鍛造型を簡便な放電加工で作成したため、細かい文字の
を加工できず、やむを得ず文字だけのSDFにした?(JISマークも曖昧な形になっています)
※鍛造型の放電加工については、3/4編の➈にて。
・JIS-Sでは無くJIS-Nであり、材質を落とすなど硬度をJIS-Nクラスにして、原価を抑えているものと思います。(メッキも安価仕様)
・どう解釈すれば良いのか悩むモデルですが、昭和スパナ自身も商品作りに悩んでいたように感じます。
・ちなみに、スパナ形状はやり型Ⅰです。
【巻末-1】製造記号と製造年月
1. 商品から分かること
・戦前からJIS取得(昭和52年)まで製造記号無し。
・JISの初期モデルには製造記号無し。
・昭和36年の広告モデル(凹尖り丸型スパナ)よりも世代が新しいモデル(凹尖りやり型スパナ)には、4桁の製造記号。
⇒昭和30年頃から製造記号を開始し、最初は4桁。
・4桁は製造年月(2桁+2桁)が当て嵌まる。
・同じく昭和30年頃以降に3桁もあるが、”x02”が多く、製造年月以外の様子。
2. 昭和スパナ関係者からの聞き取り
・昭和40年頃には2桁になっていた。
・上一桁は昭和年号の末尾年、下一桁は製造月(1~9、および10~12月はA~C)。
・2桁の後の”・”は鍛造型修正1回、”:”は同2回。
3. 当ブログとしての判断
・戦前~昭和30年頃…製造記号無し
・昭和30年頃~40年頃…4桁は素直に昭和年号+製造月01~12の様子、3桁は製造年月では無さそう。
【巻末-2】終業(生産終了⇒事業転換)について
☆日産向け納入が売上げの半数以上を占めている中で、昭和50年代後半に入ってから1台の車載スパナ本数が少なくなっていき、スパナ生産量が減少。
☆さらに、原価低減要望が強くなる中で、販価を落とすと事業として成立しなくなるため、生産事業自体の停止を前提にOEM納入継続を断念。
☆昭和62年末に日産への納入終了。
・同時に、同年11月に事業廃止を理由としてJIS認証も返上。
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☆半年間だけ契約済みOEM商品(大阪鍛工等)の生産を続けたものの、翌昭和63年の6月にスパナ生産を完全に終了し、工場閉鎖。
☆そして、工場跡地等の不動産管理業に事業転換。(社名変更した不動産会社が現存)
・東京都内の人口過密地にある工場として騒音対策には苦労していたでしょうから、いずれ移転を余儀なくされることは明らかであり、潮時と捉えたのだろうと推察します。(騒音対策の努力については、2/4編の6.工場情報 3)騒音対策にて)
☆なお、日産への車載スパナ納入は、他の工具メーカーに引き継がれたとのこと。
※日産向けスパナの詳細は、3/4編 OEM-1にて。
昭和スパナのすべて
1.自社編(本稿) ⇒ 2.自社編-2























































