日本のモンキーレンチ-11

HITのすべて

 

【2024年11月13日 追記】

憧れていた猿モンキーをついに手に入れました。

戦前の1936年、モンキー印のモンキーレンチ、東邦工機の第1号、ユニークなS型。

私の戦前コレクションの中できらりと輝いています。

 

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HIT/東邦工器は、1926年に川上製作所として創業し、1935年に全鍛造モンキーレンチの生産を始めていて、そろそろ創業100年の歴史ある工具ブランドです。

1955年の自社紹介文には『モンキー6万丁、業界第一位の生産量を誇る』と記されています。

戦前のモンキーレンチにはモンキー印 、さらに"HITLOI/ヒットロイ"や"ギヤHIT"  などロゴが多彩なのも特徴です。

なお、現在の東邦工器は、プロ向け工具ブランドに舵を切り、スパナとコンビレンチは生産終了となっていますが、戦前から主力商品だったモンキーレンチは現行品として継続販売されています。

 

最初のモンキーレンチJIS認証として1951年6月28日に5社が同時取得していて、東邦工機/HITはその内のひとつです。

↑『JIS表示許可工場名簿』1962年版(発行:日本規格協会)より抜粋

 

1. 商品一覧

 

2. 会社概要

 

3. 商品解説

 1) 戦前モデル 

戦前の東邦工機に以下の3ブランドがあったことが広告で確認できます。

(1) モンキーレンチ…『モンキー印』

(2) モンキーレンチ…『バンコ印』

(3) パイプレンチ …『ヒット印

モンキーレンチは3種類の形状があり、クレセント型、バーコ型とさらにS字型。

クレセント型とバーコ型は当時の欧米で既に主流であった形状です。

さらに、3種類目のS字型はバーグマン"Queen City"を参考にしています。

また、添付の会社案内資料によると『TON印』、『アーム印』のモンキーレンチもあったようです。

但し、この2種は広告等には登場しませんので、どうようなモデルかは確認できていません。

なお、『ヒット印』はパイプレンチだけで、モンキーレンチのヒット印は戦後になってから登場します。

↑1942年『工場仕入案内』と1938年『同』広告より

 

 ① 戦前-1 "モンキー印" S型 (第1号モンキー)

 

・約90年前の1935年にそれまでの蓄音機部品メーカーから工具メーカーに転換したとのことより、この1935年から代表商品であるモンキーレンチの生産を始めたと推察しています。

・翌1936年にまずモンキー印のS字型が広告に登場し、全鍛造と謳われています。

・"MONKEY"の右側に登録商標のモンキー印ロゴが刻印されています。

・握り部にカーブを付けてあるので、S字型モンキーと表現されています。

・握り部がストレートの通常型(クレセント型、バーコ型)モンキーもあったことが広告で確認できます。

・広告ではまず最初にこのS字型モンキーが2年続けて登場し、その後に通常型モンキーが出てきますので、このS字型が東邦工機の第1号モンキーレンチだと考えています。

・なお、このS字型はアメリカBergman社の"Queen City"モデルを参考にしています。

↑Bergman社"Queen City"

 

↑1936年『工業仕入案内』広告

 

↑1938年広告『工業仕入案内』

(戦前のHITを代表するモンキーレンチ3種とパイプレンチ)

 

ロブテックス(旧・日本理器)と東邦工機の2社が戦前からモンキーレンチを作っていて、2社がモンキーの老舗です。(TOPは戦後から生産開始)

日本理器は、1928年に可鍛鋳鉄製の第1号モンキーを生産開始し、全鍛造は1933年に始めています。

一方で、東邦工機は、1935年からの全鍛造での生産開始であり、ほぼ同時と言っても良いかと思います。(同じ大阪同士で戦後もライバル関係が続きます)

日本のハンドツール業界の歴史は、大阪でこの2社から始まったと言って良いのだろうと思います。

 

 ② 戦前-2 "モンキー印" 

・モンキー印のモンキーレンチには一般的なクレセント型もあったことが広告より分かります。

・イラストでは不鮮明ながら"MONKEY"右側の六角形はモンキー印ロゴだと思います。

・東邦工機の第2号モンキーレンチになると思います。

 

 ③ 戦前-3 "バンコ印/BANKO" 

・3種類目のモンキーレンチとしてバーコ型がバンコ印/BANKOブランドとして広告に載っています。

・また、会社紹介にも自社ブランドとしてバンコ印と記されています。

・スエーデンのBAHCO/バーコをもじって、BANKO/バンコという名称にしたのでは無いかと推察しています。

・形状も変わっていて、ウォールナットの向きを見るとジョー部の傾きがイラストではほとんどゼロになっています。

・名称を含めて正体不明なモデルです。

 

【参考】ヒット印のパイプレンチ(広告内の4本目)

 

- - - - - 終戦

 

 2) HIT 

 ④-1 戦後初モデル "HIT"(1948年頃~1950年頃)

・終戦から3年後の1948年に東邦工機として戦後初の広告が登場し、"HIT"モンキーレンチのイラストが載っています。

・戦後の第1号モンキーだと思います。

・"HIT"ブランドは戦前からパイプレンチで使用されていましたが、戦後になってから本命のモンキーレンチにも使用された形です。

・"HIT"の右側に六角形のマークが小さく入っていますので、戦前から引き続きモンキー印ロゴが使用されているのが分かります。

・広告には戦前と同様に"TRADE  MARK"と表示されています。

・このHITモデルは、終戦後の数年間(1948年頃~1950年頃)しか販売されなかったようです。

 

・不鮮明なイラストながらジョー部傾きが付いていないモデルも広告に載っています。

・これもモンキー印ロゴが刻印されています。

 

↑1948年 広告より

 

 ④-2 "HIT" JIS無し(1950年頃)

・上の④-1に引き続き"HIT"モデルの第2世代です。

・会社ロゴが猿マーク  からギアーHIT  に変わります。

・JIS認証を取得する前で、ブランド名が"HIT"だけの最終モデルになります。

(次のモデルからJIS認証を取得してブランド名が変わり、"STRONG HIT"に)

・ホームページの会社沿革に『1951年…モンキレンチの材料に特殊合金鋼(クロモリ鋼)を採用』と説明されていますが、このモデルはクロモリ材の表示が無いため、1951年よりも前のモデルということになります。

 

 ⑤-1 "STRONG HIT" with JIS(1951年~1954年)

・東邦工機モンキーレンチの代名詞になる"STRONG HIT"の登場です。

・1951年にモンキーJIS規格が施行された時には"H"/強力級や"N"/普通級のクラス分けはまだ無く、クラス分けは1954年の規則改定時からになります。

・したがい、クラス分け表示の無い単独JISマークの本商品は、1951年~1954年の生産となります。

・会社HPに『1951年…モンキレンチの材料に特殊合金鋼(クロモリ鋼)を採用』と記されていて、本モデルもクロモリ鋼が採用されています。(裏面に"CR-MO")

・JIS認証取得を機に以下3点が同時変更になったのだろうと思います。

(1) ブランドが"STRONG HIT"

(2) クロモリ製

(3) 右端の孔の縁が全周タイプ

 

 ⑤-2 "STRONG HIT" with JIS-H 

・"STRONG HIT"、JIS-H/強力級、"ギヤHIT"ロゴが3つ揃った最もポピュラーな東邦工機のモンキーレンチです。

・JIS-Hマークと共に東邦工機のJIS認証番号である"657"が刻印されています。

・モンキーレンチのJIS認証を2000年6月に返上していますが、それまでは自社製の"STRONG HIT"が継続していたのだろうと思います。

・表面右側のサイズ表示が、インチからミリに変更されています。(8” ⇒ 200mm)

・数ある”STRONG HIT"モデルの中で、何故かこのモデルだけ"STRONG"が小文字の”Strong"です。(1959年の広告に"Strong HIT"モデルが登場しています)

 

 ⑤-3 "STRONG HIT" with JIS-H /TOHO KOKI表示 

・"CR-MO"の表示がなくなり、”ALLOY STEEL"になっていますので、クロモリ鋼の使用は中止となり、一般合金に戻ったのだろうと推察します。

・裏面に"TOHO KOKI CO."の会社名が表示されています。

・恐らく自社製"STRONG HIT"の最終モデルなのだろうと思います。

 

 ⑥ "Clean HIT" JIS無し、クロモリ 

・ブランド名が"Clean HIT"、JIS無し、クロモリ製です。

・JIS無しであることから、JISを取得する1951年以前の可能性もありますが、それほど古そうな作りには見えません。

・敢えてJIS無しにした廉価版なのかと思いましたが、クロモリ製ですので、廉価版でもありません。

・位置付けや生産年代などの正体が不明なモデルです。

・ウォームギヤーの軸が6角形で、左右に出っ張っていて、スライドによるロック機構になっています。

 

 追加 "Pro HIT" JISマーク無し 

・ブランド名が"Pro HIT"、JIS無し。

・比較的最近のものに見え、かつJAPAN刻印が無いことから、中国製なのかと思います。

 

 3) HITROI 

 ⑦-1 "HITROI" JIS無し(1951年上期)

・"HITROI"ブランドのモンキーレンチです。

・JISマークがありませんので、JIS認証を取得する1951年6月よりも前で、さらに前述の1951年採用のクロモリ鋼ですので、1951年上期だけのモデルと思います。

・右側の孔の縁は、最初から全周タイプです。

・戦前から"HIT"というブランド名が使われていますが、戦後になってからこの ”HITROI"という新たなロゴを商標登録しています。(1952年登録)

・"ROI"が何から来るのか不明です。(最初は一人/HITORIって何だろうと読み間違えました)

・JIS取得前に"STRONG HIT"と同時に登場し併売されていました。

・ヘッドの幅と厚みが、"STRONG HIT":大、"HITROI":小になっていますので、 "STRONG HIT"は強化型、"HITROI"は一般型(廉価版)なのだろうと推察します。

 

 ⑦-2 "HITROI" JIS-N(1954年~)

・JIS認証モデルに切り替わります。

・写真の商品は、JIS-N/普通級であり、NとNのクラス分け後になりますので、1954年以降の生産と分かります。

・1951年から採用されたクロモリ鋼が"HITROI"でも使われています。

・クロモリ鋼でJIS-N/普通級というのはもったいない気がします。

 

 ⑦-3 "HITROI" with JIS-N(1954年~?)

・サイズ表示がインチからミリに切り替わります。(8” ⇒ 200mm)

 

 ⑦-4 "HITROI" JIS-H /TOHO KOKI表示 

・JIS-Hに切り替わります。

・"CR-MO"の表示がなくなり、”ALLOY STEEL"になっていますので、クロモリ鋼の使用は中止となり、一般合金に戻ったのだろうと推察します。

・一方で、JISクラスはJIS-H/強化型に格上げされています。

・裏面に"TOHO KOKI CO."の会社名が表示されています。

・"STRONG HIT"に同一仕様(一般合金+TOHO KOKI)のモンキーレンチがあり、自社製JISの最終モデルと考えていますが、この"HIROI"も"HITROI"自身の最終モデルではだろうと思います。(具体的に何年で生産を終了したのかは判断材料が無いので、不明です)

 

★ アメリカ Alloy ArtifactsでのHIT解説

・"HITROI"と"STRONG HIT"がアメリカ工具解説サイトの"Alloy Artifact"で解説されています。⇒ 詳細は、こちら。(当ブログから情報提供しています)

 

 4) HIT by OEM 

前述の通り東邦工機は2000年6月にモンキーレンチのJIS認証を返上しています。

恐らく、プロ向け工具にシフトする会社方針が出されたのだろうと思います。

そして、その時にモンキーレンチやスパナのOEM化へ舵を切ったものと推測しています。

モンキーレンチでは北陽産業/SANKI製と鳥取ロブスター製の"STRONG HIT"が確認できていて、併注されていたのだろうと推測しています。

なお、北陽産業は2011年に倒産していますので、少なくとも2011年から現在まで鳥取ロブスターへの単独発注になります。

なお、OEMモデルになってから"HIT"の字体がエスプリット  に切り替わります。

 

 ⑧-1 "STRONG HIT" by SANKI/北陽産業(2000年頃~2011年頃)

・北陽産業/SANKI製…製造者記号"SA" (SANKI) & JIS認証番号"9786"

・2008年~2011年にJIS無しモデルがあったかもしれません。

 

 ⑧-2 "STRONG HIT" by 鳥取ロブスター(2000年頃~2008年)

・鳥取ロブスター製…製造者記号"TL" (Tottori Lobster) & JIS認証番号"695012"

 

 ⑧-3 現行モデル(2008年~現在)


・現行モデル(JIS無し、製造者記号"TL"/鳥取ロブスター製)

 

↑"STROING HIT"の外箱

箱右のJISマーク下部に"PER No.9786"とありますので、北陽産業/SANKI製と分かるのですが、"Manufactured by TOHO KOKI"とも表示されていて、解釈に困ります。

"Manufacture"を、製造では無く、パッケージングぐらいに捉えているのかもしれません。

自社製用として外箱を作り、JISマーク部分だけ後から変更した可能性もあります。

 

↑別の"STRONG HIT"外箱

・同じ"No.9786"/SANKI製ながら、"Manufactured"という表示をしていないので、誤解が生じません。

 

 5) OEM供給モデル 

 ⑨ 米国 FULLER by HIT 

・1963年時点で売上げの20%が輸出で、米国FULLER社とモンキーレンチ等の長期供給契約を結んでいます。

・なお、同社から1963年に期限12年間の$15,000融資を受けています。(鍛造型作成費?)⇒ 詳細は、9-5)項『輸出』にて。

・表の右端に"HIT"と刻印されていますので、東邦工機製と分かります。

・ちなみに、HIT/東邦工機だけで無く、KTCならびに北陽産業/SANKIも、FULLER社にモンキーレンチを供給していました。

・3社製のFULLERモンキーは、今でもアメリカebayで良く見かけます。

 

 ⑩-1 BANZAI-1 

・自動車整備機器商社のバンザイ/BANZAI(BTC)向け。

・裏面の"HIT"ならびに"657"より東邦工機製と分かります。

・JIS-H認証モデルです。

 

 ⑩-2 BANZAI-2 

・上の⑩-1と同じBTCモデルながら、自社製"STRONG HIT"と同様にクロモリ鋼を使用しています。

 

 ⑩-3 BANZAI-3 

・ロゴが"BTC"では無く、"BANZAI"のモデル。

・会社ロゴが"BTC"から"BANZAI"に切り替わっていますので、この"BANZAI"モデルが後の発売と分かります。(切り替わり時期?)

・また、JIS付きですので、2000年までのモデルとなります。

 

 ⑪-1 TOYOTA-1 

・トヨタFAトラック(1954年~64年)の1955年版パーツリストに車載工具として掲載されていたモンキーレンチ。(下部参照)

・"TOYOTA"と"MOTOR"の間にカタカナ"トヨタ"の刻印。

・その右側の長丸凸突起が特徴。

・何も打刻されていませんが、製造番号等を表示する予定だったのでしょうか?

・次のTOYOTA2~4にある"HIT"の表示がないことから、他社製の可能性もあり、その場合は他の工具の納入実績よりKTCが候補になります。

・但し、形状はTOYOTA2~4と同一ですので、TOYOTA-1もHIT/東邦工機製と考えるのが素直だと思います。

 

 

 ⑪-2 TOYOTA-2 

・TOYOTA-1から長円凸突起を無くし、"HIT"が追加されたモデル。

・"HIT"より東邦工機製と分かります。

 

 ⑪-3 TOYOTA-3 

・TOYOTA-2から丸カタカナ"トヨタ"を省いたモデル。

・丸カタカナ"トヨタ"分の隙間が不自然に残っています。

・これも"HIT"刻印より東邦工機製と分かります。

 

 ⑪-4 TOYOTA-4 

・会社名表示が"TOYOTA"だけになります。

・スパナなどの例から、この"TOYOTA"だけ表示が一番新しいモデルになります。

・これも"HIT"より東邦工機製です。

 

★”STRONG HIT"、"HITOROI"、"OEM"3種の形状比較

・"STRONG HIT"はヘッドが大きく、"HITROI"とOEM"TOYOTA"のヘッドは小さいのが分かります。

・ジョー部の厚みを比較すると、"STRONG HIT":厚い、"HITROI":薄い、OEM"TOYOTA":中間になっています。

・"STRONG HIT"と"HITROI"は、強化型と一般型(廉価版)で差を付けたのだろうと思いますが、OEM"TOYOTA"はJISマークが無く、SC材など安価な材質を使っているなどの理由から、"HITOROI"よりも少し厚みを持たせているのではないかと推察します。

 

4. JIS

1)モンキーレンチ/B4604

↓1951年6月28日に5社同時に初のモンキーレンチJIS認証を取得 @大阪/加美工場

 

↓1984年4月11日に奈良/大和郡山工場への移転を前提に全JIS認証を一端取り消し

・JIS-H/強力級とJIS-N/普通級を全鍛造23度で取得していたことが分かります。

 

↓1985年6月13日に奈良/大和郡山工場でJIS認証を取り直し(認証番号変わらず)

・認証取り直しに際し、JIS-H/強力級だけで取得し、JIS-N/普通級は取得しなかった模様です。

 

↓2000年7月12日にモンキーレンチのJIS認証を返上(取り消し)

・2000年からは他社製の採用に移行。

 

 ↑現在の本社/大和郡山工場

 

5. 広告

 

↑戦前/1936年『工業仕入案内』と1937年『工業年鑑』

 

↑1938年『工業仕入案内』(再掲載)

・3つのブランドが載っていて、左から"BANKO"、MONKEY 、"HIT TOOL"。

・一番は右は、MONKEY  のストレート・モンキー。

 

- - - - - 終戦

 

 

↑1948年『大阪府推奨優良工産品名鑑』、同年『全国商工年鑑』

・終戦から3年が経ち、私が知る限り戦後初の広告

・左の広告は、2つ間違いがあり、会社名が『東邦機工』になっていて、 "FORGED" が "EORGED" に。

 

↑1953年9月『生産と技術』

・"STRONG HIT"が登場。

・クロモリ鋼使用と謳っています。

 

↑1959年『大阪の経済と産業構造』

・私が知る限り東邦工機として戦前戦後を通じて初めてのスパナ広告。

 

↑1960年『機械と工具年鑑』

 

↑1961年『機械取引便覧』

・"ギヤHIT"ロゴが広告に登場。

・商標出願は1959年でしたが、1961年に登録となり、すぐに広告に登場。

 

↑1962年『鋳鍛造』

・業界紙ながら製造工程の鍛造機が広告に登場していて、マニアックな感じです。

 

↑1965年『日本の自動車工業』の会社紹介広告

 

6. 登録商標

↑戦前/1937年『日本商標総覧』と戦後/1957年の商標登録

・猿マークの商標は戦後の1957年に登録されています。

・但し、戦前の広告に"TRADE MARK"として猿マークが登場していますので、猿マークはまず戦前に商標登録されているのだと思いますが、登録を見つけられていません。

・同じく戦前から登場しているブランド"HIT"と"BANKO"も戦前に商標登録されているのではないかと推察していますが、これも見つけられていません。

 

 

↑商標登録…1952年、1954年、参考:水戸工機/MITOLOY 1972年

・戦後になり、まず"HITROI"が商標登録されます。

・HITとALLOY(合金)をつなげるとHITLOYとなり、水戸工機のMITOLOYの例があります。

・東邦工機の場合、"LOY"では無く"ROI"になっていて、何故敢えて"ROI"にしたのでしょうか??

・もっとも、実際には使われていませんが、"HITLOY"も商標登録されています。

 

↑1957年、1959年、1961年

 

7. 生産量

『業界第一位の生産量を誇る』との説明があるため、生産量を調べて見ました。

 

★モンキーレンチの生産量と同・売上高(共に月単位)

他社との直接の比較は避けますが、確かに1970年までを見る限りではモンキーレンチで一番の生産量と売上高になっています。(2000年以前では1970年までの業績が確認できました)


8. 会社沿革

東邦工機ホームページの会社沿革より

 

9. 会社資料

1)1934年 川上製作所の広告

工具生産は1935年に始めますが、その3年前の川上製作所の広告です。

この時点では一般金物製造業になっていて、蓄音機部品を生産しています。

↑1932年『全国工場通覧』

 

2)株式会社化 /川上製作所 ⇒ 東邦工機(株)

東邦工機の株式会社設立に関する『官報』が1936年と1938年の2つあります。

会社名と社長名が同一ですので、同じ会社のことですが、住所が異なります。

株式会社設立が2回あるのは??です。

会社HP等を見ると1938年に改組改名となっていますので、1938年が本物なのだと思いますが、1936年の同名会社で同名社長の株式会社化は何なんでしょう?

ちなみに、前述の1937年商標資料は、1回目の株式会社化の社名と住所になっていますので、公式には1938年となっている改組改名前に、東邦工機(株)が既に存在し、同会社名で商標を登録しているのも事実です。

↓株式会社化-1/『官報』1936年3月12日付け

↓株式会社化-2/『『官報』1938年6月15日付け

3) 1956年『大阪産業をになう人々』


4)1957年9月『通商産業研究/通産省編』より

※通産省が作成したこの資料内の『日本の鍛圧機械工業』(東邦工機を含む鍛造メーカー紹介)は、戦後鍛造の貴重な資料です。(国会図書館の登録ID要)

通商産業研究 5(9) - 国立国会図書館デジタルコレクション (ndl.go.jp)

 

5)輸出

米国の工具メーカーであるフラー社/FULLERと東邦工機がモンキーレンチで長期輸出契約を結んでいたとのこと。

それに伴い、フラー社から若干ながら外資が導入されています。(15,000ドル)

ちなみに、フラー社はKTCからパイプレンチやスパナの供給も受けていました。

↑1963年6月13日『週刊日本経済』

↓同年『外資導入年鑑』

※日産自動車は、たまたま同じリストに並んでいるだけ。(額のレベルが異なる)

 

↑1972-73年『Osaka Trade Index』内の東邦工機紹介

 

6)会社業績詳細

↑1970年『会社年鑑』

東邦工機と日本理器の業績表。

商品とは全く関係の無い資料ですが、じっくり読み込むと色々な事が分かると思います。

 

10. カタログ

インターネットの過去ログ(Internet Archive)で2008年版フルカタログを見ることが出来ます。⇒ HIT全製品カタログ2008年9月版

さらに、販売会社"ヒット商事"のホームページで現在のフルカタログを見ることが出来ます。⇒ ヒット商事カタログ2017年2月版

なお、インターネット過去ログを見る限りでは、会社HPが始まった2003年から取扱商品は変わっていません。

★現在の東邦工機HP ⇒ こちら

★過去のHP(2003年~先月)⇒ こちら(Internet Archive)

※年を選んでから、下に表示されるカレンダー内の水色●印(Web更新日)をクリックすると見られます。(一部の写真や画像でリンク切れとなっています)

 

1)現行カタログ(インターネット版)

本稿で取り上げた中ではモンキーレンチだけが現行生産品として入手できます。

JISマークの表示も無くなり、シンプルな趣です。

"TL"より鳥取ロブスタ製と分かります。

 

2)2017年版カタログより

JISマーク付きが掲載されていますが、旧JISによる認証権は全メーカーが2008年12月に消滅しているため、これ以降は旧JISマーク付きは生産出来ず、在庫が残っていたとしても、2017年の時点ではJIS無しモデルに切り替わっていると思います。

 

 

この回、終わり

日本のモンキーレンチ/全13編には、こちらから