KTC-23

最初のKTC/1950年

トヨタ向け車載スパナ

(トヨタ専用を示す上端が閉じた二重丸京)

 

KTCは創業翌月(1950年6月)からトヨタ向けに車載用スパナ6本セットの納入を始めていて、これがKTCの最初の商品になります。

KTCにとってエポックメーキングな商品ですので、長い間探し続けていましたが、やっと手に入れることが出来ました。

『二重丸京のすべて』の中で既に解説済みですが、写真が借り物でしたので、詳細な写真と共に改めて取り上げます。

併せて、コレクションを色々と眺めていたら、この凸帯パネルタイプ(二重丸京スタンダードスパナ)には一般販売モデルで長くてスパナ部が大きなモデルチェンジ版(2ndジェネレーション)があることに気が付きましたので、新たに追加解説します。

※冒頭の写真は、上側スパナが『上端が閉じた二重丸京』でトヨタ向け専用モデル①、下側スパナが『上端が開いた二重丸京』で一般販売用モデル②です。

 

★二重丸京スタンダードスパナ一覧表

 

 ① トヨタ向け専用(上が閉じた二重丸京) 

・KTCの商品第一号であり、トヨタトラックBM型の車載スパナです。

・KTC創業翌月の1950年6月から納入が始まっています。

・トヨタ向けに専用の二重丸京が採用され、上端が閉じた(つながった)二重円のロゴになっています。

・一般販売向けは、上端が開いた(つながっていない)二重円になっていて、正式にはこの一般販売向けの方を二重丸京と呼ぶようです。

・トヨタ車載工具の印としてスパナ裏面に丸トヨタマークが刻印されています。

・この上端が閉じた二重丸京モデル①がいつまで納入されていたかの情報がありませんが、後述の一般販売向け二重丸京モデル②や③にもスパナ裏面にトヨタマークが刻印されていますので、比較的早期に一般販売向けモデルに統合されたのではないかと推測します。

・創業翌月(または創業月)からの生産であり、自社工場もまだありませんでしたので、鍛造からバレル研磨、メッキまで各工程の外注工場間を移動させながら完成させたものと思います。

・この車載スパナ納入をきっかけとしてトヨタから継続的なオーダーを受けることとなり、KTCは安定した経済基盤を作り上げることができ、日本を代表する工具メーカーとして発展していきます。

 

・6本セット。(8x9、10x12、12x14、17x19、21x23)

・後述する一重丸京のトヨタ納入モデル⑦も6本セットであり、この二重丸京版も6本セットになっています。

・二重丸京がくっきりと刻印されたホルダーに納められて車載されていたようですが、このホルダーは入手出来ていません。

 

・トヨタ向け専用①と、一般販売向け②の二重丸京ロゴ比較。

・二重円の上端の閉じ開きの差がはっきりと分かります。

 

・全サイズのスパナ裏面に丸トヨタの刻印が入っています。  

 

 

・スパナが車載されたと思われるBM型トラック

・トヨタ挙母工場で1947年3月から1951年6月まで生産された戦後開発第一号のトヨタ車です。

・当初は京都機械/一重丸京が車載され、1950年6月よりKTC/二重丸京に切り替えられたものと思います。(二重丸京の納入が開始された時に生産されていたのがBM型トラックなので)

・さらに、BM型はBX型にモデルチェンジされ、1951年6月から生産が始まっていますが、二重丸京の車載スパナは継続採用されたものと推測します。(BM型からBX型に切り替わる時頃に上端が開いた二重丸京の一般販売向けモデル②に統合されたのではないかと推測)

 

★トヨタ向けモデルの納入開始時期説明(『KTC50年のあゆみ』17&19頁より)

 

★二重丸京ロゴ説明(『KTC50年のあゆみ』20頁より)

        

 

 ② 一般市販用(上が開いた二重丸京) 

・トヨタ向けモデル①の一般販売向けモデルです。

・トヨタ向けとの差別化を図るためか、上端が開いた二重丸京が採用されていますが、他に差は無いようです。

・①はクロームメッキされていますが、②は黒く酸化処理されているように見えますので、表面処理には差があるかもしれません。

 

・①と同様にスパナ裏面に丸トヨタマークが刻印されていますので、トヨタ納入にも使用されていたものと思います。(トヨタ車載をトヨタ専用①から一般販売②に統合?)

 

★一般販売用スパナ(上が閉じていない二重丸京)との比較 

・①(上)と②(下)の比較。

・表面仕上げを除くと、二重丸京以外に差が無いのが分かります。

 

・二重丸京の拡大比較。

 

 ③ 一般市販用(②の刻印文字大) 

・モデル②に対して表面も裏面も刻印文字が大きくなっています。

 

・②と③の比較。(文字の大きさに差があるのが分かります)

 

 ④ 一般市販用 2ndジェネレーション(長くてスパナ大) 

・サイズ刻印がスパナ部から胴長部に移動し、さらに全長が長くなって、スパナ部が大きなっています。

・こすれた部位から表面仕上げ(メッキ)の下地として銅メッキが追加されているのが分かります。

・このモデル④は、①と②から切り替わった2ndジェネレーションなのでは無いかと推測します。

・一般販売向けの上端が開いた二重丸京が採用されていますが、スパナ裏面に丸トヨタマークが刻印されていますので、トヨタにも納入されていたものと思います。

 

・トヨタマーク付き。

 

・①(上)、②(中)、④(下)の比較。(3本共に21x23の同一サイズ)

・④のスパナ部が大きく、全長も長くなっているのが分かります。

 

 ⑤ 一般市販用インチ仕様(2ndジェネレーション) 

・④のインチモデルもあります。

・JISマーク付きです。

・KTCは1953年にJIS認証を取得していますので、このモデルは1953年以降の生産であることが分かります。

・JIS規格では1977年までインチサイズも規格化されていましたので、インチでJISマーク付きも認証されていました。(1977年からは正規規格値から参考値に格下げされ、認証されなくなったと理解しています)

・なお、1955年にJIS認証を受けた京都機械/一重丸京にもJISマーク付きのインチモデルがあります。

・米国機材が多い自衛隊ではインチサイズの工具が一般的ですが、この当時は公的機関もJISマーク付きを要求することが多かったようで、JIS付きインチサイズの工具に大きな需要があったものと思います。(京都機械/一重丸京が得意とした分野)

 

 ⑥ 一般市販用/⑤の二重丸京上端閉じバージョン 

・何故かJIS付きインチサイズで上端が閉じた二重丸京版を見つけました。

・トヨタ向けにインチモデルを納入したとは思えず、このロゴが採用されている理由は不明です。

 

・⑤(上)と⑥(下)の比較。

・⑥(下)が上端が閉じた二重丸京なのが分かります。

 

 ⑦ KTC50周年記念/②の復刻版 

KTC50周年記念モデルとして1,500本限定で2000年に生産され、関係者とKTC従業員に配布された二重丸京スパナです。

・鍛造型や図面が残っていなかったため、現物をトレースする形で鍛造型を新たに興したとのことです。

・②の復刻版になります。

・表面は②と同一になっていますが、裏面には50周年を記念して"SINCE 1950"と刻印され、記念モデルになっています。

 

・①との比較になりますが、50周年記念⑦はスパナ部が横幅の広い卵形になっていて、オリジナルの②とはスパナ形状が異なっています。

・卵形の方がレトロな雰囲気はありますが、出来ればオリジナル形状の方が良かったと思います。

 

 ⑧ 凸パネル/米国向けトヨタランクル用 

・トヨタ向けOEMで、トヨタロゴだけが刻印されています。

・KTCの刻印はありませんが、形状よりKTC製であることは間違いなく、モデル③のバリエーションと思います。(KTC製トヨタ工具にKTC表示が無いのはトヨタモデルの常)

・丸トヨタでは無く、菱形トヨタになっています。(菱形トヨタのロゴは初めて見ました)

・アメリカでランクルFJ40をレストアしている方から『こんなのを持っている』と送られてきた写真です。

・トヨタは1950年代後半からアメリカ向けにランクルを輸出開始していますので、このスパナも純正部品として同時に海を渡ったものと思います。

・日本では見たことが無く、非常に珍しいモデルです。

・裏面が"Drop Forged"(鍛造)としか表示されておらず、材質が他と同じように"Nickel Chrome Vanadium"なのかどうかは不明です。

・同時にアメリカ向けのFJ25カタログ(1960年4月発行)も送って貰いましたが、BX 91410という6本組みのスパナセットが写真のスパナの様です。

 

 【参考】 ⑨ 京都機械/一重丸京のトヨタ向け車載スパナ 

・京都機械/一重丸京が、トヨタに1946年頃から1950年まで納入された車載スパナです。

・表面にTOYOTA-丸トヨタ-MOTORと刻印。

・裏面左側に一重丸京の刻印が入っていることから、京都機械(株)の生産と確認出来ます。

・『KTC50年の歩み』よりトラック向け車載工具(6本セット)としてトヨタ工業に納入されたことが分かります。(トヨタトラックの生産再開時期より納入開始時期を1946年頃と推定)

・刻印は異なりますが、ボディーはKTC二重丸京モデル①と同一と理解しています。

・トヨタ向け車載工具の発注先が1950年6月に京都機械からKTCに切り替わった時にデザイン(または鍛造型)が継承され、そのままKTCモデルとなり、さらに一般市販されたと考えるのが妥当だと思います。

・一重丸京6本組みスパナが車載されたと思われるトヨタKC型トラック。

・KC型は戦時中の1943年11月から生産されていましたが、戦後の1946年にトヨタ生産再開の第1号車種となり、1947年3月までの短期間だけ生産。

 

・KTC『ものづくり技術館』に一重丸京モデルながら他のKTC/OEM品と一緒に展示されています。(写真の赤枠内)

 

★一重丸京/京都機械のトヨタ向けモデル説明(『KTC50年のあゆみ』16頁より)

 

この回、終わり