僕の所属長は、いつものんびりしていて、大抵定時に帰宅するし、午後に外出したら間違いなく直帰する。

しかし、実績は上げている。

与えられたノルマはちゃんとこなしているのだ。


部長がある日、

「あいつは神様だよな・・・」

なんて言っていたのだが、まさにその通りで、仕事のこなし方は神様クラスなのである。


しかし、決して個人の仕事の能力が高いわけではない。

部下の僕が言うのもなんだけど。

ただ、彼には仕事をする上で、非常に有効なスキルを持っているのだ。


それは、仕事を他人に丸投げしてしまうという、かなりはた迷惑なスキルなのだが。


ある得意先から面倒な仕事が来ると、まず彼は、その仕事を下請けに丸投げする。

下請けは立場上逆らえないので、泣く泣くその仕事をなんとかこなす。

下請けから上がってきた仕事は、得意先に対しては自分がやったように見せる必要があるので、プレゼン資料・見積・サンプルその他いろいろ、細工しなくてはいけないのだが、それは今度は僕に丸投げする。


僕はまあ、部下なので泣く泣くその仕事をこなす。


雑用も僕に丸投げする。

例えば会議室の予約。

僕の会社には、社内ホームページ上から、社員なら誰でも会議室や応接間を予約が出来るシステムがあるのだが、彼は必ず僕にそれをやらせる。

取締役から頼まれた場合も僕にやらせる。


「口頭で僕に指示する間に出来るだろ・・・」


しかし、彼には、そういう面倒事を頼む際に、こちら側が断りにくいオーラを発するのだ。

非常に穏やかに、にこやかに、ゆっくりと丸投げするのである。

このオーラこそが、部長が「神様」と呼ぶ所以なのだ。


まあ、そういう仕事振りは当然部長や役員は見抜いているので、文句は言わないけれども出世もしていない。


でも、下請けや僕は非常にツラい。

彼は「大丈夫?」「休んでいいからね?」とにこやかに言いつつ、僕の机に仕事を乗せていく。

逆に高圧的な方が、こちらとしても断りやすいのだが・・・。